ViO20のベースマシンは開発から10年以上が経過しており生産方法も最新機との相違点が多くありました。今回のモデルチェンジにあたっては、開発部が最新機と同様な仕様で設計しているため、最新機の生産プロセスにスムーズに組み込めるかがポイントでした。
この点は開発部や生産技術部から現場に対して早いタイミングで情報の共有をしてもらっていたので、実際には戸惑うことはほとんどありませんでした。
2019.01.17
多くの建設現場で活躍するヤンマー建機の中心機種ViO20。生産現場では、現行機の生産を行いながらモデルチェンジする新型機を量産化するための試作を重ね、品質を高めるために開発部門にフィードバックを行いながら最適な生産行程を確立。従来機よりもスピーディーに新型の量産への移行を実現しました。
Part2では、ViO20の重要な工程を担う溶接部門と組立部門、2つの生産部門の班長の声を通して「人々の豊かな暮らしの基盤づくりに貢献するため、世界のあらゆる現場に新しい価値を提供し続ける」というヤンマー建機が掲げるビジョンの“ゴール”に向けた思いをご紹介します。
―― 新機種の生産にあたって、特に気をつけたことはどんなことですか?
ViO20のベースマシンは開発から10年以上が経過しており生産方法も最新機との相違点が多くありました。今回のモデルチェンジにあたっては、開発部が最新機と同様な仕様で設計しているため、最新機の生産プロセスにスムーズに組み込めるかがポイントでした。
この点は開発部や生産技術部から現場に対して早いタイミングで情報の共有をしてもらっていたので、実際には戸惑うことはほとんどありませんでした。
―― 従来機と違なるプロセスに対して、苦労した点、良かった点を教えてください。
試作段階から携わっていたため、組立や加工に使用する工具などについて実際に使ってみて良い点・悪い点を生産技術部のメンバーにフィードバックしながら進めました。
苦労した点は、機械が旋回するために必要な「ターニングフレーム」という部分の溶接加工です。溶接の際にどうしてもひずみができやすいので、現場で蓄積しているデータを最大限活用しました。ViO20-6は3次元CADで設計されているので、立体的に細部の仕様を確認できたことは大きかったですね。
図面を見ながら、「この箇所はロボット溶接」、「ここは手作業で行う」といった判断をしたり、現場スタッフの技術訓練に早くから取り組むことができました。
―― 次に、組み立て工程で苦労した点、良かった点を教えてください。
従来は試作機の組立ても開発部員が行っていましたが、ViO20-6では実際に組み立てている生産部員が組立てました。
私が担当している組立工程でも、作業の順番や使用する工具を検討するなどに3次元CADの図面が役立ちました。配線の通し方など機械の裏側の部分まで図面レベルでシミュレーションできたのは大きかったですね。「組立検討会」で実際に設計通りに組み立ててみてさらに課題を洗い出していきました。
ViO20-6の基本構造はViO25にとても近いのですが、ViO20-6独自のコンパクトさを出すために油圧ホースや配線まわりの間隔がタイトに設計されており、実際に組み立てると想定よりも時間がかかることがわかりました。電装品や操作席の設計変更によって旧型よりも工数が増えてしまうことはどうしても避けられませんでした。
―― 品質を守るためには、工数や作業時間を確保するしかないのですね。
溶接のひずみについても加工の工数を増やすことで対処できることがわかりました。従来機より作業時間の増加は技術を高めることで改善していきました。
―― 今回の取り組みを現場はどう感じていますか?具体的に変化が表れていることがあれば教えてください。
組立現場の情報を共有することで開発側がきちんと設計に生かしてもらえるので成果を感じます。今回、製品が完成形に近づいてから大きな問題が起きなかったことも、開発と生産の情報共有の密度が濃かったからではないでしょうか。
―― 現場で行っている新しい取り組みもあるのでしょうか?
現在私は、工場全体のIoT(Internet of Things)推進活動を行っています。各生産部門で使用している工具の磨耗や利用状況などの情報をできる限り個別データ化し、開発に生かせる情報を今以上にフィードバックできたらと考えています。
―― 最後に、生産に携わる立場として大切にしていることと、「ここがヤンマー建機の現場の強みだ」と感じることがあれば教えてください。
生産現場としては、「建機に不具合が発生して、お客様の作業が中断してしまうことは絶対に起こしてはならない」という想いで品質向上に努めています。生産の各部門で「次の部門が作業しやすいように」という意識を全員が持っていて、積極的に改善提案の声があがってくることがヤンマー建機らしさかもしれませんね。
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※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。