木場:これまでの2回の取材を通じ、ヤンマーさんのイメージが大きく変わってきました。今年から、新しいブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE(ASF)」を掲げていらっしゃいますが、100年の間に培われてきたブランドイメージを刷新するのは、大きな決断だったのではないでしょうか。
山岡:皆さんから愛されていたキャラクター「ヤン坊マー坊」は、私と同じ1959年生まれ。私自身もヤンマーという企業も、彼らと一緒に成長してきたと言えると思います。ただ、その間に事業の多角化、グローバル化が進み、ヤンマーが持っているコアバリューと「ヤン坊マー坊」のイメージがかけ離れてしまった。そこで100周年を機に思い切って「ヤン坊マー坊」からの脱却を決めたのです。
振り返ってみると、私が社長に就任した1998年は、バブル経済が崩壊し景気が非常に低迷していた時期です。苦境の中で会社を立て直すために、さまざまな改革を行いました。そんな厳しい局面でも縮小傾向に向かわず、バブル崩壊を乗り越えられたのは、社員の皆さんの底力があったからだと感じています。だから100周年を迎えるときも、自信を持って次の100年を見据えることができました。
木場:ASFには、自社のテクノロジーを活用しエネルギー問題や食料問題など地球規模での課題を解決したいという決意が感じられます。経営者としてどのような思いを込めましたか。
山岡:創業精神の一つ「燃料報国」を現代社会に照らし合わせて考え、「自然も人間も豊かである、つまり少ないエネルギーで豊かな社会を実現する」というメッセージだと読み解きました。そこから我々が目指すASFには「省エネルギーな暮らしを実現する社会」「安心して仕事・生活ができる社会」「食の恵みを安心して享受できる社会」「ワクワクできる心豊かな体験に満ちた社会」という4つの社会の実現に貢献したいとの思いを込めました。