2021.04.19
「ヤンマー製品を描こう!」イラストコンテストの優秀賞発表!佐藤可士和氏が語る、クリエイティブへの思い
2021年2月17日~2021年3月16日に、ヤンマー公式Twitterにてヤンマーイラストコンテストを開催しました。本コンテストでは、ジャンルを問わずヤンマー製品をモチーフにしたイラストを募集し、皆さまのオリジナリティ溢れた作品を多数応募いただきました。審査員には2012年からヤンマーのブランディング活動のクリエイティブディレクターを務める佐藤可士和氏を迎え、厳正な審査を行いました。
今回のY mediaでは、佐藤可士和氏に優秀賞作品の発表と作品についての感想、そして、これまでのヤンマーとの歩みについてお話しいただきました。
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。
優秀作品 結果発表
――「優秀賞」5作品についてコメントをお願いします
タイトル:YT225
コメント:家が農家の為、定期的にヤンマーの展示会に行っていました。そこで去年一目惚れしたのがこのYT225でした。許可をもらって撮影した写真を私が大好きなパーツである「顔」をアップで模写しました。色よりも線を強調したかったのであえてモノクロで描きました。大好きなヤンマートラクターが描けて、さらにその作品が優秀賞に選ばれてとても嬉しいです!ありがとうございました!
佐藤可士和(以下、佐藤):僕はヤンマーのトラクターの顔が大好きなので、このイラストを見た時「これはいい!」と思いました。ヤンマーのトラクターは「赤」が特徴的なのですが、あえてモノクロにしている。しかも、白と黒だけで中間のグレーを使わないハイコントラストで描いているところに「ヤンマーのテクノロジー感」を感じます。トラクターの切り取り方も凄くカッコいいです。顔のところだけを切り取り、右側の方にスペースを空けているのが実に効果的で、新鮮さも感じます。
タイトル:無題
コメント:ヤンマーは日本の誇るべき企業です。自分自身、機械や乗り物を描くことが苦手ではあるのですが…できる限りの画力で描かせていただきました!右上にさりげなく描いたオニヤンマがポイントです。
佐藤:非常にデザイン性を感じさせる作品です。ヤンマーのブランドマークである「FLYING-Y」が真ん中にあり、FLYING-Yとトラクターのボンネットだけが赤で、あとは全てモノクロ、ヤン坊マー坊がシルエットになっているなど、「全てを描写するよりも、省略することで世界観を感じさせる」という高度な描き方をしています。さらに「地球を舞台にヤンマーが様々な活動をしている」ことや「ヤンマーの名前の由来であるトンボ(オニヤンマ)」など、とてもコンセプチュアルなところが好印象です。
タイトル:トラクター Be Cool!
コメント:夢のある運転したくなるかっこいい機械があれば楽しいな。一つ一つの部品がそれぞれ機能し生まれるエネルギー。知恵を合わせばどんな困難も乗り越えられる。人と人が繋がって無限に未来を作り出していく、そんなことを思い浮かべて描きました。
佐藤:スタイリッシュな作品が多かったなか、他の作品とは違う「なにかワクワクする、楽しいヤンマー」を感じさせてくれました。ヤンマーは「A SUSTAINABLE FUTURE」というブランドステートメントを掲げ、豊かな未来を4つの社会で定義し、その実現に向けて活動しています。「ワクワク」は、ヤンマーが大切にしているキーワードです。カラフルな色使いがとても綺麗で、「ワクワクするような未来を作っていきたい」というヤンマーの思いがユニークに表現されているように感じます。
タイトル:ヤン坊マー坊ヤンマートラクター!
コメント:ヤンマーと言えばヤン坊マー坊とヤンマートラクター!
佐藤:トラクターの質感やヤン坊マー坊の描き方など、プロ級のイラストレーションに仕上がっています。トラクターは、赤と黒と黄のみで、非常にシンプルな色使いですが、「ヤンマーのテクノロジー」を感じさせます。ヤン坊マー坊の配置も凄く良いですし、赤い線画で描かれているところに「親しみやすさ」を感じさせます。シンプルかつ大胆で、スタイリッシュに仕上がっている、非常にレベルの高い作品だと思います。
タイトル:トラクターYT4Aちゃん
コメント:ヤンマーのトラクターYT4Aを擬人化してみました。気は優しくて力持ち!機動力抜群の、頼りになるお姉さんです!!トラクターなので、農作業しやすい、動きやすい服装にデザインしました。脚部分をオフロード式のローラースケートにして、機動性の高さを表しています。トラクターの強い馬力が一目でわかるように腕をパワフルに大きくしました。
佐藤:「トラクターを擬人化した」というコンセプトが凄く面白いです。「未来のトラクターはこんなカタチになるかもしれない」と予感させてくれる作品だと思います。キャラクターの足に車輪が装備されていたり、ボディにエンジンがあったり、人とトラクターが一体化している「未来のヤンマーのアグリウェア」ともいえるかもしれません。未来を描く夢のあるストーリー性と、「こういう斬新な発想から、何か本当に新しいモノが生まれていったりするのかもしれない」と感じさせてくれるイラストです。
イラストコンテスト 応募作品の総評
――応募作品の総評と、優秀賞を選んだ基準は?
佐藤:今回の応募作品を見ると「皆さんが楽しんで描いてくれている」という印象があり、僕もとても楽しい気持ちになりました。今回のイラストコンテストで、「みなさまとヤンマーとの距離が縮まったかな」と感じました。
応募作品はトラクターのイラストが多かったのですが、他にもFLYING-Yやヤン坊マー坊も多くありました。
ヤンマーのブランドマークであるFLYING-Yは、自分がデザインしたシンボルマークなので、世の中に浸透してきていると感じられてとてもうれしかったですね。
優秀賞を選んだ基準は、イラストの着眼点やコンセプト、ユニークさを重視しました。僕は「自分の思いをビジュアルにする」ことは、とても大切な事ことだと思っています。コミュニケーションには、話すことはもちろん、写真を撮ったり、絵やイラストを描いたり、いろいろな手段があると思います。僕は子供の頃から絵が大好きで、絵をずっと描いていたら、その延長線上でクリエイターになっていました。絵やイラストは、いろいろなメッセージを込めることができ、自分なりの視点で自由に創れるところが魅力です。テーマは何でもよいので、自分の想いをどんどんビジュアルにしてほしいです。そして描いた想いは、SNSなどを使ってどんどん発信していくのもいいですね。
今回のイラストコンテストは、ヤンマー公式Twitter初の取り組みだったわけですが、「優秀賞作品」をご覧になった皆さんも、ぜひ!チャレンジしていただけたらうれしいです。
応募いただいた全作品はこちらからご覧いただけます。たくさんのご応募誠にありがとうございました。
ヤンマーと佐藤可士和氏の歩み
2012年、創業100周年を迎えたヤンマーは、自社が社会に存在する意義や使命をあらためて見直し「ミッションステートメント」にまとめました。そして、2013年。このミッションステートメントの実現に向けて、「プレミアムブランドプロジェクト」を立ち上げ、プロジェクトのクリエイティブディレクターに佐藤可士和氏が就任しました。
――2013年の就任後、どのようにしてプレミアムブランドを創っていかれましたか?
佐藤:当時、僕は「ヤンマーには2つの課題がある」と思いました。1つは、ヤンマーはいろいろな活動をグローバルに展開しているのに、正しく理解されていないということ。例えば、ヤンマーの事業フィールドは、アグリ・マリン・エネルギー・建機など、多方面の領域で活動しています。しかし、日本ではヤン坊マー坊と農業のイメージが強く、一方ヨーロッパから見るとマリンのイメージが強い会社でした。一言でいえば、バラバラだったブランドイメージをグローバルに統一させることでした。
もう1つは、ヤンマーはさまざまな分野で凄いテクノロジーを持っていながら、あまりテクノロジー感が伝わっていないことでした。
――これらの課題をどうやって解決していったのでしょうか?
佐藤:まずは、ビジュアルにそのイメージを集約できるようにブランドマーク「FLYING-Y」をデザインしました。そして、ヤンマーが目指すべき豊かな未来への使命として「A SUSTAINABLE FUTURE」というブランドステートメントをヤンマーの社員の方々と一緒に構築し、社会に向けて宣言しました。
「FLYING-Y」と「A SUSTAINABLE FUTURE」を軸に、トラクターやボートのコンセプトモデルを発表、ホームページのリニューアルやテレビCMの制作、ユニフォームの刷新、ヤンマーミュージアムのリニューアルなど、さまざまなプレミアムブランド活動に取り組んでいきました。
ヤンマーミュージアムは、「やってみよう!わくわく未来チャレンジ」というコンセプトでコンテンツを含めたリニューアルを行いました。今回の応募イラストを見ると、ハイテクを感じられる絵が多かったので「テクノロジーブランディングは伝わっているのかな」という実感を得られ、うれしく思いました。
佐藤可士和展
現在、国立新美術館において「佐藤可士和展」が開催中。佐藤可士和氏がキュレーションする会場構成のなかで、約30年にわたる活動の軌跡を多角的に紹介。トラクターをイメージさせる素材で出来た巨大ヤンマーのロゴ「FLYING-Y」も展示されています。
■会場:国立新美術館 企画展示室1E
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
■会期:2021年2月3日(水)-5月10日(月)
■「佐藤可士和展」WEBサイト
https://kashiwasato2020.com/