2024.01.10

新しく誕生した「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」でカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!

近年、集中豪雨や干ばつといった地球温暖化による自然災害が世界各地で頻発しています。世界の国・地域では、地球温暖化を食い止め、次の世代が豊かに暮らせる社会をつくっていくために、温暖化を加速させる温室効果ガスをはじめ、環境に負荷をかける物質の発生を低減していこうという動きが加速しています。

ヤンマーグループも持続可能な社会を目指し「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を推進。自社はもちろん、サプライヤーやお客様を含むすべての活動から排出される温室効果ガスや環境負荷物質をゼロにするべく、さまざまなチャレンジを進めています。

今回はそのチャレンジの一つである、ヤンマーのエネルギー分野におけるカーボンニュートラルに向けた取り組みについて、ヤンマーエネルギーシステム株式会社 カーボンニュートラル推進部の石井祐輔さんと野口友里さんにお話を伺いました。

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

▼「A SUSTAINABLE FUTURE」の実現に向け、自社だけでなく、お客様のカーボンニュートラル化も推進

ヤンマーグループが掲げる「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」。これは、ブランドステートメントである「A SUSTAINBLE FUTURE」を実現するべく、ヤンマーが2050年までに環境負荷フリー・GHGフリー企業を目指す取り組みのことです。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!

この挑戦の大きな役割を担うのが、ヤンマーエネルギーシステム株式会社。「創エネ」「再エネ」「熱電」の3つのソリューションを軸に、再生可能エネルギーや水素などのクリーンエネルギーを活用したソリューションの開発に取り組んでいます。そして2023年9月、ヤンマーエネルギーシステム製造株式会社敷地内の岡山試験センター内に開設されたのが、カーボンニュートラル化の実現に貢献する各種製品の実証施設「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」です。

<YANMAR CLEAN ENERGY SITE>

この施設では既存の製品をはじめ、水素発電システムや蓄電池などのクリーンエネルギー機器の耐久試験や技術開発およびそれらを組み合わせた最適運用の実証試験を行っています。

<実証試験イメージ>

▼「創エネ」「再エネ」「熱電」の3つのソリューションを軸にカーボンニュートラルを実現する製品を研究・開発

——ヤンマーエネルギーシステムが主軸としている「創エネ」「再エネ」「熱電」の3つのソリューションについて教えてください。

石井:「創エネソリューション」とは、エネルギーをより賢く、効率的に活用する仕組みのこと。石油や天然ガスといった化石燃料は有限なものなので、今ある燃料から無駄なくエネルギーを取り出すことが求められています。例えば当社のガスコージェネレーションは、ガスを使って電気だけでなく約80℃のお湯も同時に作ることができるシステムで、社会の省エネ・省CO2に大きく貢献します。また、災害時でも継続運転できるというメリットもあり、病院や学校など災害対策が求められている場所にも多く導入されています。

次に、「再エネソリューション」は、廃棄物からエネルギーを取り出す仕組みです。食品工場や畜産農家では、食品残さや畜産残さが多く発生しています。これらの処理にはコストと手間がかかり、大きな負担となっています。このような課題を解決するため、廃棄物をクリーンエネルギーに変えて電気と熱を作り出すことができるバイオガス発電等の製品を展開しています。

そして「熱電ソリューション」は、「創エネ」「再エネ」で発生した電気や熱を最適に運用する仕組みです。電気や熱の需要は季節や時間ごとに大きく変動するため、需要に合わせて一番効率の良い状態で機器をコントロールすることで、よりエネルギーコストの削減につながります。それを実現するのが「エネルギーマネジメントシステム」です。GHP(ガス空調)やコージェネレーション、太陽光発電等の機器の運転状況、施設内のエネルギーの利用状況、天気や電気料金などの外部データを基に自動で効率の良い運用を実現します。また、施設の運転状況や利用状況を1つのモニターで見える化できるので、エネルギーのムダがすぐわかるようになります。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!
<石井祐輔さん>

野口:ヤンマーエネルギーシステムでは、この3つのソリューションを軸にカーボンニュートラルの実現につながる製品の研究・開発を行い、既存の製品などと組み合わせ、お客様の課題にあったトータルエネルギーソリューションを提案しています。そんな当社の取り組みや製品を、目で見て体感できるのが、この「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」です。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!
<YANMAR CLEAN ENERGY SITEの機器設置イメージ>

▼実証施設としてだけではなく、お客様の課題を伺い共に解決していくきっかけを生み出す場として

——YANMAR CLEAN ENERGY SITE」開設の背景を教えてください。

野口:お客様のカーボンニュートラル化への取り組みを迅速にサポートできるよう、再生可能エネルギーを活用した分散型エネルギーの統合制御における実証試験を行う施設が必要になったのがきっかけです。次に、実証するだけではなく、ヤンマーがカーボンニュートラル化に向けて取り組んでいることをお客様に「認知」していただくことも重要だと考えました。更に、お客様それぞれのカーボンニュートラルについての考えや課題に耳を傾け、「対話」を通して共にその課題を解決していくきっかけの場を作りたいという思いから、本施設の開設に至りました。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!
<野口友里さん>

——「対話」を取り入れているのはなぜですか?

野口:これまでヤンマーとしては、さまざまな製品を売るビジネスが中心だったわけですが、カーボンニュートラル化は製品を売るだけでは実現できません。お客様の課題を伺い、その解決策を一緒に作り上げていきたいと考えています。そのために「対話」にフォーカスしています。

石井:お客様からすると、例えば水素を使った発電機といっても、それはあくまでカーボンニュートラルのパーツのひとつでしかないんです。一つのパーツを入れてもカーボンニュートラル化が実現できるわけではありません。そのために、水素をどのようにつくるとか、それを使ってどうエネルギーをコントロールするかなど、お客様の課題やニーズを把握したうえで私たちがどのような提案していけるのかが大切。さまざまなエネルギー機器を最適に組み合わせて、お客様のニーズに合ったソリューション提案ができるのは、ヤンマーならではの強みだと思っています。

——施設はどういう造りになっているのですか?

野口:お客さま見学コースを準備しています。見学の流れとしては、まずどういう実証施設なのかをスライドで見ていただいたあとに、製品の役割や、製品をどうコントロールして使っていくのかを紹介する動画を通して理解していただきます。そして実機を順番に見学していただく流れです。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!
<見学者用のユニットハウスで、施設の概要を説明>

展示している機器は、「水素エンジンコージェネレーション」や、「水素燃料電池システム」など水素や都市ガスなどからクリーンな電気や熱のエネルギーを作り出すもので、商品化前のものも含めて、お客様の現状と課題に合わせて見ていただけるよう様々な製品をラインナップしています。

<左から水素燃料電池発電システム、水素混焼Cコージェネレーションシステム、都市ガス仕様コージェネレーションシステム>

▼「実証、認知、対話」のサイクルを継続し続け
お客様のカーボンニュートラル化に貢献したい

——当施設にはどんな方が訪れていますか?

石井:開設以降、約800人の方にお越しいただいています。既存のお客様だけではなく、展示会やお問合せから、興味をもっていただいた新規のお客様もいらっしゃいます。徐々に、ヤンマーの脱炭素における取り組みが認知されていることを実感しています。

野口:ご見学いただいた企業や団体の業種はさまざまで、カーボンニュートラル化の街づくりに取り組む自治体やカーボンニュートラルを推進されている企業のご担当者の方が多いです。特に自治体にとってカーボンニュートラル化を実現した街づくりは、地方創生にもつながることもあってかなりの熱量の高さを感じます。

石井:皆さま、カーボンニュートラルに向けて「取り組まないといけない!」という強い思いはあるものの、具体的に何から始めて良いか分からない」状態の方ばかりです。また費用対効果はどうなのかというような複合的な課題も持たれているようです。

——施設を見学したお客様の反応はいかがでしたか?

野口:施設見学者の多くは、「実物を見ることで規模感や水素活用の具体的なイメージを持つことができた」「カーボンニュートラルの取り組みが実体化されている」など、驚きや質問、共感などさまざまな形で声にして反応してくださっています。

新しく誕生したYANMAR CLEAN ENERGY SITEでヤンマーのカーボンニュートラルに向けた取り組みを、目で見て体感!
<2G社製水素燃料エンジンコージェネレーションシステム>

石井:YANMAR CLEAN ENERGY SITEが開設したおかげで、見学して終わりではなく「今はどのような取り組みをされていますか?」「何にお困りですか?」と、お客様に寄り添ったつながりを持てるようになったと感じています。今後もお客様との対話を継続していきたいと考えています。

——今後の「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」の展望やカーボンュートラルな社会に向けて目指すところを教えてください。

野口:先日、施設見学に訪れたお客様から「自社の工場でどんなカーボンニュートラル化ができるか提案に来てほしい」というリクエストをいただきました。次のステップにつながったのはまさに理想のケースですね。今後はまず実証という部分において、各機器の商品化と、最適制御を確立させること。そしてお客様に見学いただきカーボンニュートラルへの取り組みを認知していただくこと。お客さまやパートナー企業に、「まずはヤンマーに相談しよう」と思っていただけるポジションになっていきたいですね。そのために「実証、認知、対話」のサイクルを継続して回していくことが重要だと考えています。

石井:「YANMAR CLEAN ENERGY SITE」はヤンマーの製品や提供価値を表現する場。開発中・進行中の製品も見てもらっています。今並んでいるものが全てではなく、お客様との対話を通して抽出したニーズを解決するために生まれた製品が今後並んでいきます。将来的には、1つの事業所だけでなく、お客様全体のカーボンニュートラル化に向けて貢献できるようにしたいですね。現在は、YANMAR CLEAN ENERGY SITEへお客様をご案内していますが、ゆくゆくは我々のソリューションでカーボンニュートラルを実現したお客様のところへみなさまをご案内できたらいいなと思います。

野口: カーボンニュートラルの実現に向けては一社でできることは限られていると感じています。まずはお客さまやパートナー企業の課題を一緒に解決するエネルギーの相談役として真っ先にお声がけいただく存在になることを目指すべく頑張っていきたいですね。