2023.06.23

ダイバーシティ&インクルージョンとは?違いやメリット・課題・取り組み事例を紹介

多様な働き方が注目を集める中、日本の企業においてもダイバーシティ&インクルージョンの取り組みが広がっています。

しかしその一方で「ダイバーシティってどういう意味?」「ダイバーシティとインクルージョンはセットで使われることが多いけれど、単体で使われる場合との違いはどこにあるの?」などと疑問に思っている方は多いかもしれません。

ヤンマーグループでも、国籍、文化、年齢、性別、宗教、キャリア、障がいの有無など、さまざまなバックグラウンドをもつ人材が活躍できるダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。

今回のY mediaでは、ダイバーシティ&インクルージョンの意味を改めて解説しながら、そのメリット、課題、具体的な取り組みなどをヤンマーの事例とともにご紹介します。

ヤンマーが目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」の詳細を見る

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンがもたらすメリットや課題をより深く理解するために、まずはそれぞれの意味や違いを理解しておきましょう。

ダイバーシティとは?

ダイバーシティは日本語で「多様性」「違い」を意味します。企業においては、さまざまな属性の人々が同じ組織の中で働いている状態のことを言います。

私たち人間は一人一人年齢、性別、人種、宗教、障がいの有無、趣味嗜好など異なる価値観やバックグラウンドを持っています。

みんなが同じような属性で、似たような価値観を持っている環境は、一見、揉めごとが起きにくい平和な社会のように思えるかもしれません。

しかし、判断基準や価値観、情報源が似通った人ばかりが集まっている状態は、自ずとそこから生み出されるものも画一的になりやすいといったデメリットがあります。新しいアイデアやイノベーションが生まれにくい環境とも言えるでしょう。

一方、ダイバーシティに富んだ環境では「多様性」や「違い」こそが、強みになります。

異なるバックグラウンドをもつ人材が集まれば、女性や高齢者、LGBTQ+、障がいのある人、海外で暮らす人といった、幅広い人々の心に響くサービスや商品を生み出すことができるかもしれません。

なお、ダイバーシティの考え方は、SDGsの「17の目標」である「5.ジェンダー平等を実現しよう」「10.人や国の不平等をなくそう」にも深く関わっています。SDGsについては下記の記事で詳しくご紹介していますので、気になる方はこちらもあわせてご覧ください。

SDGsとは?17の目標と私たちにできることを簡単&わかりやすく解説!

インクルージョンとは?

続いて、ダイバーシティを語る上で欠かせない「インクルージョン」の意味について確認していきましょう。

インクルージョンは、日本語で「受容」「包括」「一体性」などと訳されます。インクルージョンの反対語は、日本語で「疎外」を意味するエクスクルージョンです。

インクルージョンとは、誰もが疎外感を感じることなく、自分の強みを発揮できる状態のことを言います。お互いの個性を認め、一体となって活かし合うこと。エクスクルージョンの対局にある概念です。

ダイバーシティとインクルージョンの違い

ダイバーシティが、組織や社会の多様性を意味するのに対し、インクルージョンはお互いの多様性を受け入れ活かし合うことを意味します。

企業が新たな価値を生み出すためには、ダイバーシティ(多様性・相違)だけでは不十分で、お互いの個性を認め合い、活かしあえるインクルージョン(受容・包括・一体性)が鍵となります。

多様な人材が揃っていても、一人一人の考え方や個性が尊重されない環境では意味がありません。

大切なのは、一人一人の考え方を尊重すること。そして、お互いの強みを活かし、弱みを補い合うことです。

多様なバックグラウンドからなる考え方や価値観を持つ社員が一体となり、お互いを支援・啓発することで、イノベーションを創出すること。これこそが、ダイバーシティ&インクルージョンの本質と言えるでしょう。

企業でダイバーシティ&インクルージョンが重要視される背景と多様性について

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

「ダイバーシティ」のはじまりは、1960年代のアメリカまでさかのぼります。多人種・多民族社会であったアメリカで人種差別や男女差別の撤廃の声が高まったことをきっかけに「公民権法」や「米国雇用機会均等委員会(EEOC)」が設置され、雇用における差別をなくす動きが少しずつ広まっていったと言われています。

雇用における人種差別・女性差別の解消を目的にスタートしたダイバーシティですが、1980年代に入ると「イノベーションの創造」「多様化する顧客のニーズへの対応」など社員の多様性がもたらす企業へのメリットが注目を集めるようになります。

一方、日本の企業で「ダイバーシティ」という言葉が広く知られるようになったのは、2000年代以降。その背景の1つとして挙げられているのが、少子高齢化などによる労働者不足です。

内閣府が発表している「令和4年版高齢社会白書」によると、2021年における人口に占める65歳以上の割合は全体の28.94%。2065年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になると予測されています。

「令和4年版高齢社会白書」(内閣府)

出典:「令和4年版高齢社会白書」(内閣府)

人材の確保が今後ますます困難になることを危惧した多くの日本企業は、「働きたい」という意志を持ちながらも、何らかの制約によって就業が難しい状況にある、女性や高齢者、障がいのある人、外国籍の人々など、多様な人材を採用するダイバーシティ&インクルージョンに解決の糸口を見出しました。

もちろん、一言でダイバーシティ&インクルージョンと言っても、その概念は時代と共に広がりつつあります。たとえば、コロナ禍で在宅勤務やフレックスタイム制など新たな働き方が話題になりました。性別や国籍だけではなく、ライフスタイルや働き方などもダイバーシティ(多様性)の一種と言えます。

ここからはさらに詳しく、ダイバーシティ(多様性)の具体例について見ていきましょう。

多様性|①女性社員

総務省が行った労働力調査によると、日本における令和3年の女性の労働力人口は 3,057 万人と全体の 44.6%*。1997年には、共働き世帯の数が、男性雇用者と無業の妻から成る世帯の数を上回るなど、女性の就業率は年々増加傾向にありますが、その半数以上は非正規雇用で労働条件には依然格差が見られます。

また、女性の中には、妊娠や出産などライフスタイルの変化によって、キャリアを諦めてしまう人が少なくありません。女性活躍推進は、単に女性の就業率を上げれば良いという話ではなく、働きながら、安心して子どもを産み育てるための制度の活用や職場環境の整備も欠かせないポイントと言えるでしょう。

*出典:令和3年の働く女性の状況(厚生労働省)

多様性|②シニア社員

少子高齢化に伴う労働人口の減少が問題視される中、シニアの雇用・再雇用に注目が集まっています。2021年4月には「高年齢者雇用安定法」が適用され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。

私たちは必ず歳をとります。シニア社員の働き方を考えることは、同時に自分自身の未来の働き方を考えることでもあります。

シニア社員は、先の道を行くまさに「人生の先輩」です。生きてきた時代や価値観の違いを尊重し、長年の経験や知識が活かせる環境を整えることで、幅広い年代の視点を活かしたサービスや商品を生み出すことができるでしょう。

多様性|③障がいのある社員

障がいの有無に関わらず、誰もが地域の中で自立した生活を送ることができるような社会を目指して、1960年「障害者雇用促進法」が定められました。

43条第1項では、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者の割合を「法定雇用率」以上にすると義務付けられており、民間企業における現在の法定雇用率は2.3%となっています。

「障害者基本法」において障がいは、次のように定義されています。

一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

二 社会的障壁 障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

出典:障害者基本法 第二条

障がいのある人の中には、突出したスキルをもつ人材や、集中力や持続力に優れた人材も多く、苦手なことや得意なことは個人によってさまざまです。

一人一人の苦手を補い、得意を存分に活かせる働き方を企業と社員が共に模索する姿勢が求められています。

多様性|④外国籍社員

少子高齢化による国内市場の縮小に伴い、日本企業は海外進出に舵を切りました。競争の激しいグローバル社会を生き残るためには、日本国内だけではなく、市場規模の大きい海外に目を向けなければなりません。

こうした背景を受け、近年は外国籍社員を迎え入れる企業が増えてきました*。

国が違えば、言語や文化、物事の捉え方が異なります。日本ではよしとされるものが、海外では受け入れられないといった価値観の違いにぶつかることもあるでしょう。

しかし、こうした違いが融合することによって、より多くの新しいアイデアが生まれる可能性が高くなります。そのためには、それぞれの国の文化を理解する必要があります。

グローバル化戦略の一つとして、ヤンマーでは外国籍社員をはじめとする多様な考え方を持つ人たちが、お互いの価値観や個性を尊重しながら、高め合い融合するダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。

以下の記事では、さまざまな部門で活躍している外国籍の社員3名に、「ヤンマーに入社した理由」や「入社して苦労したこと、ヤンマーに求めたいこと」などのお話を伺いました。

多様性|⑤ワーク・ライフ・バランスを重視することが多様性につながる

企業で働くビジネスパーソンにも、仕事が終わり家に帰れば、プライベートな時間があります。

幼い子どもを育てながら働く社員、高齢の両親の介護をしながら働く社員、病と闘いながら働く社員、ビジネスに役立つ資格を取るために終業後に学校に通う社員、趣味を楽しむ社員もいるでしょう。

ワーク・ライフ・バランスは「仕事と生活の調和」を意味する言葉で、仕事と生活のバランスを取りながら相乗効果でどちらもより良いものにしていこうという考えに基づいています。

仕事と生活は、相互に影響し合っています。プライベートの時間が充実したものになれば、仕事へのやる気もおのずと上がり、新しいアイデアや成果も生まれやすくなるはずです。

ヤンマーでは、ワーク・ライフ・バランスの推進が多様な人材の活躍と生産性の向上につながると考え、2017年10月より在宅勤務制度を順次導入しています。さらに2020年には、利用対象者の拡大、在宅勤務制度とフレックスタイム制の併用も順次適応しており、社員のワーク・ライフ・バランスを考慮した柔軟な働き方を推進しています。※制度の導入・適応は事業所により異なります。

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ヤンマーにおいても “家庭と仕事の両立”を目指した社員の育休取得を推進しています。

以下の記事では、育休制度を利用したヤンマーの男性社員3名にインタビューを実施。「育休を取得しようと思ったきっかけ」や「職場の反応」など、育休取得の課題やこれからの働き方についてお話を伺いました。こちらもぜひ併せてご覧ください。

ダイバーシティ&インクルージョン推進によるメリット

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ダイバーシティ&インクルージョンには、さまざまなメリットがありますが、ここでは代表的なものを2つご紹介します。

・イノベーションの創造と社員のモチベーション向上

・多様化する顧客の価値観に対応できる

メリット|①イノベーションの創造と社員のモチベーション向上

ダイバーシティ&インクルージョンの本質は、個々の違いを受け入れ、それを活かしていくことにあります。

人は誰もが強みと弱みを持っていますが、多様な社員が集まることで、さまざまな分野で強みが発揮され、弱みを補い合うことができます。

社員一人一人が自分の個性を存分に発揮できれば、仕事に対するモチベーションも高まるはずです。

また、多様な社員が働く環境や周囲と異なる意見を発言できる環境は、社内に安心感をもたらし、同調性や同調圧力の強い組織にはなかったクリエイティビティやイノベーションが生まれやすくなるといったメリットもあります。

メリット|②多様化する顧客の価値観に対応できる

時代の変化と共に、顧客のニーズも多様化しています。

外国籍社員や女性社員など、多様な社員がいれば「海外に向けたサービスは、あの人がリーダーにふさわしい」「子育て世代に向けたサービスについて、あの人に意見を聞いてみよう」など、細分化する市場や顧客の価値観にも幅広く対応できるでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンの課題

ここでは、ダイバーシティ&インクルージョンの課題とその解決方法について確認していきましょう。

課題|①女性社員

・仕事と育児の両立が難しくキャリアを諦めてしまう

・女性管理職の割合が少ない

女性社員の活躍を促すためには、ライフステージの変化に関わらず安心して働ける職場環境の整備が必要です。特に子育て世代の女性は、子どもの年齢によって働ける時間が異なります。育児休業や時短勤務制度、在宅勤務制度、フレックスタイム制の導入に加えて、上司や同僚の理解を促していくことが大切です。

また、過去に支援制度を利用した社員がいる場合は、その経験をシェアしてもらうのも良いでしょう。

性別を問わず誰もがキャリアアップを目指せる職場をつくるためには、男女同じ議論の場で管理職登用について話し合ったり、管理職に登用する際には「なぜ、任せたいと思ったのか」その理由を具体的に伝えたりするなど、より平等な人材活用体制づくりが求められています。

課題|②シニア社員

・若手社員とのジェネレーションギャップ

・健康や介護の問題

シニア社員の活躍を促すためには、これまでの経験やキャリアを活かせる役割を担ってもらうことが大切です。こまめにコミュニケーションを取り、お互いに敬意をもって接することで、良好な関係を築くことができます。

同時に、社員の健康や両親・配偶者の介護問題にも配慮しながら、就業時間や業務内容など働き方を調整することも重要です。

課題|③障がいのある社員

・見通しを立てるのが苦手なことが多い

・気持ちを発信するのが苦手なことが多い

障がいのある社員が安心して働ける環境を整えていくことが重要です。たとえば、スケジュールボードを使って「やるべきこと」の見える化や、朝礼や日報で「今日やったこと」や「不安を抱えていないか」などを報告してもらったりすることで、個人の強みや弱みを把握しやすくなるでしょう。

課題|④外国籍社員

・言語の壁

・文化の違いによるミスコミュニケーション

外国籍社員の雇用における大きな課題は、やはり言語の壁や、それに伴う文化の違いによるミスコミュニケーションが挙げられます。個人の強みを活かすためには「郷に入れば郷に従え」という姿勢ではなく、お互いの国の言語を学んだり、異文化への理解を深めたりする姿勢が大切です。

ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み・事例

ヤンマーは、ブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE -テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」の理念のもと、豊かな未来の実現へ向け社会に新たな価値を提供するために、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。

ここでは、ヤンマーの事例を基にダイバーシティ&インクルージョンの取り組みをご紹介します。

ヤンマーが目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」の詳細を見る

取り組み・事例|①女性社員が多方面で活躍できる職場環境の整備

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ヤンマーでは、女性の活躍を見据えた職場環境の整備に取り組んでいます。2020年からは、女性総合職社員向け・外国籍社員向けのメンターシップ制度を導入し、社内ネットワークの形成を支援。採用活動においても、就職活動中の女子学生に向けた「女性社員との座談会」などを積極的に実施しています。

また、仕事と家庭を両立しながら自分らしいキャリアを築いていくことは、男女問わず大切なことです。ヤンマーには、1年間の産休・育休の取得や、復帰後は時短勤務を活用できる制度があり、多くの社員が子育てと両立しながら仕事を続けています。

他にも、育児介護休業などのライフスタイルの変化に合わせた制度を充実することで、女性をはじめとするすべての社員が能力を十分に発揮し、安心して働き続けられる企業を目指しています。

取り組み・事例|②障がいのある社員が安心して働ける工夫

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

ヤンマーグループの特例子会社であるヤンマーシンビオシス株式会社には、障がいのある社員が多く在籍しています。「シンビオシス」とは「共に生きる=共生」という意味です。

ヤンマーシンビオシスでは、“ヤンマーらしさ”を追求するため、農業に関わる「農業ソリューション事業」、ヤンマーグループの社員が働きやすい環境をサポートする「オフィスサポート事業」、小型ディーゼルエンジンの生産に関わる「製造サポート事業」の3つの事業を展開しています。

複数の視点でサポートするための専門職在籍部門の設置、SST(社会生活技能訓練)の実施、地域の支援機関を交えた定期的なケース会議の実施など、社員がその能力を発揮し、お客さまが求める品質を実現できる職場づくりを目指して活動を行っています。

「Diversity For YANMAR」ダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指して|まとめ

ダイバーシティ&インクルージョンとは?

今回のY mediaでは、ダイバーシティ&インクルージョンの意味を改めて解説しながら、それぞれの意味の違いやメリット、課題、取り組みをヤンマーの事例とともにご紹介しました。

人が一人では生きていけないように、イノベーションやクリエイティブもまた、異なるバックグラウンドや価値観をもつ人々の関わりなしには、生み出せないのかもしれません。

『いきいき、ワクワク、SMILE』。心豊かに働く社員はヤンマーグループを支える原動力です。

ヤンマーではこれからも、国籍、文化、年齢、性別、ライフスタイル、障がいの有無など多様なバックグラウンドからなる考え方や価値観を持つ社員が、相互に支援・啓発することでイノベーションの創出を実現するとともに、多様性豊かなメンバーが生み出した新たな商品・サービス・ソリューションで、社会に新たな価値を提供していきます。

ヤンマーが目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」の詳細を見る