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2017.08.10
2017年5月27日に開幕した、第35回アメリカズカップ。ヤンマーはこの大会に「Official Marine Engines Partner for the 35th America’s Cup」として選ばれ、ゲスト用のVIPシャトル艇に搭載するマリンディーゼルエンジンを提供。また第33回大会(2010年)、第34回大会(2013年)を連覇したオラクル・チーム・USAの「オフィシャルテクニカルパートナー」として参加しました。
今回は、マリンスポーツ誌のライターとして活躍されている西朝子さんにご寄稿いただき、白熱した大会の様子をお届けします。
2017年6月26日(現地時間)————。大西洋に浮かぶ英領バミューダ諸島で開催されていた第35回アメリカズカップがフィナーレを迎えようとしていました。
1851年8月22日に行われた英国ワイト島一周レースに端を発する、世界最古の国際スポーツトロフィー「アメリカズカップ」。純銀製の水差し型カップを賭けて、防衛者(ディフェンダー)と挑戦者(チャレンジャー)が一対一で戦うヨットレースは、数々の名勝負とともに一世紀半以上にわたって世界中の人々を魅了してきました。
この日、三連覇を狙うディフェンダーのオラクル・チーム・USAは、7先勝の戦いで1勝6敗と土俵際に追い込まれていました。手にするのが最も難しい優勝杯とも称されるアメリカズカップに王手をかけたのは、5チームによるチャレンジャー決定戦を勝ち抜いてきたエミレーツ・チーム・ニュージーランドです。
その顔合わせは、4年前に米国サンフランシスコで行われた前大会と同じでした。サンフランシスコでは、スポーツ史に残る劇的な逆転勝利でオラクル・チーム・USAがアメリカズカップの防衛に成功。一方、悪夢のような大逆転負けでトラウマを抱えることとなったエミレーツ・チーム・ニュージーランドは、今大会直前まで母国でレース艇の開発を行い、自転車式の油圧供給システムなど斬新なアイディアを取り入れたレース艇で、強豪ひしめくチャレンジャー決定戦を勝ち抜いてきたのです。
リベンジに燃えるエミレーツ・チーム・ニュージーランド。逆転のチャンスを窺うオラクル・チーム・USA。果たして、サンフランシスコの再来はあるのでしょうか?
第35回アメリカズカップ、第9戦。スタートでリードを奪ったのはオラクル・チーム・USA。水中翼で船体を海面に浮かせながら、文字通り飛ぶように第1マークを回ります。操船するのは、スキッパー(艇長)のジミー・スピットヒル、タクティシャン(戦術家)のトム・スリングスビー、そして屈強なグラインダー(人力パワーユニット)4人の計6人です。
スピットヒルは19歳でチャレンジャー決定シリーズに出場した逸材で、2010年には最年少スキッパーとして第33回大会を制覇しました。また第34回大会での逆転勝利のカギを握るキーマンの一人だったスリングスビーは、少年時代からヨットとテニスに親しみ、テニスでも四大大会優勝が狙えると将来を属望された選手でした。グラインダーのエース、カイ・ハーストはオープンウォータースイミング競技で五輪に2度出場しています。ライフセービング競技のアイアンマン種目を7度も制した、文字通りウォータースポーツの鉄人です。
そんな凄腕の彼らにリードを許しても冷静だったのが、エミレーツ・チーム・ニュージーランドでした。第1マークこそ先行されたものの、その差をジリジリと詰めて第2マークまでに逆転に成功。その後は相手艇をしっかり押さえてフィニッシュし、念願のアメリカズカップを手にしました。残念ながら今回、オラクル・チーム・USAにミラクルは起きませんでした。
スポーツの世界に勝敗はつきものですが、166年の歴史を誇るアメリカズカップには、様々なサイドストーリーが付随しています。だからこそ世界中がレースの行方に注目し、勝負がついた時の勝者と敗者の差が一層際立つのでしょう。
そんなアメリカズカップを一目見ようと、レース基地となるアメリカズカップビレッジを訪れた人は、開幕戦となるチャレンジャー決定戦の最初の週末だけで約1万人を数えました。バミューダ諸島の人口が6万5000人ということを考えれば、この数字が決して少なくないことはお分かりいただけると思います。
カップビレッジへの入場者数は、レースが進むにつれてさらに増えていきました。その中には、スペイン王室のファン・カルロス1世や、イギリス王室のアン王女、ハリウッド俳優のマイケル・ダグラス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ夫妻といったセレブの姿もあったことを付け加えておきましょう。
この名実共に世界最高峰のヨットレースである第35回アメリカズカップをヤンマーは「オフィシャルマリンエンジンパートナー」として支えていました。
ゲスト用のVIPシャトルにヤンマーのマリンディーゼルエンジンが搭載されており、世界が注目する洋上の決戦を縁の下の力持ちとして支えていました。
これは前回大会より、オラクル・チーム・USAの「オフィシャルテクニカルパートナー」として、チームの伴走艇にマリンディーゼルエンジンを提供し、3連覇を目指し過酷なトレーニングを積み重ねるチームに寄り添い支えてきた実績が認められたからに他なりません。
今大会で使われたレース艇は、最高時速97キロにも達する超ハイテク艇でした。航空機メーカーのエアバスや、自動車メーカーのBMWが持つ最新技術が応用される中、パフォーマンスデータの収集や、緊急時のサポートを行う伴走艇のエンジンにも高いパフォーマンスが求められました。ヤンマーのクリーンでパワフルなマリンエンジンは「安心してスピードの限界に挑戦できるのも、ヤンマーのマリンエンジンを搭載したチェイスボートがあるからだ」とチームから絶対の信頼を得て、チームの安全やパフォーマンス向上に貢献してきました。
第35回アメリカズカップはチャレンジャー、エミレーツ・チーム・ニュージーランドの勝利で幕を閉じました。
ディフェンダー、オラクル・チーム・USAは三連覇の偉業を成し遂げることが出来ませんでしたが、素晴らしいシーマンシップを持ち、絶え間ない努力を積み重ねるチームと歩んだ5年間はヤンマーにと
世界最高峰の舞台で培った経験をエンジン技術の向上に、そしてマリン文化の発展に活かしていくこと————。それが、チャンピオンチームと共に戦ったヤンマーの使命なのではないでしょうか。
第36回アメリカズカップは、2021年にニュージーランドのオークランドで開催されます。北大西洋から南太平洋へと舞台が移っても、テクノロジーの粋を集め、知力・体力の限りをつくし、そしてチーム一丸となって戦うアメリカズカップが人々を魅了することに変わることはないでしょう。
至高の銀杯を巡る新たなステージの幕が開きました。