2022.02.18

海外に飛び出した女子サッカー選手とヤンマー社員、それぞれの挑戦

ヤンマーでは、国籍・文化・年齢・性別・キャリアなど、さまざまなバックグラウンドをもつ人材が活躍できる「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進。その取り組みは、ヤンマーのグローバル事業において大きなチカラになっています。

またヤンマーでは、自社の社員だけでなく、その想いに共感し、ともに挑戦してくださる方々に「ヤンマーアンバサダー」になっていただき、ワクワクできる心豊かな体験に満ちた社会の実現に向けて、さまざまな活動を展開しています。

今回は、海外リーグに所属し、ヤンマーアンバサダーとして活動するサッカー女子日本代表選手と、ヤンマーで海外事業を担当する社員に「海外を相手に活躍する」ことについて語っていただきました。
インタビュー実施日:2021年12月
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

<取材者プロフィール>

林 穂之香(ハヤシ ホノカ)
スウェーデン女子サッカー1部リーグ(ダームアルスヴェンスカン)AIKフットボール所属 / サッカー女子日本代表

京都府出身。5歳でサッカーを始め、中学入学時よりセレッソ大阪アカデミーに入り、セレッソ大阪レディースU-15に所属。セレッソ大阪堺レディースのキャプテンとしてチームをリードし、2016年にU-20日本代表、2019年にはサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」にも選出。東京2020オリンピックに出場。2021年からスウェーデン女子サッカー1部リーグのAIKフットボールに移籍し、レベルの高い海外リーグに挑戦している。2021年4月、ヤンマーアンバサダーに就任。

 

宝田 沙織(タカラダ サオリ)
スウェーデン女子サッカー1部リーグ(ダームアルスヴェンスカン)リンシェピングFC所属/ サッカー女子日本代表

富山県出身。小学校時代にサッカーを始め、中学の時にJFAアカデミー堺(1期生)への入学とセレッソ大阪堺レディースに入団し、マルチポジションをこなすチームの主力選手として活躍。2016年にU-17日本女子代表、2019年にサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」にも選出。東京2020オリンピックに出場。2021年にアメリカ女子プロサッカーリーグのワシントン・スピリットに移籍し、シーズン優勝に貢献。2022年にスウェーデンに舞台を移し、さらなる成長のための挑戦を続けている。2021年4月、ヤンマーアンバサダーに就任。

 

南條 真麻(ナンジョウ マアサ) ※新型コロナウイルス感染対策のためオンラインで参加

ヤンマーパワーテクノロジー株式会社 小形事業部 営業部 海外第一販売部 欧州グループ。アメリカ留学を経て、2015年入社。小形エンジン事業の営業企画部に配属され、1年、2年目からエンジン事業を統括する事業企画部を経験。海外営業の希望が受け入れられ、2019年より小形エンジン事業の海外販売部へ。日本においてヤンマーヨーロッパの現地営業チームの支援業務を担当。

 

KOZHOEV Almaz(コジョエブ アルマズ)※新型コロナウイルス感染対策のためオンラインで参加

ヤンマー建機株式会社 営業統括部 海外推進部。国籍:キルギス共和国。留学生として来日、卒業後、2011年入社。海外推進部で主にアジア市場を担当。2017年からフランスやドイツに駐在し、日本とヨーロッパのクロスボーダープロジェクト(Telematicsシステムの導入)のリーダー。トルコ及びCIS諸国市場での販売ネットワークの構築、プロダクトマネジャー。現在は日本で、東南アジアの今後成長が見込まれる国々におけるディーラーネットワーク構築を担当。

自分の可能性を、もっと広げたい

―― 「海外を相手に挑戦したい!」と思った理由は

セレッソ大阪堺レディースの頃は、漠然とした海外への憧れはありました。しかし、その頃は目の前のサッカーに手一杯で「現実的ではない」と思っていました。海外挑戦を考えるきっかけは、日本代表として海外チームと戦うようになってからですね。「常日頃から海外の選手と戦う環境に身をおいて、自分の可能性に挑戦したい」と思うようになりました。

林 穂之香選手
林 穂之香選手

宝田17才以下(U-17)の日本代表として海外の選手と戦った時に興味を持ちましたが、「海外に行きたい」とまでは思っていませんでした。しかし、なでしこジャパンに入って、海外の選手と戦うようになって、「まだまだ課題がある、海外に行かないと上を目指せない」と感じ、挑戦する気になりました。

南條:子供の頃からクラシックバレエを習っていて、バレエ発祥の地であり、本場でもある海外に憧れていました。大学では国際関係学を専攻して、1年間のアメリカ留学を経験しました。留学中、外国人の友人から「なぜメイドインジャパンのものは高品質なの?凄いね!」と声をかけられ、「日本の製品を世界に広めていきたい」と思うようになりました。ヤンマーに入社したのは、「どうせならスケールの大きなものがカッコいい!社会貢献できる製品が良い!」という理由からです。所属部署も機械の中心となるエンジンを希望しました。

アルマズ:留学先として日本を選びましたが、働く場所としては、最初から日本だけでなく、海外を舞台に働きたかったです。その理由は、その国の文化や市場経済、働き方、ビジネス環境など、さまざまなことを直接体験することで、「自分の成長に大きなプラスになる」と思ったからです。

海外にチャレンジしてみて

―― 海外にチャレンジしてみて、どう感じましたか

私が移籍したのはスウェーデンのチームです。はじめての海外で不安もありましたが、チームメイトはとてもウエルカムな雰囲気で、スムーズに入っていくことができました。チームの第一言語は、スウェーデン語ではなく英語でした。英語は上手くないのですが、1年目にしてはちゃんとコミュニケーションができたと感じています。

宝田 私が移籍したワシントン・スピリットは英語なのですが、勉強が苦手で「Hello!」「 Hi!」とか、本当に挨拶ぐらいしか話せませんでした(笑) そんな私でしたが、チームメイトはサッカーで勝つという同じ目的の下で会話をしようとしてくれました。分かる言葉を一生懸命伝えると、チームメイトも一生懸命聞いてくれて、お互いに工夫しながらコミュニケーションが取れました。おかげですぐにチームに馴染むことができました。チームには日本人の先輩がいたのですが、できるだけ先輩に頼らず、自分からチームメイトに話していくことを心がけました。

私の印象ですが、これまで日本から海外に行った選手は、日本代表として世界を相手に活躍した選手が多かったように感じていました。しかし、まだ代表経験の浅い私でもチャレンジできたんだから、「誰にでも海外に行くチャンスがあるんだ」と思うようになりました。

南條:今はコロナの影響で海外に行っていないのですが、それまでは海外出張もありました。現地でヤンマーのエンジンを搭載した建設機械や農業機械が動いているのを見つけた時はうれしかったですね。お客様にヤンマーの評価(製品の品質や担当者のデリバリー対応、技術に対する問い合わせ対応など)をお聞きしているのですが、トップクラスの評価をいただいた時は「ヤンマーのクオリティの高さが伝わっていて、世界に広めることができて良かった!」とやりがいを感じました。

南條さん:過去の海外出張の様子
南條さん:海外出張の様子

アルマズ:フランスやドイツで働くことで、とても貴重な経験を得ることができました。具体的には、その国の文化やビジネス環境に触れることで、より広い視野で見られるようになったことです。
「ヤンマーで働く」という意味では、ヤンマーが目指す「A SUSTAINABLE FUTURE」の実現に向けたミッションと、それを実現するための求める人材像に、日本と海外で違いはありません。ただし、組織の文化や働き方において、ヤンマーはそれぞれの国の文化や環境、民族、慣習などを尊重していると感じました。

アルマズさん:海外駐在当時の様子
アルマズさん:海外駐在当時の様子

―― 海外と日本で違いはありましたか

海外の選手であっても「サッカーが上手くなりたい」という気持ちは同じですが、上手くなるためのアプローチの違いに驚かされました。チームの練習では「そんなに上手くない」と思っていた選手が、いざ試合となると活躍したりするわけです。日本にいた頃は「練習のプレーが試合で活かされる」と思っていました。海外に来てみると決してそうではない。「サッカーが上手くなるには?」と改めて考えるきっかけとなりました。

宝田私は、アメリカに行く前のイメージとしては、「アメリカ人はひたすら筋トレ」のイメージを持っていましたが、それほどでもなく、 毎日筋トレしなくても、懸垂とか、ほとんどの選手ができるんです。「基礎体力が全然違うな」と感じました。
また、練習メニューが細分化、専門化されていて、選手それぞれに合わせたメニューがあるなど力の入れ方が違います。例えば代表と代表じゃない人とのメニューも違い、代表選手は代表チームからメニューが送られてきます。そういったメニューは、自分のチカラをつけるための参考になっています。

左:林選手   右:宝田選手
左:林選手   右:宝田選手

南條:先ほどアルマズさんが話されていましたが、日本であっても海外であっても、私たちヤンマー社員のゴール(目標)は同じです。しかし、仕事の進め方はかなり違っていて、日本人は、「最初から100点」を目指します。例えば、承認を取るにしても丁寧に準備をしてからなので、時間がかかることが多いです。一方、海外の現地法人は、直接やりとりしたフィーリングや作業効率など、スピードを重視しているので、物事の判断が早いです。また「できないものはできない」とはっきり言いますね。スピード感の違いから、日本側の対応が遅くて現地法人に迷惑をかけたこともあります。

アルマズ:ちなみに南條さんは、どちらのタイプですか?

南條:私は「当たって砕けろ」タイプなので、あまり準備するよりも、取り敢えずぶつかりたい(笑)。 上手くバランスを取りながら、海外を相手にするのが性に合っていて、働きやすいです。

アルマズ:南條さんと同じで、海外と日本の違いの1つが「スピード感」だと思います。その理由は、南條さんが話されたほかに、「役割分担の考え方」にあると思います。
海外では、社員一人ひとりのタスクや責任がしっかり決まっていて、「担当者が責任を持って決めればいい」ので、仕事の流れが早くなります。一方、日本では責任のボーダーラインが曖昧で、「周囲の合意プロセスが必要」となるため、その分スピードが落ちてしまいます。その代わりに、チームワークや助け合いが進んでいると感じます。

2つ目は、ヨーロッパの人は、「ワークライフバランスを大事にしている」と感じます。仕事と生活の調和を考えて、バランス良く時間を使い分けています。

3つ目は、海外のヤンマー拠点では「女性マネージャーの比率が日本のヤンマーよりも高い」と感じました。これはおそらく、ヤンマーだけではなく、日本全体の話だと思います。最近のヤンマーは、「ダイバーシティ&インクルージョン」を通じて、改善に取り組んでいるのですごく良いことと思います。

アルマズさん:休日は、観光などしてドイツ駐在生活を楽しみました
アルマズさん:休日は、観光などしてドイツ駐在生活を楽しみました

―― 苦労したことと、それをどう乗り越えましたか

海外のチームは、考え方がとにかくポジティブ。勝てない時期があっても、チームの雰囲気は「焦らない」「弱気にならない」「大丈夫」という感じなんです。私から見れば、「もう少し焦っても良いのではないか?」「もっと早く改善できるのではないか?」と感じることがありました。
チームの改善のために自分から意見を発信するのですが、突っぱねられたことは無かったです。「チームを良くしたい」という気持ちは同じなので、しっかりと話し合いました。「絶対こっちがいい」ではなく、良い意見を採用し、意見が違っても仲が悪くなったということは無かったですね。

宝田やはりスタメンとして試合に出ることに苦労しました。試合メンバーはある程度固まっているので、スタメンに入るためのプレッシャーが大きかったです。特にメンバーとのコミュニケーションが難しくて、なかなか意見などを自由に言うことができなかったです。

海外の選手は、「自分の意見を言う」ことを重視していますよね。

宝田自分の思ったことは全部言って、みんなで考えることが当たり前なんです。チームメイトを見習って「自分も意見をしっかり言わないとダメ」と感じました。

南條:今の仕事はヤンマーヨーロッパのサポートなので、現地のオランダ人やイタリア人とのコミュニケーションが重要になります。アルマズさんも話されていましたが、海外の方はワークライフバランスをとても重視しています。日本人は仕事を優先しがちですが、海外ではプライベートも大切にしている。その違いを理解することが大切で、「違いは個性」と思うように心がけています。「そういう考え方もあるんだ!」と自分のなかで落とし込んだら、「その意見も面白い」と思えるようになって前向きになれます。

アルマズ:フランスやドイツでは、英語でコミュニケーションを取るのですが、会議などで議論が熱くなってくると、だんだん現地語になっていくんです(笑) そうなると自分は理解できないので、「英語で話してくれないか」ということが結構ありました。自分の言語で話したい気持ちは分かりますが、そこはしっかりとお願いしました。

ヤンマー社員から、林選手・宝田選手へ質問

南條:お二人は、スウェーデンとアメリカ(インタビュー時点)、日本とだいぶ離れた所におられます。慣れない海外での日常生活やチームメイトのやりとりなど、精神的に落ち込むこともあると思うのですが、どうやって乗り越えていますか?

落ち込んだ時は、取りあえず1回忘れて、時間をおいてから考え直すようにしていました。冷静になるために、YouTubeを見たり、好きなアニメを見たり、一旦違うところに自分を置いて、通常に戻すことを心がけています。

宝田私も林さんと同じで、好きな日本のドラマを見たり、家族とつながれば話をしたり、気持ちをすっきりさせて次の日に持ち越さないようにしています。

左:林選手  右:宝田選手
左:林選手  右:宝田選手

アルマズ:私はサッカーが好きなので、サッカーについて質問したいです。
まず林さんにお伺いしたいことは、スウェーデンの選手は背が高く、フィジカル面で差があります。スウェーデンでプレーする時、ギャップがあったかと思いますが、どうやって乗り越えていきましたか?

自分からボールを奪いに行く場合は、小さな自分が身体を当てても体勢を崩せないので、「自分の100%以上を出すんだ!」という気持ちでいきます。また最初の頃は、ボールを受けてからのプラン(次のプレー)がないと、すぐに相手に体勢を崩されてボールを失うことが多くありました。なので、柔軟なプレーができるように複数のプランを準備して、ボールを要求するようになりました。

アルマズ:宝田さん、「アメリカは女子サッカーが進んでいる」というイメージがあるのですが、実際、渡米してみてどうですか?

宝田アメリカの女子サッカーは、ワールドカップで4回優勝し、常に3位以内に入るサッカー強豪国です。女子サッカーはとても人気があって、国としても女子サッカーに力を入れているイメージがありますね。

アルマズ:最後はお二人に。日本と海外のファンの違いはありますか?

チームを応援している声量が違います。「サッカー文化が根付いているヨーロッパのファンなんだなぁ」と思いました。

宝田アメリカも同じで「自分のチームに対しての応援が凄い」と思いました。

今後の夢と、海外を相手に活躍したい人へのメッセージ

―― 今後どのように活躍していきたいですか

林:一番の目標は、なでしこジャパンの代表定着です。次に、海外で1年間プレーしてきましたが、チームの中心になれるように実力をつけて、AIKフットボールを上位に上げたいです。

宝田やはり、なでしこジャパンに必要とされるプレーヤーになりたい。また、海外のチームが自分を必要としてくれるように、いろんな国のサッカーを学んで、いろんな国で挑戦したいです。

宝田沙織 選手
宝田沙織 選手

南條:現在の部署に配属されて3年。これまでは既存のお客さま、既存製品への対応がメインでしたが、やってみたいことは「新規案件への挑戦」です。自慢できる、誇れるヤンマーの製品を、私なりの提案内容と方法で、お客さまに「あなたが担当で良かった」と言われるような営業になりたいです。

アルマズ:これからもっと海外を経験して、いろんな国や市場のエキスパートになりたい。そして、変化のスピードが早い時代に対応できる、行動力のあるリーダーになりたいです。

―― 海外で活躍したい人へのメッセージをお願いします。

「海外に挑戦してみたい」と思った時、行き先の環境や自分の実力などを冷静に考えてみること。そして、「行きたい」という直感も大切だと思います。冷静さと直感のバランスをみて、チャンスをものにしてください。

宝田「海外に行ってみたい」という思いがあったら、ぜひ!チャレンジしてみてください。不安はあると思いますが、飛び込んでみることも大事だと思います。「やってみて悔いはなし、当たって砕けろ!」です。

南條:私は「絶対、海外に行きたい!」という想いを持ってヤンマーに入社しました。最初の3年間は別の部署にいましたが、「海外営業部に行きたい」と言い続けた結果、現在の部署で働くことができました。ヤンマーの社風は、「挑戦したい」と言ったら、前向きに考えてくれる会社だと思います。海外の仕事は、毎日新しい発見ばかり。グローバルな仕事をしたい人は、ぜひヤンマーで挑戦してみませんか。

アルマズ:ヤンマーはグローバルな会社です。また「大地」「海」「都市」を事業フィールドに、さまざまな分野で製品やサービスを提供しています。海外への挑戦だけでなく、やりたいことがあればチャレンジさせてくれる環境になっています。

 

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