未来を動かす人インタビュー

大規模な太陽光発電所を複数構築
ヤンマーとしてクリーン電力を
生み出すオフサイト自社電源を確保
GHG排出ゼロを目指す
現在、米原市・滋賀県と共に協同で進められている「ECO VILLAGE 構想」。米原市内の耕作放棄地、遊休地に営農型太陽光発電設備やオフサイト太陽光発電設備を設置し、公共施設やヤンマー中央研究所にクリーン電力を送電するプロジェクトの技術全般を担当する小野さん(ヤンマーホールディングス株式会社 技術本部 中央研究所 主幹)に現在の状況を伺いました。
複数の発電所から複数の
需要家へ
無駄なくクリー
ン電力を送電する
「広域
需給管理システム」を開発
発電アグリゲータとして
クリーン電力の
最適配分を
行い地域の脱炭素化に貢献
「ECO VILLAGE 構想」に携わったのは2023年から。耕作放棄地や米原市の遊休地に設置する営農型太陽光発電設備やオフサイト発電設備の設計エンジニアリングをはじめ、発電したクリーン電力を米原市役所や滋賀県東北部工業技術センター、ヤンマーの中央研究所に送電するためのシステムの設計など、技術全般に携わっています。
一般的に太陽光発電設備は敷地内の屋根や駐車場、空きスペースなどに設置するのですが、設置場所が確保できないため消費電力に対して十分な発電量が得られないのが課題です。今回のプロジェクトでは敷地外に複数の太陽光発電設備を設置することで、系統配線を介して十分なクリーン電力の供給が可能となります。
電力の消費量は平日や祝日、朝、昼、夜など人の動きに合わせて変化しますが、太陽光発電は自然任せのため電力の需要と供給が必ずしも一致しないのが大きな課題の一つです。このため複数の発電所から複数の需要家へ供給する電力を最適に配分し、需要と供給のバランスを一致させることができるよう開発したのが「広域需給管理システム」です。このシステムは適切な需給管理だけでなく、蓄電池の最適制御を行うことで余剰充電の有効活用や、電力市場の電力価格が低い時に充電し高い時に放電することで差益による収益化も可能です。さらに蓄電池に貯められてる電力は災害時に有効活用でき、避難場所の照明や空調への電力供給を始め、スマホやPCといったモバイル機器の充電や電気自動車の充電にも活用できるよう進めています。この取組により、中央研究所としてのレジリエンス強化につながり、地域住民の避難場所として活用することで地域貢献も進めていきたいと考えております。

米原市や地元住民と意見交換を繰り返し
二人三脚で課題を解決していく
私はヤンマーホールディングスやヤンマーエネルギーシステムで、技術者としてエネルギー関連の仕事に携わってきました。
今回のプロジェクトでは、米原市の方々はもちろん、協力企業や土地の持ち主、農家の方々など、さまざまな人が関わっていて、直接お話しする機会もたくさんあります。自分が携わっている仕事の反響をダイレクトに聞けるのは新鮮ですし、使う側の意見も大変参考になります。
一方、それだけたくさんの人が関わっているので、小さな決め事を調整するだけでも大変な苦労がありました。我々が一方的にやるのではなく、地域の方々の思いも取り入れながら進めているので、完成したときには誰もが納得のいくプロジェクトとなるのではないでしょうか。

「ECO VILLAGE 構想」を契機に広がる可能性
新たなソリューション提供につなげる
現在は米原市内の耕作放棄地や遊休地への営農型太陽光発電設備およびオフサイト太陽光発電設備設置の目途が立ち、「広域需給管理システム」の調整を進めているところです。このプロジェクトは、米原市が抱える課題を解決するだけでなく、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」というヤンマー独自の取り組みの推進にもつながっています。「循環する資源を元にした環境負荷フリー・GHGフリーの企業になる」、「お客様のGHG排出ゼロ・資源循環化に貢献する事を目指す」というカーボンニュートラル実現に向けた取り組みで、自社電源としてのシステム、蓄電池システムを構築できたのは、ヤンマーとしても大きな一歩となりました。今後は電力の需給バランスを調整するアグリゲーターとしてのノウハウも蓄積し、地域のさまざまな課題に応えられるようにしていきたいです。


ヤンマーホールディングス株式会社
技術本部 中央研究所 主幹
小野 泰右さん
1997年入社。ヤンマーエネルギーシステムの技術開発を経て、ヤンマーホールディング株式会社に異動。
