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助成事業

審査・選考のポイント(選考委員インタビュー)
高田 克彦 秋田県立大学 教授

所属機関:秋田県立大学 木材高度加工研究所
専門分野:林産学

高田教授の研究活動についてうかがいました

Q1:林産学の研究に取り組まれるようになった経緯をお聞かせください。

大学の先輩や友人に山岳部やワンダーフォーゲル部、山スキー部のOBや現役部員がたくさんいて、山に連れて行ってもらったことがきっかけかもしれませんね。
卒論で取り組んだ、てこの原理で木にぶら下がって生きている木の強度を非破壊で測定する、というテーマが面白かったのが林産学の研究を続けることになった決め手でしょうか。

お話が止まらない高田教授。
研究所には個室の研究室がありません。
Q2:研究にまつわるこれまでの出会いなどがあればお聞かせいただけますか?
私の研究者としての経緯は様々な人との出会いで方向づけられてきたといっても過言ではないと思います。
大学の先輩や友人もそうですが、例えば、大学の教員に採用されて間もない頃に参加したフィンランドでの国際学会で、偶然スウェーデン農科大学の大御所と話をする機会に恵まれ、会場を抜け出して彼の研究室を訪問しました。その後、彼のところへ留学することになるのですが、誰よりも多くの知識を手に入れ誰よりも早く将来の研究を提示するために、毎日最新の論文を読むように指導されたことが、後の研究活動や学生指導にとても役立ちました。二人の関係はそれにとどまらず、帰国後私が在籍していた大学に彼が教員として赴任することになるなど、不思議な縁は彼がリタイアした今でも続いています。また、大学院終了後のポスドク応募の際の面接官が今の大学に教授としていらしたなど、その時々の人間関係が後になってまた幾重にも繋がっていることが多いように思います。ですので、皆さんもその時々で得た縁を大切にして一所懸命に取り組むことで、後に大きくなって自分に返ってくるように思います。
Q3:これまでの研究の資金調達に関してはいかがでしたか?
金額の大小よりも自分自身のアイデアや研究内容が第三者に評価されたことで、研究者として認められたという実感がありました。苦労して研究費を集めた経験のある選考委員は、まじめに取り組んで書かれた企画書や予算書はすぐにわかります。

審査・選考のポイントについてうかがいました

Q4:申請書類を作成するうえで気をつける点はありますか?

申請にあたって、自分の研究の良さを理解してもらうように書くことが必要で、これは論文にも同じことが言えると思います。論文の場合は専門の方が審査しますが、助成申請ではさまざまな専門分野の選考委員が審査するので、よりわかりやすくていねいに書くことが大切だと思います。ていねいというのは易しい言葉でという意味ではなく、難しい言葉を使っていても、伝えたいという気持ちを文章の中に入れ、正しいことばでわかりやすく表現してほしいですね。
そうすると文章もおのずと変わってくるはずです。ラブレターを書くようにというのがぴったりするかもしれませんね。自分の思いを力ずくで書くだけではなく、言葉の選び方やつながりなど相手がどう思うかを考えながら書いてほしいです。もちろん科学的な申請なので、何が楽しく何が面白いかのポイントをきちんと押さえる必要があります。また、助成する側が何を求めているのかをよく考えてほしいですね。限られた字数の中で言葉だけ趣旨に寄せると浮いてしまうので、選考の過程ですぐにわかってしまいます。対象となる研究助成ごとに見方や書き方を変えて自分の研究内容が表現できるようになると、研究に対する理解も深まり、研究費をより獲得できるようになるので、いろいろなところに何度も挑戦してほしいですね。HPにはこのインタビュー記事をはじめ、申請に関する多くのヒントが記載されていますので、募集要項以外もよく確認してください。

木材高度加工研究所の
天然秋田杉切り株の前で。
Q5:選考審査では申請のどのあたりをチェックされるのでしょうか?
まず研究として面白いかどうかという点を見ます。新規性、有用性、将来性等をバランス良くチェックしているつもりですが、私の専門に近い分野ではある程度の知識を持っているので、新規性に関しては第一印象で少し厳しい目で見ているかもしれません。あくまでも第一印象ですので、申請書類をしっかり読み返して研究の周辺状況を調べる過程で評価が変わることももちろんあります。選考委員の各先生もご自身の専門分野はついつい厳しくなるのではないでしょうか。専門以外では科学的に夢があるかどうかという点が、私が評価するところです。
Q6:挑戦的なテーマに対してはどのようにお考えでしょうか?
夢のある挑戦的な研究は大歓迎です。助成期間の後に数年で研究目的を達成するものもあるかも知れませんが、正直なところ1年や2年では大きな成果を得ることは難しいと思うので、その部分は大目に見ています。また、大きな目標に向かっての研究を申請する場合は、まず最終目標を設定したうえで、バックキャストしていくつかのステップに分ける必要があります。大きな目標に対してこの1、2年で何をするのかしっかりブレークダウンすると、論理的なストーリー性が高まり、挑戦的なテーマであっても評価の対象になると思います。どんな世の中にしたいかとかどんな研究をしたいかという大きな目標があって、だからこの1年あるいは2年でこれをやる、という書き方が好きです。背景、目指す姿、アプローチの方法を示した上で、直近の研究期間ではこれをやる、だからここに研究助成が欲しい、という展開がいいと思います。
Q7:特にこれから申請しようとする若手の方々へ、ひと言お願いします。
自分が夢中になれるパッションがあるかどうか。パッションのない研究には人は感動しませんし、そういう申請はすぐに見抜かれて採択されません。申請者自身が面白いと思っているテーマに真摯に向き合って、気軽に取り組んでほしいと思います。HP内に書かれている情報をしっかり読み込んでより質の高い申請につながることを期待します。
高田教授、ありがとうございました。
2024年2月14日取材

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