島本美由紀(しまもと みゆき)
料理研究家・食品ロス削減アドバイザー(消費者庁 食品ロス削減推進大賞委員長賞受賞)、冷蔵庫収納&食品保存アドバイザー。実用的なアイデアが好評で、NHK『あさイチ』、日本テレビ『ZIP!』『ヒルナンデス!』出演するなどテレビや雑誌、講演会を中心に多方面で活躍中。『ムダなく使いきれる! 冷蔵庫収納術』『いつでもおいしい 冷蔵・冷凍保存術』(ともにコスミック出版)をはじめ、著書多数。
2024.10.28
円安やそれに伴う物価上昇で、家計の無駄をなるべく減らしたいと思っているご家庭も多いのではないでしょうか。
そこで考えたいのが、食品ロス(フードロス)。食品ロスとは、まだ食べられるのに売れ残りや食べ残し、期限切れなどで食品が廃棄されることで、10月は「食品ロス削減月間」とされています。
対策することで、家計にもやさしく、さらに環境負荷の低減、将来的な食糧不足の改善にもつながる食品ロス問題。家庭ではどんなことができるのでしょうか。料理研究家で食品ロス削減アドバイザーの島本美由紀さんに話をうかがいました。
島本美由紀(しまもと みゆき)
料理研究家・食品ロス削減アドバイザー(消費者庁 食品ロス削減推進大賞委員長賞受賞)、冷蔵庫収納&食品保存アドバイザー。実用的なアイデアが好評で、NHK『あさイチ』、日本テレビ『ZIP!』『ヒルナンデス!』出演するなどテレビや雑誌、講演会を中心に多方面で活躍中。『ムダなく使いきれる! 冷蔵庫収納術』『いつでもおいしい 冷蔵・冷凍保存術』(ともにコスミック出版)をはじめ、著書多数。
10月30日は消費者庁が定める「食品ロス削減の日」。国内の年間食品ロス量472万トンのうち、事業と家庭、それぞれの廃棄量はどれくらいだと思いますか? 正解は236万トンずつで、ちょうど半々(※1)。
ただし、事業系の食品ロス量は、この数年で大きく減りました。
恵方巻やクリスマスケーキといった季節もの商品の予約制導入、飲食店などでの「食べきり」「持ち帰り」の促進、賞味期間の3分の1を超えたものを入荷しない、3分の2を超えたものを販売しないといった商慣習の見直しなど、仕組みの改善によってずいぶんと削減されたのです(※2)。
※1 出典:農林水産省の令和4年度版推計値
※2 出典:農林水産省 – 食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢(令和6年7月時点版)
そのため、ここからさらに全体の食品ロス量を減らすには、家庭でのアクションが鍵を握っています。料理研究家で食品ロス削減アドバイザーの島本美由紀さんは以下のように説明します。
「家庭では、今も一人あたり毎日おにぎり1個分ほどの食べものが捨てられています。食費で計算すると、4人家族が1年間に無駄にしている金額は、なんと約6万円(※3)。
食材が高騰している今、その影響はさらに大きくなっているかもしれません。食品ロスをなくせば家計の節約ができ、食べものを捨てる罪悪感からも解放されます。そのうえ、環境にもいいのです」
※3 出典:京都府京都市試算
家庭の食品ロスが起きる背景は、大きく3つ。本当は食べられる野菜の皮や芯の部分などを捨ててしまう「過剰除去」や悪くなった食材の「直接廃棄」、調理後の「食べ残し」です。
「家庭からよく捨てられているのは、野菜や調味料。日常的な食材で賞味期限が早い牛乳や豆腐、納豆も多いようです。各家庭で何気なくロスしているものが積もり積もって、いつのまにか236万トンもの山になっています」
では、家庭で起きるそんな食品ロスに、私たちは何ができるのでしょうか? 島本さんは「買いもの・保存・調理の3ステップから、自分ができることを選べばいい」と言います。
「『食材を無駄にしないようにきちんと調理しなくては』と思うと、料理が苦手な人にはプレッシャーですよね。でも、食品ロス対策は調理だけではありません。誰もができる買いものや保存の方法を見直すだけでも、ぐっと無駄が減らせます」
買いもののコツは、一度で2~3日分を目安に、家族の人数や生活に合わせて適量を買うこと。また、大容量の調味料は使いきれずに捨ててしまいがちなので、ミニサイズのほうが結果的にお得なことも。
「冷蔵庫の中身をチェックして、何を買い足せばどんな料理ができるかをイメージしてから出かけるだけでも買い方が変わるはず。
特売にもむやみに飛びつかず、具体的な使い道が思いつくものだけカゴに入れましょう。いろいろなものを買いたくなる空腹時に買いものをしないのも、地味なことですがポイントです」
次に大切なのは、買ったものを長持ちさせてうまく使いきるための「保存」です。
「葉野菜やアスパラなどは、育ったときと同じように立てて保存すると傷みにくくなります。しばらく料理できないようなら、食べやすく切って冷凍すればOK。使うときは凍ったままお鍋やフライパンに投入できます。
野菜を長持ちさせてくれるラップや袋を活用するのも便利ですね。乾燥しやすいキュウリなどはキッチンペーパーにくるみ、ポリ袋に入れて保存します」
それでもキュウリやミニトマトがうっかりしなびてしまったときは、栄養価は落ちていますが、冷水に数時間つければ回復するはず。ただし、リカバリーできるのは乾燥しているものだけです。ぬめりが出てきたら雑菌が繁殖しているので、あきらめましょう。
調味料などは、開封した日にちをメモして保存するのがポイント。開封後は賞味期限にかかわらず、3か月くらいを目安に使いきります。「ときどき調味料から献立を考える日をつくれば、ちゃんと活用できますよ」と、島本さん。
そしてもちろん、調理の工夫でも食品ロスが減らせます。たとえばピーマンは、普段捨ててしまう種やワタも食べられる野菜です。
「それどころか、血液をサラサラにしてくれるピラジンという栄養素は、果肉よりも種やワタに多く含まれています。電子レンジでまるごと加熱しておひたしにするのもいいし、種やワタを刻んで肉詰めに入れてしまうのもおすすめ。
同じくニンジンも、抗酸化作用の強いβカロテンは皮に近い部分に豊富です。お店で売られているニンジンはすでに表面の薄皮が剥かれているので、家でもう一度剥く必要はありません。そのまま食べれば食品ロスが減らせるうえ、栄養価も高いというわけです」
忙しく過ぎていく日々のなかで、地球環境や未来のことを考えるのはなかなか難しいかもしれません。でも、食事は誰にとっても毎日必要なこと。
「食の恵みを安心して享受できる社会」の実現を目指すヤンマーも、食品ロス削減に向けてさまざまな取り組みをしています。たとえば、生ゴミを堆肥に変えるバイオコンポスター「YC100」の開発。この製品は、農業や食品加工の際に発生する食品廃棄物を減量・減容し、有効資源に変えるための資源循環サイクルを実現します。
バイオコンポスター紹介ムービー(関連記事を開く)
さらにこのバイオコンポスターを利用し、ヤンマーは「こどもやさいプロジェクト」という地域連携の活動にも取り組んでいます。家庭の生ゴミでつくった堆肥を活用して野菜を育てる取り組みで、親子で資源循環について学ぶことができます。
「こどもやさいプロジェクト」紹介ムービー(関連記事を開く)
ほんの些細なことだとしても、一人ひとりが食品ロスについて考え、小さな行動を積み重ねることで、未来を大きく変えることができます。みなさんもヤンマーと一緒に、暮らしのなかでできることから始めてみませんか?
取材・文:菅原さくら
監修:島本美由紀
写真提供:『ムダなく使いきれる! 冷蔵庫収納術』(コスミック出版)
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです