2024.09.17
互いに感謝する心が働きやすい会社をつくる ~ヤンマーで挑戦を重ね、キャリアを積んだ女性取締役に聞く~
ヤンマーでは、「Diversity for YANMAR」をポリシーに掲げ、グローバル化戦略を進める上で「国籍、文化、年齢、性別、障がいなどを問わず、世界で通用するプロフェッショナルな人材の活躍」を目的とするダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。
そんな取り組みの中でも、今回Y mediaで焦点を当てるのは「女性活躍」。「Diversity for YANMAR」を掲げた2020年以降、女性社員の活躍を推進するべく、女性向けの制度はもちろん、すべての社員が働きやすい制度を整えてきました。
例えば、仕事と子育ての両立がしやすい環境になるよう企業主導型保育園や企業型ベビーシッター割引券などの制度を導入したり、「国際女性デー」をきっかけに、ジェンダー平等やダイバーシティ&インクルージョンについて考える社内イベント「ヤンマー国際女性デー」を開催したりするなど積極的に活動を進めています。
本記事では、新卒事務系女性総合職第一期生として入社して以来、ヤンマーでキャリアを築き上げ、2024年6月よりヤンマーホールディングス株式会社の取締役に就任した白藤万理子さんと、人事担当取締役として、ヤンマーのダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進してきた浜口憲路さんにインタビューしました。
<取材者プロフィール>
白藤万理子(しらふじ まりこ) 写真右
ヤンマーホールディングス株式会社 取締役
サステナビリティ推進部長(CSuO)
2000年新卒事務系女性総合職第一期生としてヤンマーに入社。アグリ事業とエネルギーシステム事業において経理を19年間担当し、本社の人事部門へ。2020年4月、障がい者雇用を推進するため設立されたヤンマーグループの特例子会社、ヤンマーシンビオシスの取締役企画管理部長として赴任、同年6月代表取締役社長に就任。2024年6月よりヤンマーホールディングスの取締役に就任。
浜口憲路(はまぐち のりみち) 写真左
ヤンマーホールディングス株式会社 取締役
エンプロイーサクセス本部長(CHRO)
長年、企画・管理業務に関わり、アメリカやシンガポールでの海外経験を経て、2020年7月よりヤンマーホールディングスの取締役に就任。ヤンマーのダイバーシティ&インクルージョンの取り組み強化に向け、ポリシー「Diversity For YANMAR」の制定や、ダイバーシティ推進グループの立ち上げなど、社員一人ひとりが多様な働き方を選択できるような環境づくりを牽引。
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。
一人の「仲間」として接してくれたヤンマー。
Q白藤さんは、プロパーの女性社員としてはじめてヤンマーホールディングスの取締役に就任されました。入社当時、今の姿を思い描かれていましたか。
白藤:想像もしていませんでした。女性初の事務系総合職として入社し、25歳で結婚しましたが、出産や復職、何年後に管理職に昇進というような具体的なキャリアは全く見えていませんでした。目の前にある状況を受け入れ、一生懸命頑張って自分なりに結果を積み上げていくことを地道に頑張ってきました。
そんな中で入社以降ずっと変わらなかったのは、この会社で働き続けたいという純粋な思いです。もちろんライフステージによっていろいろなハードルはありましたが、ヤンマーの「社風」「人」にすごく魅力を感じて入社したので、その気持ちは揺らぎませんでした。
浜口:私もヤンマーの「人」に魅力を感じている一人です。就職活動時、別の業界・会社への就職も検討していましたが、メーカーも見てみようという気持ちでヤンマーの話を聞きました。すると、会う人会う人がすごく魅力的で、「人」でこの会社にしようと決めました。だから今、ヤンマーの「人」に関わる人事の仕事ができて幸せです。私が魅かれたヤンマーのカルチャーを守りつつ、さらに進化させていくことはプレッシャーでもありますが、本当に楽しいです!
Q白藤さんの入社当時、ヤンマーはどんな様子だったのでしょうか。
白藤:最初、アグリ事業に配属され、2か月間販売会社で研修を行いました。毎日、現場の支店長とともに作業着を着て軽トラに乗り、お客さまと一緒に稲刈りをすることもありました。
今、考えると女性総合職を初めて受け入れる部門は大変だったと思います。例えば田んぼの近くにお手洗いがなかったり。そういったことを1つ1つクリアし、私を女性としてというより一人の仲間として受け入れ、のびのび育ててくれました。そこで「人を大切にする」というヤンマーの社風を肌で感じました。そういう社風だからこそ、これまで頑張ってこられたのだと思います。
ライフステージの変化を受け入れ、できることを一歩ずつ
Q仕事と家庭の両立について、どのようにお考えでしたか。
白藤:30歳で出産・育児を経験しました。当時、関東の保育園激戦区に住んでおり、0歳児のうちに預けないと入れないような状況でした。早めに申し込んでおこうとダメ元のつもりで手続きすると入園することができ、産後6ヶ月で職場復帰しました。当時は、時短勤務制度を活用し、夫とお互いの予定を調整しながら、その時々で柔軟にやり繰りしました。
キャリアプランと同様、夫婦としても「絶対に共働きで」などとプランがあったわけではありません。夫は両親も共働きだったので、私が働くことに違和感はなかったと思いますが、当初はおそらくこんなに長く働くと思っておらず、私が管理職になったぐらいから、「そうか、この人は働き続けたいという気持ちがあるんだな」という風に少しずつ受け入れてくれたのだと思います。その頃から夫婦で上手くバランスが取れるようになりました。
子どもが小学校に入ると、入学式、運動会、参観日と平日に様々な行事があり、そういった行事と仕事の繁忙期が重なると、同僚に気を遣うこともありました。しかし、同僚から「娘さんのために時間を作ってあげてください」と言ってもらい、すごく嬉しかったです。
たくさんの方々に支えていただき、仕事と家庭の両立が実現できたと感謝しています。社員全員がお互いの状況を理解し、感謝の気持ちを伝え合える関係性がすごく大切だと感じています。育児だけでなく、親の介護や自分自身のことで大変な時期は誰にでもあります。大変な状況の人には、周りが「大丈夫だよ」と言ってあげられたら、みんなが働きやすくなると思うんですね。
考えてもみなかった管理職へのチャレンジ
Qお子さまが7歳の時に管理職への打診があったそうですが、その時はどのような心境だったのでしょうか。
白藤:当時所属していた部署の課長ポストが空いて、「白藤、どうだ?」という話になったのですが、私は37歳で自信もなく、すぐには受け入れられませんでした。しかし人事担当が面談に来てくれ、気持ちを聞いてもらい、自分の仕事を評価してもらっていることを実感し、徐々に気持ちの整理ができました。そして最後は、上司の「管理職になったら見える世界が変わるから、一度やってごらん」という言葉に背中を押してもらいました。
実際に管理職に挑戦して、仕事がこれまで以上に楽しくなりましたね。会社の経営に少しずつ携わり始めることで、自分が会社の一部を動かしているという感覚を持つことができました。
Qロールモデルがいない大変さは、どう乗り越えたのですか。
白藤: 4年前にヤンマーシンビオシスの社長を任せると言われたときは、本当に驚きました。会社から少し上のストレッチ目標を与えてもらい、それにチャレンジすることで成長させてもらいました。もちろんプレッシャーもありますが、与えてもらったチャンスの中で、自分ができることを手を抜かずに一生懸命やる。もちろんやり始めるときは、できるかできないか分からず不安な気持ちで一杯になることもありますが、少しずつ乗り越え、その積み重ねで今があります。私自身はすごく仕事が楽しくて、これからもいきいき楽しく働いていきたいと思っています。だから同じような気持ちで働く社員がたくさん増えたら嬉しいです。
“大変な時期があっても、また羽ばたける”
Q自身の経験から後輩の女性社員へアドバイスしたいことは?
白藤:特に子育て中は、自分の理想と今できることのギャップで苦しみを感じる方が多いと思います。でもそれは一時期のことで、また思いっきり羽ばたけるときが必ず来ます。私自身、子どもから手が大分離れ、また仕事に注力できるようになりました。肩の力を抜いて、おおらかに長くキャリアプランを見てほしいです。
社員が状況に合わせて選べる柔軟性のある制度作り
Q浜口さんは人事の面から働きやすい環境づくりに取り組まれていますが、ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリットをどのように考えていますか。
浜口:多種多様な考えを受け入れ、新しい視点で物事に取り組めることだと思います。私が駐在していたシンガポールは、インド、中東、マレーシアなど、多様なバックグラウンドを持つ社員が多くいて、考え方もさまざま。そういった環境に身を置くことで、自ずとその違いを、それもいい、これもいいと受け入れられるようになり、物事に対する考え方の視野が広がりました。
また、女性活躍の面で言うと、海外では当たり前になっています。女性マネージャー(課長・部長職)が大半を占める当社のシンガポールの拠点では、多様な視点をビジネスに取り入れることで、売上やサービス向上にもつながっています。
Qヤンマーでは、ここ数年で社員の働きやすさに焦点をあて、さまざまな制度を整えられていますが、中でもヤンマーらしい制度があればお聞かせください。
浜口:元々ヤンマーには育児時短勤務制度がありましたが、子どもが小学3年生になるまでの期間を対象にした制度でした。社員からは、どうして小学4年生からは使えないのか、困る…という意見が多数寄せられていました。子どもを育てる期間は、小学生も、中学生も、高校生も同じ。状況に合わせて自由に使えるようにと、制度の対象期間を18歳までに延長しました。
また、産休・育休から復帰する社員の不安を少しでも取り除くため、復職のタイミングに合わせた本人と上長の面談や研修を導入しています。
この他にも、パートナーの転勤や、家族の介護などの事情で、生活拠点が遠隔地になった場合でも、その場から在宅勤務できる「遠隔地における在宅勤務」の導入も始めています。
Q女性活躍、ダイバーシティ&インクルージョンをさらに進めていくために、今後考えていることは?
浜口:これまでご紹介してきたさまざまな制度の更なる拡充および環境づくりです。制度は、社員の目線、使う人の気持ちに配慮したものであるべきです。社員がどうしたら働きやすいのかという視点で見たときに、社員の声を聞いて必要だと思われる制度やルールは全て作っていこうというのが私たちのポリシーです。それぞれの生活パターンや家庭環境に合わせて選べるように、選択肢を増やし、柔軟性のある制度を充実させることが、社員があらゆることに挑戦できる環境づくりにも繋がります。今後もHANASAKAの活動の一環として取り組んでいきます。
また、採用面では、比較的女性が少ない技術系において、理系の科目を専攻している女性向けのインターンシップ説明会の開催や研究所の見学など、実際に研究開発の現場で活躍している女性と接することで、キャリアプランのイメージができる機会をさらに増やしていきます。
白藤:ダイバーシティという観点で、女性だけではなく、様々なバックグラウンドを持つ社員が、それぞれの挑戦を応援し、感謝し合える、そしてそれぞれのフィールドでいきいきと働き活躍している、そんな会社にしていくことがこれからヤンマーが進めるべきダイバーシティ&インクルージョンの形だと思っています。
各々が思い描くキャリアの実現に向けて、挑戦し続けられるよう、私のこれまでのキャリアで得た経験やノウハウを伝えていきたいです。挑戦する気持ち・挑戦する人を社員全員が後押しするHANASAKAの風土を今後も発展させていきます。