昨年、中央研究所が設立60周年を迎えました。設立以来、中央研究所はヤンマーの商品やサービスの基盤となる、基礎技術開発および応用技術開発を担う専門機関として活動し、技術力向上に貢献してきました。これを記念し、これまでの代表的な研究活動、近年の研究活動(最新の研究活動はヤンマーテクニカルレビュー記事のご紹介)、そして今後の展望をご紹介します。
2017.01.11
ヤンマーのテクノロジー開発拠点のひとつ「中央研究所」が、設立60周年を迎えました
燃費の向上に寄与し続けるエンジン研究
1973年10月に第1次石油危機が発生すると、社会のあらゆる分野で省エネが課題となり、ディーゼルエンジンにも燃費向上が強く求められるようになりました。そこで、研究開発を本格化させたのが直噴(直接噴射)式エンジンです。燃焼室内へ均一に燃料を噴霧するには噴霧口の数や配置を最適化する必要があり、当社ではスワール(燃焼室内に発生させるうず流)の試験装置や評価技術を自ら開発するとともに、燃焼室の形状にも試行錯誤を重ね、直噴化に向けた技術開発を進めました。その結果、中・小形ディーゼルエンジンの直噴化に成功し、大幅な燃費向上に寄与することができました。その後も燃費向上に向けた研究を継続し、各出力クラスにおいてトップクラスの低燃費を実現しています。
<ヤンマーテクニカルレビュー>
農業機械の機能性・操作性を向上させた電子制御研究
1981年9月に業界に先駆けて、メカトロニクス研究の単独部門を新設しました。メカトロニクスとは、機械製品に電子工学の技術を付加し、高性能な製品の開発を目指す電子機械工学分野を指します。メカトロニクス技術は当初、姿勢制御など農業の作業精度向上に活用していましたが、同業他社も競うように研究開発を進めており、日進月歩でした。トラクタでは1981年に耕うん深さを自動的に制御する「オートロータリー」や、水田作業時に作業機の水平を保つ「UFOマチック」など、電子制御ならではの高機能を有した新商品を次々と市場に投入しました。従来は人間の勘頼みだった作業も、こうした機能によって誰もが簡単な操作で実現できるようになりました。コンバインでも1978年、刈取り高さやこぎ深さを自動制御する装置に加え、稲の列を感知する自動操向装置を搭載したTC2200を発売、国内市場だけでなく、台湾でも大ヒット商品となりました。
メカトロニクス技術は農機ばかりでなく、トランスミッションや燃料噴射装置の制御、船舶用のリモコン装置、さらには新規分野の商品へと応用範囲を広げていきました。
<ヤンマーテクニカルレビュー>
2000年以降は技術構築の領域が広がり、研究拠点もグローバルに
事業発展とともに、中央研究所は幅広い事業領域に向けた技術構築に取り組んできました。
特に2000年の米原移転を機に、エンジン研究や電子制御研究に加え、作業機やエネルギーシステムを対象とした技術開発にも力を入れています。
<ヤンマーテクニカルレビュー>
さらに、グローバルな研究開発体制の構築を目指して、海外にも研究所を設立しました。
2007年1月、マレーシアに「ヤンマー・コタキナバルR&Dセンター(YKRC)」を設立。
バイオマスをはじめとする新エネルギー利活用に関する研究開発を行っています。
<ヤンマーテクニカルレビュー>
2011年6月には、イタリアに「ヤンマー R&D ヨーロッパ S.r.L (YRE)」を設立しました。
エネルギー技術と作業機技術の二つの技術分野で中長期の研究テーマを設定し、現地の大学をはじめとする研究機関や企業と連携して研究活動を推進しています。
次の100年に向け、新しい豊かさの実現へ
2012年に100周年を迎えたヤンマーは、次の100年の豊かな社会の実現に貢献すべく、様々な活動を開始。その中で、中央研究所では、「最大の豊かさを、最少の資源で実現する。」ための技術構築に、これまで以上に真摯に取り組んでいます。お客様の課題を解決し、未来につながる社会とより豊かな暮らしの実現に貢献してまいります。