YESSA 一般社団法人ヤンマー資源循環支援機構

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助成事業

審査・選考のポイント(選考委員インタビュー)
南條 正巳 東北大学 名誉教授

所属機関:東北大学 名誉教授
専門分野:土壌肥料学

南條名誉教授の普段の活動についてうかがいました

Q1:東北大学の名誉教授というのはどういった職責でしょうか?
特に具体的な役割はありません。飛び込みで大学に届いているリクエストへの対応依頼などはありますが、対応不可能な場合は断ることができます。現役時代は大学院農学研究科の土壌立地学分野の研究室に所属しておりましたが、現在は直接研究に関わることはありません。しかし研究を引き継いでもらった職員からの相談に答えたり、共同で学会発表することはあります。
名誉教授の特典としては、大学図書館を自由に利用することができますし、大学のデータベース、例えば電子ジャーナルを検索することができます。
Q2:これまで取り組まれてきた研究で、思い出深いテーマをお聞かせください。
2つ紹介させていただきます。
ひとつめは2011年の東日本大震災です。宮城県の農家は津波による塩害に被災しました。行政からこれに関する調査の打診があり着手しました。次第に「私自身は何ができるか」ということを中心に進めて、2018年に退官するまで何らかの形で継続しました。

ふたつめは、36歳のときに農水省から東北大学に転勤してきたのですが、以前から当該研究室が火山灰土壌に関する研究に取り組んでいたこともあり、その一部を先輩から引き継ぐ形で取り組み始めました。例えば火山灰土壌の元素濃度変化の調査や、火山ガラス(珪酸アルミニウム)がどんなふうに土壌化していくのかを調査する研究を行っていました。
そんな中で、リン酸肥料と土中にある鉄からビビアナイト(和名:藍鉄鉱)という結晶石ができることを確認したことが印象に残っています。大きな結晶は青緑色の宝石(パワーストーン)として流通しています。このビビアナイトが沖積地の水田の中でも形成されるのです。土壌のサンプリングを行う時には酸化して溶解してしまっているので、なかなか見つかりませんでした。ビビアナイトは稲がリン酸を吸収するのに十分な程度の溶けやすさなので、リン酸と鉄に分解し肥料として有用な存在です。
Q3:ご自宅で農業を営んでおられますが、作付面積はどれくらいですか?

全部で5ヘクタールあります。そのうち今年は約3.5ヘクタールが稲作で、先週田植えが終わったところです。実際に農業をやる中で現役時代に学んだこと、あるいは講義で説明したことを考えてみたり検証したりしております。

例えば水田に水を張る際に減水深に留意してかん水する必要があります。過去の研究から、稲の生育にとって理想の減水深は2~3cm/1日だと言われております。一方で近年の除草剤は土の表面に薄膜をつくって、雑草が出芽したときにこの膜に触れ枯れさせるものですが、薄膜を均一に形成させるために水深を5~7cmとし、かん水せずに3~7日維持しなければなりません。そうすると理想の減水深の水田では、このような除草剤が上手く使えないということが実際に稲作をやってみて気づきました。しかしながら平地にある水田の減水深が大体1~2cm程度しかないので除草剤散布には問題ないのですけどね。

オンラインインタビューの様子。なんと場所は南條名誉教授の田植えしたてのほ場前でした。

審査・選考のポイントについてうかがいました

Q4:申請テーマを審査する際にどういった点に留意されますか?
ヤンマー資源循環支援機構(以下YESSA)の方針に適合しているか否かを第一優先にして評価します。その次に要旨が簡潔に整理されていて自分自身が理解でき、納得できるテーマを評価しています。
Q5:過去2年間審査されてきた中で、学術的に研究価値は高いけれどもYESSAの方針とずれがあり、評価を下げたという申請テーマはありましたか?

YESSAの全ての助成方針は国連がSDG’sに掲げている17の目標の多くに当てはまり、現在取リ組むべき重要な課題であり、申請者の理解も行き届いているようで、方針とずれているテーマはあまりありませんでした。ただ、ごく少数ではありますが、「生産性向上」を中心においている申請テーマが見受けられましたが、少し助成対象から外れていると判断し評価を下げております。

Q6:ご自身の専門分野の応募テーマを評価するポイントは?
自分の経験や知識に矛盾している場合は、評価点は下がります。そして自分の知見のその発展方向を目指しているテーマであれば良い評価となります。ですので、自分の専門分野を評価すると上下に差がはっきり出ているかも知れません。
審査にあたっては、申請者の周辺情報検索や、研究そのものが的外れなものではないか、現時点での位置付けなどを判断するために関連の文献を大学のデータベースで検索します。
Q7:逆に専門外のテーマについてはどういった視点で評価されますか?
制限の文字数内で門外漢でも理解できるように簡潔に記述しているかをまず評価しています。やはり理解できないものを評価することはできません。それから専門外のテーマの場合は、参考資料も特に重要になってきます。
Q8:これから申請される方へ、ひと言お願いします。
すでに存在する情報、科学と研究者自身のオリジナリティがあり、発想をわかりやすく説得力ある形で融合し、それを1,000文字の制限の中でいかに第三者にわかりやすく説明するかに注力してください。
この作業は、漠然とした抽象的なアイデア、発想を具体化、具現化していく効果的な手法、ツールですので、ぜひ挑戦してみてください。
Q9:最後にひと言お願いします。
近年人類の農林水産業をはじめ、あらゆる経済活動が自然に与える影響が不可逆的になりつつあり、自然破壊が進行している中で自然循環型の持続可能な社会の実現を、サイエンスを駆使して実現していく活動を継続的に支援していただくことをヤンマー資源循環支援機構に期待しています。
南條先生、ありがとうございました。
2021年5月17日取材

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