SOLUTION 01 / Environmental Load Reducing 環境負荷低減

脱炭素社会への移行を実現する
水素燃料電池システム

ヤンマーホールディングス株式会社 技術本部 ヤンマーパワーテクノロジー株式会社 特機事業部
ヤンマーマリンインターナショナルアジア株式会社
近年、地球温暖化問題が深刻化し、温室効果ガス(GHG)を発生しない脱炭素社会への移行に向けた動きが世界中で急激に加速しています。これまで使われてきた化石燃料に変わる“クリーンなエネルギー源”の一つとして、「水素」が世界的に注目を浴びています。ヤンマーでは、脱炭素社会への移行に向けて、水素を使って電気を作る燃料電池技術の開発を進めており、まずは船舶向けの水素燃料電池システムの実用化を目指しています。

ISSUE

船舶から排出される温室効果ガスや大気汚染物質をゼロに

海事分野においては、2018年に国際海事機関(IMO)がGHG 削減戦略を採択し、今世紀中のなるべく早期に国際海運からのGHG排出ゼロを目指すと共に、2030年までに単位輸送当たりの排出量を40%以上改善、2050年までにGHG総排出量を50%以上削減(いずれも2008年比)する目標が掲げられており、更には目標達成時期の前倒しも検討されています。また、欧州や米国では都市部や環境保護地域、大規模港湾等におけるNOx 排出削減に向けた取組みも加速しています。エンジンなどの内燃機関とは異なり、水素燃料電池から排出されるのは水だけであり、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスや窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質を一切排出しません。一方で、船舶の運用環境や安全規則に対応する為の新たな技術開発が必要になります。加えて、実用化する為には、船舶への水素充填方法の検討も必要になります。

次世代エネルギーとして注目を浴びる「水素」のメリット

  • 地球上に
    たくさん存在する
  • 再生可能エネルギー
    (太陽光・風力・地熱など)の電力から
    水を分解して作ることができる
  • 利用時(発電)において、
    CO2を出さない

SOLUTION

国の安全ガイドライン策定活動への参画から試験艇による実証試験まで、ヤンマーグループおよび企業の垣根を超えた挑戦

2015年より3年間かけて、ヤンマーは海上技術安全研究所等と共同で「水素燃料電池船の安全ガイドライン」の骨子策定を国土交通省から受託して実施しました。その後、トヨタ自動車製の燃料電池自動車「MIRAI」の部材を活用して、舶用水素燃料電池システムの開発および試験艇による実証試験を行っています。本試験艇の開発においては、水素燃料電池システム開発メンバーだけでなく、ヤンマーグループ内の様々な部署から船体設計メンバーや電気設計メンバーや制御設計メンバーが参画し、前述の安全ガイドラインの要件を満たした上で燃料電池や高圧水素タンクを搭載する船体構造や、燃料電池とリチウムイオンバッテリとモーター等を連携制御するパワーマネジメントシステムも同時に開発しました。

建造中の実証試験艇。
安全性とコンパクト性を両立させるために衆知を集めた試行錯誤が続いた。

RESULT

現場・現物でしか得られない経験と絆が
船舶分野における水素燃料電池の実用化の扉を開く

開発した試験艇を用いて、実際の海上航行時における水素燃料電池システムの動作および電動パワートレインの制御方法の検証等を行い、様々な航行状態や海象条件におけるデータ収集や改良案の検討を進めています。また、豊田通商、岩谷産業と連携して、船舶への高圧水素充填方法の検証も進めており、移動式水素ステーションを用いた世界初となる船舶への70MPa高圧水素充填を実施しました。これらの現場・現物から得られた結果や経験を、今後の水素燃料電池システム商品化開発や舶用水素インフラの検討に活用していきます。そして、これらの取組みを通じて生まれた社内外の様々な絆が、今後の新たな取組みに繋がっています。

70MPa高圧水素充填試験の様子。

(1分39秒)

FUTURE脱炭素社会の実現に向けて、
様々な用途に水素燃料電池を展開

300kW級の舶用水素燃料電池のイメージ(CG)。

ヤンマーでは、様々な船種に搭載可能な300kW級の舶用水素燃料電池システムの開発を進めており、2023年の市場投入を目指しています。また、燃料電池だけでなく、リチウムイオンバッテリやモーターと組み合わせた電動パワートレインをお客様に提供する取組みも進めています。更には、船舶用以外にも、陸用発電機等への水素燃料電池の展開も検討しています。今後も引き続き、水素や電動パワートレインに関する様々なソリューションをお客様に提供する取組みを加速し、脱炭素社会への移行を牽引していきます。

※所属は2021年10月時点の情報です

Y media

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