奥田 憲弘
ヤンマーエネルギーシステム 開発部 空調システムグループ 主任
2005年の入社以来、GHPの設計に従事。構造設計からスタートし、現在はシステム全般の開発に携わる。ハイブリット空調システムの設計全般の取りまとめを担当した。
2017.11.08
お客さまの状況に合わせてガスと電気を最適な運転比率で制御し、省エネ・低コスト化を実現したハイブリッド空調システム。ガスエンジンと電気モーターを一つの筐体に搭載したことで、設置にかかる工数の大幅な削減に成功し、省スペース化も実現しました。
今回Y MEDIAでは、ハイブリッド空調システムの量産化に尽力したメンバーにインタビューを敢行。開発・製造・営業から、奥田さん、藤川さん、西口さんにお話をうかがいました。
奥田 憲弘
ヤンマーエネルギーシステム 開発部 空調システムグループ 主任
2005年の入社以来、GHPの設計に従事。構造設計からスタートし、現在はシステム全般の開発に携わる。ハイブリット空調システムの設計全般の取りまとめを担当した。
藤川 清二
ヤンマーエネルギーシステム製造 品質管理部 製品検査グループ 製品検査係 係長
2003年入社。GHPの既量産機・新機種立ち上げに関する品質管理を担当。今回のプロジェクトでは、製造目線で試作機の問題点の潰し込み、品質管理体制の構築などを行った。
西口 公人
ヤンマーエネルギーシステム 営業統括部 空調システム営業部
2015年入社。GHPの販売企画や各拠点の営業担当者の支援などが主な業務。今回のプロジェクトでは、販売政策の立案や整備、拠点の営業担当者への商品説明などを担当。
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。
市場調査、商品企画を経てコンセプトが固まったのは2016年の春先。通常2~3年かけて行う商品開発を約1年という短期間で行うことが決定しました。
奥田さんは、
電力小売りの完全自由化(2016年)など国内のエネルギー状況が大きく変化していた時期で、新商品に関しても、2017年4月のガスの自由化に合わせて発売したいという思惑がありました。
と短期間での開発が求められた背景を説明します。
コンセプトの決定を受けて、すぐに先行開発に着手。今回初めて使用する電気モーターの動作評価を4~6月にかけて行いました。実際にガスエンジンと電気モーターを同じ筐体に入れて、どのような動きをするのか、不具合がないかなど確認しました。
開発で大変だったのが、ガスと電気を効率的に使い分ける「最適制御」への対応です。今回の開発は未知の部分が多く、ハード、ソフト、制御、遠隔監視のグループが今まで以上に連携。実現方法を全体で考え、「ハード対応が困難な部分は制御でカバーしよう」など協力しながら進めました。先行開発を終え、第1試作機が7月に完成。しかし、そこから先も大変でした。
作り込む上での品質・効率面の問題を改善し、結果を次の試作でフォローするのですが、フォローが十分でない部分や新たに顕在化した問題に対し、試作と改善を粘り強く繰り返しました。
と藤川さんは当時を振り返ります。
あまり実機に触れることのない制御や遠隔監視のメンバーも頻繁に岡山の試験場を訪れ、真冬の寒い時期には一緒に震えながら、改善にあたりました。最終的に試作機の数は、半年で10台。
通常、試作機は2~3台なので、異例ともいえる数でした。苦労しましたが、その分、深いところまで検証を行うことができ、商品の精度を上げることができました。
量産にあたっても、問題は山積みでした。特に苦労したのは組み立ての効率化。新商品では電気モーターの搭載により、部品が新たに追加されており、組み立て工数が増えてしまいます。増えた工数を組み立てやすさでカバーするため、いかに単純に組めるか、をテーマに開発と製造で取り組みました。開発では、組み立て作業者の負担を減らすため、現行機との部品の共通化を促進。結果、約8割の部品を共通化することにしました。
製造ラインでは、
1つのラインだけで完結しようとすると成り立たないので、インバータボックスを別の組み立て台で組み、本ラインに供給する形を取りました。
また、インバータボックスは組み立てた後に配線などの確認ができないため、作業者自らがチェックシートで検査する品質保証の仕組みも確立しました。
品質とラインスピードを落とさないように品質管理部と生産部が一体となって乗り越えました。
異例の10台の試作を経て、自信を持って世に送り出すことができる商品がついに完成。今年6月からの量産にこぎつけました。
藤川さんは、
現場にはまだ戸惑いがあると思いますが、台数を重ねるなかで、ラインとして定着させるためにも、初期の品質安定管理をしっかりと行います。
と力を込めます。
短期間で、業界初の一体型ハイブリッド空調システムの商品化を実現させたメンバー。プロジェクト成功の要因について、西口さんは、
新しいコンセプトの商品だったので、『いい商品ができるのでは』という期待感やワクワク感を皆さんが共有していた気がします。
と話します。
西口さんによると、実際にモニター機の設置に協力してもらった高松支店の営業担当者も率先して動いてくれたそうです。
開発にとっても自ら考え、行動する場面が多かったので、やりがいがありました。プロジェクトメンバーからも『いい開発ができた』という感想を多く聞きました。
多くの人を巻き込んだことで、自分たちでは気づかなかった問題点を発見し、潰し込むことができました。
と藤川さん。
開発、製造とつないだバトンを受け取った西口さんは、
営業の勝負はここからです。素晴らしい商品をつくっていただいたので、自信を持って魅力を伝え、販売していきます。エネルギー自由化の流れは、新しいお客さまとつながるチャンスです。GHPも含めてさらなる販売拡大を目指し推進していきます。
と意気込んでいます。
遠隔監視システムと組み合わせることで、エネルギーの需給状況や価格に応じて、ガスと電気を使った最適な運転が可能なハイブリッド空調システム「スマートマルチ」。ガスエンジンと電気モーターを一つの筐体に搭載した業界初の空調システムは、エネルギーコストの変動や、負荷に応じた省エネ運転に柔軟に対応することで、お客様のランニングコスト、一次エネルギー消費量を削減します。
※ スマートマルチは東京ガス株式会社の登録商標です。