2022.02.25
日本初CO2実質排出量ゼロの実現へ 「自然共生型ゴルフ場」が継続してきたサステナブルな取り組み
豊かな自然を利用した名門コース
日本最大の湖、琵琶湖の南側に位置する栗東市に琵琶湖カントリー倶楽部がある。滋賀県の豊かな自然を利用したコースで、琵琶湖はもちろん、近江富士として知られる三上山や比叡山を望んでプレーできる気持ちの良いコースだ。2度の日本オープンゴルフ選手権や、日本女子オープンゴルフ選手権など、様々な日本のメジャー大会を開催している名門ゴルフ倶楽部でもある。
そんな琵琶湖カントリー倶楽部が、2021年10月にサステナブルな取り組みについての話題を提供している。それはコース内でのカーボンニュートラル化を実行し、2021年度内にCO2実質排出量ゼロを目指すというものだ。世界的な課題となっているCO2排出問題だが、実現するとゴルフ場としては日本初ということになる。
その可能性について、琵琶湖カントリー倶楽部の横田潤一郎支配人に話を聞いた。
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。
「2021年1月から一部で稼働をして、ほぼ計画通りです。実質的には10月からスタートしたのですが、2022年3月、2021年度内にCO2実質排出量ゼロを実現することは可能だと思っています」
それまでのCO2排出量が約800トン。ゴルフ場ではプレー後に風呂を使用するし、コース内の整備には車両も使う。それをゼロにするのだから、思い切った施策が取られたのは想像に難くない。
栗東市からの要請で開場
琵琶湖カントリー倶楽部は、ヤンマーディーゼルが栗東市(当時は栗東町)からの依頼を受け1959年に開場。
同社は2012年に100周年を迎えた老舗企業だが、創業当時から「技術を使って豊かな社会を」「循環型の社会を目指す」という理念が創業者である山岡孫吉の意識にあったという。
今回のカーボンニュートラルへの試みを技術面で支えるヤンマーエネルギーシステム(以下YES)の山本哲也代表取締役社長も次のように語っている。
※インタビュー時の所属会社・部門等は取材当時のものです。
「もともと創業者が『燃料報国』という言葉を使っているんです。有るものを無駄なくエネルギーとして大切に使っていくというのが一貫したポリシー。それもあって、2012年の創業100周年の頃は日本ではまだ一般的ではなかった、サステナブルという言葉をすでに使っていました」
だからカーボンニュートラル化もその大きな流れのひとつなのだそうだ。
「2007年には廃食油を燃料として、電気に変換するという試みをするために、琵琶湖カントリー倶楽部を使わせてもらっています。このように、捨てているものをエネルギーに換えようという取り組みはかなり長い間やっています」
以前から環境に配慮した運用は行っていたが、「自然共生型ゴルフ場」として正式に運用を始めたのは昨年の10月1日から。
カーボンニュートラルだけではなく、堆肥化による植栽などへの有効活用、丈夫な芝の育成、敷地内の持続可能な管理による森林保全などにも力を注いでいるのだ。
カーボンニュートラルへの試み
それでは、この度のカーボンニュートラルへの試みを具体的に見ていきたい。技術面を担当するのはYES。同社はこれまで廃棄物を有効利用するバイオマス発電やエネルギーを最適制御するエネルギーマネジメントサービス「Enerico(エネリコ)」を提案するなど、さまざまなエネルギー問題の解決に取り組んできている。
エネルギーサービス<Enerico>で広がる、省エネへの可能性
ヤンマーのエネルギーサービスは、施設のエネルギー使用状況を「見える化」し、管理・分析・制御、メンテナンスまで行うトータルサービス。コージェネをはじめ、ガス空調機や太陽光発電など、様々なエネルギー機器に対応しています。
まず電力だが、これはYESが太陽光パネルを設置・維持管理する仕組みを導入することから開始。再生可能エネルギーである太陽光の発電システムにより、最大310キロワットの電力をクラブハウスに供給している。太陽光パネルは、あるホールの外側にずらっと並べられている。YESの担当者に聞くと、このような回答を得ることができた。
「これはヤンマーエナジーファームというお客様の初期投資ゼロでエネルギーサービスを導入いただけるサービスで、琵琶湖カントリー倶楽部で3箇所目になります。現在、栃木県では「001」「002」が稼働中です。まもなく「005」が関西で稼働する予定になっているんです」
太陽光等の再エネや省エネのエネルギーサービスは、ここだけにとどまらず日本全国に広げていくようだ。
初期コストゼロ、環境にやさしいヤンマーの発電所
「YANMAR ENERGY FARM(ヤンマーエナジーファーム)」は再生可能エネルギーによる発電所です。
発電設備の導入にかかる投資や維持管理の手間を懸念されるお客様のニーズに応え、ヤンマーがお客様に代わって発電設備を建設、運営します。お客様は、初期投資ゼロの安定収益を確保しながら、サステナビリティ活動を推進できます。
そして、もうひとつ重要なエネルギー源がボイラーである。これで主に湯を沸かしているのだが、従来の重油を使ったものから木質のチップを燃料に使ったバイオマスボイラーに変更することで大幅にCO2を削減している。また、バックアップとしてLPガスボイラーも設置されており、こちらは災害時のライフラインとなるそうだ。
さらにはリチウムイオン蓄電池もあり、太陽光発電の余った電力を蓄電し、夜間の電力供給や非常用電源として活用される。
また食品廃棄物や刈り取った芝草は、バイオコンポスターという機械にかけられ堆肥化。再利用されている。まさに、大切に、無駄なくエネルギーを使っていることがわかる。
高い意識と行動力によって日本で初めてカーボンニュートラルを試み、CO2実質排出量ゼロを目指す琵琶湖カントリー倶楽部だが、本来はゴルフをプレーし、楽しむ場所でもある。横田支配人も「ゴルフで楽しめるところ。いつか行きたいではなく、いつも行きたいというようなコースにしていきたい」と話している。
琵琶湖カントリー倶楽部は名門であるがゆえに敷居が高そうに見えるかもしれない。だが、そもそも栗東町という地元からの要請で作られたゴルフ場なので、地域との繋がりを重視しているのだ。
琵琶湖カントリー倶楽部の取り組み概要
琵琶湖カントリー倶楽部では、
・省エネ機器・サービスの導入によるエネルギー使用量の削減
・再エネ設備の導入によるグリーンエネルギー創出
・環境価値の調達によるCO2排出量の相殺(カーボン・オフセット)によって、カーボンニュートラルを実現予定です。