2022.12.16
クリーンエネルギーとは?種類やメリット・国や企業の取り組みを紹介
みなさんは「クリーンエネルギー」という言葉を耳にしたことはありますか?「何となく環境に優しそうだけれど、他のエネルギーとどう違うの?」と思っている方も多いかもしれません。
地球の環境を守るためには、「省エネを進めること」に加えて「CO₂の排出量を抑えたエネルギーに変えること」が重要です。今回のY mediaでは、クリーンエネルギー導入のメリットや種類、国や企業の取り組みなど、知っているようで知らないクリーンエネルギーの基本をお伝えします。
クリーンエネルギーとは?
まず、クリーンエネルギーとは何かから見ていきましょう。クリーンエネルギーとは、CO₂をはじめとした温室効果ガスを排出しない、または排出量を抑えたエネルギーのことです。太陽光や風力、地熱といった自然由来のエネルギーであることから「自然エネルギー」とも呼ばれています。
クリーンエネルギーと再生可能エネルギーの違いは?
クリーンエネルギーと似た言葉に「再生可能エネルギー」があります。どちらも環境負荷を抑えたエネルギーですが、その違いはどこにあるのでしょうか?
再生可能エネルギーの主な特徴は、次の3つです。
1.自然由来のエネルギーである
2.温室効果ガスを排出しない(排出を抑えている)
3.再生可能である
また、経済産業省 資源エネルギー庁において再生可能エネルギーは次のように定義されています。
再生可能エネルギーの定義
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)においては、「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁より
「自然由来のエネルギーである」「温室効果ガスを排出しない」この2点は、クリーンエネルギーと同じです。加えて、再生可能エネルギーには、その名前からも想像できるように「再生可能である」という特徴があります。再生可能とは、消費後も時間が経てば回復できる資源からつくられるエネルギーを意味しています。
ちなみにクリーンエネルギーも、太陽光や風など自然界にある資源からエネルギーを生み出しているため、化石燃料のように枯渇の心配はありません。明確な定義はありませんが、「クリーンエネルギー」=「再生可能エネルギーの一部」と考えて差し支えないでしょう。
クリーンエネルギーのメリット
クリーンエネルギーの活用は、私たちの暮らしにどのような恩恵をもたらしてくれるのでしょうか?ここでは、日本全体と企業という2つの視点から、クリーンエネルギーを導入するメリットをご紹介します。
日本全体にとってのクリーンエネルギー導入のメリット
まずは日本全体にとってのメリットを考えてみましょう。石油や石炭などの化石燃料は使い続ければいつかはなくなりますが、クリーンエネルギーは太陽光や風力といった自然界に常に存在する資源を使用するため、無限に使い続けることができます。また、エネルギーを生み出す際にCO₂を排出しないため、地球温暖化対策としても有効です。
また、クリーンエネルギーには、日本国内でつくれる国産のエネルギーであるという特徴があります。2019年の日本のエネルギー自給率は12.1%と諸外国に比べて低い水準に位置しています。その原因の1つとして考えられているのが、国産エネルギーの不足です。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」より
クリーンエネルギーの導入が広まれば、エネルギーを国内で生産・消費でき、日本のエネルギー自給率を高めることができます。クリーンエネルギーの導入は、化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っている日本にとって大きなメリットとなるでしょう。
企業にとってのクリーンエネルギーのメリット
クリーンエネルギーの導入は企業にとっても大きなメリットがあります。1つは企業イメージの向上です。近年、「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」の3つの要素に配慮した企業に投資をするESG投資がトレンドになっています。クリーンエネルギーの活用は、地球温暖化対策として「環境(Environment)」に該当し、ESG投資に対するアピールポイントになります。クリーンエネルギーの導入を積極的に発信することで、「この企業から買いたい」「この企業で働きたい」という印象を与え、売上の向上や多様性に富んだ人材の雇用にもつながると考えられています。
もう1つは、エネルギーの自給自足により災害時の対策ができる点です。たとえば、オフィスの屋根や屋上に太陽光発電システムを設置すれば、つくられた電気を自社で使用できるだけではなく、蓄電池と組み合わせることで地震などの自然災害や停電時の非常用電源としても活用できます。災害大国である日本において、もしもの時に使える電源があることは、従業員にとっても大きな安心に繋がるはずです。
クリーンエネルギーの種類
クリーンエネルギーによる発電には、主に次のような種類があります。
1.太陽光発電
2.風力発電
3.水力発電
4.地熱発電
5.バイオマス発電
ここからは、各クリーンエネルギーの特徴について見ていきましょう。
クリーンエネルギーの種類|1.太陽光発電
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを太陽電池によって直接電気エネルギーに変える発電方法です。従来の発電所に比べて設置が容易で、住宅や学校、ビルの屋根など、設置できる場所が多様なことから、世界中で導入が進んでいます。また自然災害などで停電が起こった際には、蓄電池と組み合わせることで非常用電源として活用できる点も魅力的です。しかし、太陽の日射量によって発電量が左右されるという制約があるため、他の発電方法と組み合わせる必要があります。
クリーンエネルギーの種類|2.風力発電
風力発電は、風のエネルギーを電気エネルギーに変える発電方法です。山間部や海岸沿いなど風の流れがある場所に風車を建て、回転エネルギーを活用して発電します。太陽光発電とは異なり、風が吹く場所であれば、日差しがなくても発電が可能です。クリーンエネルギーの中でも発電コストが低く、発電量も大きいことから、地球温暖化対策の切り札として世界各国で導入が進められています。ただし、風が吹かない日は発電ができないため、太陽光発電と同様に、他の発電方法と組み合わせる必要があります。
クリーンエネルギーの種類|3.水力発電
水力発電は、クリーンエネルギーの中でも特に長い歴史を持つ発電方法です。河川など高い所に貯めた水を低い所に落とす時のエネルギーを電気エネルギーに変えて発電します。発電の種類には、河川の水をせきとめたダムから水を落として発電する「貯水池式」や河川の水をそのまま利用する「流れ込み式」などがあります。水資源が豊富な日本では、古くから大規模なダムを活用した発電が行われていましたが、限られた国土の中で多くの大規模なダムを建設するのは難しく、現在は中小規模の建設が中心となっています。十分な発電を行うためには安定した水源が必要となるため、太陽光発電や風力発電と同様に、他の発電方法と組み合わせる必要があります。
クリーンエネルギーの種類|4.地熱発電
地熱発電は、地下のマグマの熱エネルギーを利用し、蒸気の力でタービンを回して発電を行います。発電の種類には、地下の蒸気を直接利用する「フラッシュ方式」や温泉熱や温泉井戸などを活用して発電する「バイナリー方式」があり、一度設置すれば低コストで安定した電力を得ることができます。火山大国である日本は、地熱資源に恵まれていますが、資源の多い場所には公園や温泉などが点在しているため、開発は容易ではありません。建設コストや課題はありますが、建設後は水力発電と同様に気候や時間に関係なく発電が可能で、発電量のポテンシャルも高いため今後の動向に期待が集まっています。
クリーンエネルギーの種類|5.バイオマス発電
バイオマス発電は、建築廃材や食品廃棄物など、本来捨てられるはずであった生物資源を直接燃焼またはガス化して発電を行います。発電の種類には「直接燃焼方式」「熱分解ガス化方式」「生物化学的ガス化方式」などがあり、それぞれ発電に使用する燃料が異なります。燃焼時にはCO₂を排出しますが、植物は成長過程で光合成によってCO₂を吸収します。このためバイオマス資源はCO₂の排出量が実質ゼロとなるカーボンニュートラルの燃料と見なされているのです。バイオマス資源は日本の各地に点在しているため、収集や運搬にコストがかかる一方、電力の地産地消や地域の活性化に貢献できるという見方もあります。
バイオマス発電の仕組みとは?メリットや燃料の種類・課題をわかりやすく解説!
一般家庭でも使えるクリーンエネルギー
ここまで、クリーンエネルギーのメリットや種類についてお伝えしてきました。では、クリーンエネルギーを一般家庭で使用するためには、どのように電力を調達すれば良いのでしょうか?
一般家庭でクリーンエネルギーを活用する方法は、大きく分けて次の2つです。
1.電力会社を切り替える
2.発電設備を設置する
順番に解説します。
一般家庭で使えるクリーンエネルギー|1.電力会社を切り替える
現在の電力会社から、クリーンエネルギー由来の電力を供給する電力小売会社に切り替える方法です。大規模な発電施設を設置しなくても、契約1つで簡単にクリーンエネルギーを使用できます。お住まいの地域によっては、電力の共同購入キャンペーンを実施している場合があるため、事前に自治体のホームページなどをチェックしておくと良いでしょう。電力の共同購入は、地域の住宅や店舗を対象にクリーンエネルギーに興味のある人を集め、需要の規模を大きくすることで、電力会社との価格交渉を優位に進めるという取り組みです。参加登録しておけば、必要な情報が入手でき、クリーンエネルギーに切り替えるかの判断材料にもなります。
一般家庭で使えるクリーンエネルギー|2.発電設備を設置する
自宅にクリーンエネルギー由来の発電設備を設置する方法です。最もポピュラーな方法は、太陽光発電システムの設置です。自宅の屋根などに太陽電池パネルを設置し、パワーコンディショナーで直流電力を交流電力に変換することで、家庭内で必要な電力を自家発電できます。発電量が使用量を上回った場合は、余剰分を電力会社に売電することも可能です。
国としてのクリーンエネルギーへの取り組み
日本では高度経済成長以降、エネルギーの多くを、石油を中心とした化石燃料に頼ってきました。しかし、1970年代にオイルショックが起こると石油の価格が高騰。エネルギーを海外の石油に依存していた日本では大きな混乱が起き、化石燃料に頼らない、エネルギーの多様化が求められるようになりました。こうした背景を経て、日本政府は「1つのエネルギー源に依存するのではなく、多様なエネルギー源を組み合わせて使用する」という考えにシフトしました。この考え方をエネルギーミックスと言います。
エネルギーミックスに加えて、日本のエネルギー政策の基本方針となっているのが、3E+Sです。これはエネルギーの安全性(Safety)を大前提とし、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の同時達成を目指すというもので、それぞれの頭文字をとって3E+Sと呼ばれています。
繰り返しになりますが、日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っています。そのため、石油産出国で石油価格が高騰すると、日本の産業は大きなダメージを受けてしまいます。輸入に頼ることなく国産エネルギーの割合を増やしていくことが重要です。これが安定供給 (Energy Security)です。またエネルギーにコストがかかりすぎると電気代が高くなるというデメリットがあります。そのため経済効率性(Economic Efficiency)も欠かせません。さらには、地球環境への負荷を抑えた環境適合(Environment)も重要なポイントです。
そして、これら3つの方針の前提となるのが、安全性(Safety)です。これは、事故が発生した際に甚大な被害をもたらすことがないという考え方で、2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故が教訓になっています。
残念ながら、4つの条件を全て満たすような完璧なクリーンエネルギーは、今は存在しませんが、複数のエネルギーを組み合わせることで、お互いの短所を補い合い、長所を引き伸ばすことができます。
ここでは、クリーンエネルギーの普及やエネルギーミックスの実現に向けた日本政府の取り組みをご紹介します。
国としてのクリーンエネルギーへの取り組み|1.固定価格買取制度(FIT)
2012年、クリーンエネルギーを含む再生可能エネルギーの導入を国が補助する制度として、固定価格買取制度(FIT)が開始されました。これは、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。対象となるエネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスのいずれかで、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、計画に基づいて新規に開始する事業が対象となります。買取費用の一部は、電気利用者から賦課金という名目で、電気料金に上乗せして徴収した資金によってまかなわれます。これにより発電設備の建設コストの回収の見通しが立ち、再生可能エネルギーは急速に普及しました。
国としてのクリーンエネルギーへの取り組み|2.電力の小売全面自由化
これまで、家庭や企業の電気は各地域によって決められた電力会社からしか購入できませんでしたが、2016年4月に電気の小売業への参入が全面自由化され、全ての家庭や企業において電気をどの会社から購入するか自由に選択することが可能になりました。
現在はさまざまな電力会社や小売電気事業者が、独自のサービスや料金プランを展開しています。太陽光、風力、水力、地熱などのクリーンエネルギーを中心に発電を行う電力会社から電気を購入できるようになったのも、電力の小売全面自由化の恩恵の1つだと言えるでしょう。
クリーンエネルギーへのヤンマーの取り組み
クリーンエネルギーの普及に向けた取り組みは、国だけではなく、世界中の企業でも広がっています。「A SUSTAINABLE FUTURE」を理念に掲げるヤンマーでも、クリーンエネルギーを活用した発電システムの導入に取り組んでいます。
クリーンエネルギーへのヤンマーの取り組み|1. クリーンエネルギーを活用したオフィス
阪急梅田駅から茶屋町方面に出てすぐの場所にある、ヤンマー本社「YANMAR FLYING-Y BUILDING」。ビル内には、太陽光発電、ガスヒートポンプエアコン、ガスコージェネレーションシステムなどの多様な省エネ・創エネ技術を採用し、CO₂の積極的な削減に取り組むことで、CO₂排出量ゼロの「ゼロ・CO2エミッション・ビル(ZEB)」の実現を目指しています。
たとえば、ビルの南壁面上部には、都市型ビルにおける創エネルギーに最適な35kWの太陽光発電設備を設置。
さらに屋上には、風力発電設備を設置しています。館内からは見えませんが、他にも地中熱の利用や太陽光集熱によって、ヤンマー本社フロアに必要な電力をまかなっています。
「エネルギーと食の未来を映すオフィスビル ヤンマー本社を徹底レポート」では、エントランスから屋上まで、普段はお客さまが立ち入ることのできないエリアも含め、ヤンマー本社ビルの魅力を徹底取材。「食料生産」と「エネルギー変換」にこだわったシステムやデザインをたっぷりとお届けしています。ぜひ、ヤンマー本社を訪問した気分でご覧ください。
●この取り組みをもっと詳しく見てみよう!
クリーンエネルギーへのヤンマーの取り組み|2. CO₂実質排出量ゼロに取り組む「自然共生型ゴルフ場」
ヤンマーが栗東市の依頼を受け、1959年に開場した「琵琶湖カントリー倶楽部」。2021年10月以降、コース内でのカーボンニュートラル化を目指し、環境に優しい再生可能エネルギーや省エネルギーを積極的に導入。国内のゴルフ場では初となるCO₂実質排出量ゼロを実現しました。
Y mediaでは、そんな「琵琶湖カントリー倶楽部」の取り組みを取材。日本オープンゴルフ選手権、日本女子オープンゴルフ選手権など、様々な日本のメジャー大会を開催する名門ゴルフ倶楽部が描く「自然共生型ゴルフ場」の姿とはーー?取材の詳細は、以下の記事をご覧ください!
クリーンエネルギーを活用して、電力の脱炭素化を目指そう|まとめ
地球の環境を守るためには、大気中のCO₂排出量を減らさなくてはなりません。その第一歩となるのが、従来の化石燃料から地球環境に配慮したクリーンエネルギーへの転換です。
クリーンエネルギーには、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などの種類がありますが、それぞれに長所と短所があります。エネルギー資源が乏しい日本では、先ほどもご紹介した安全性(Safety)、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の3E+Sの観点を元に、さまざまなエネルギーによる発電をバランス良く組み合わせ、各エネルギーの長所を最大限に引き出すエネルギーミックスの実現が求められています。
コストが高く一般家庭では導入が難しいと言われていたクリーンエネルギーも「固定価格買取制度(FIT)」や「電力の小売全面自由化」によって、その風向きが変わりつつあります。ライフスタイルや価値観に合わせて電気を選べる時代になったとも言えるでしょう。
Y mediaではこれからも、ヤンマーが掲げる”A SUSTAINABLE FUTURE”の実現に向けた取り組みを発信していきます。SDGsの目標7「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」にもあるように、持続可能な社会の実現に向けてできることを、私たちと一緒に考えてみませんか?