2024.03.06

悲願のWEリーグ参入、勝つことが応援してくれる人への恩返し

ヤンマーは「A SUSTAINABLE FUTURE」の実現に向け、事業活動を軸に社会貢献などさまざまな取り組みを行っています。その基盤となるのが「HANASAKA(ハナサカ)」。これは、「人の可能性を信じ、挑戦を後押しする」という、創業時より受け継がれてきたヤンマーの価値観を指します。

Y mediaでは、このHANASAKAに通じて、何かに挑戦している人、誰かの挑戦を後押ししている人を「HANASAKAビト」と呼び、その取り組みをご紹介していきます。

今回のHANASAKAビトは、2023年に念願の日本初の女子プロサッカーリーグである「WEリーグ」参入を果たし、プロチームとなった「セレッソ大阪ヤンマーレディース」で活躍する3選手です。

3選手はそれぞれ、中1でセレッソ大阪レディースU-15(現セレッソ大阪ヤンマーレディース)に入り、長年、厳しい勝負の世界で戦ってきました。入団当初は、「女子サッカーにプロリーグができるとは思ってもみなかった、ましてや自分がそこでプレイするとは想像もできなかった」という彼女たちに、初めてWEリーグを戦った感想や今後の意気込み、女子サッカーへの想いを聞きました。

【選手プロフィール】
■古澤留衣 MF
2005 小2でサッカーをはじめる
2010 セレッソ大阪レディースU-15(現セレッソ大阪ヤンマーレディース)の1期生として入団(当時中学1年生)

玉櫻ことの FW
2005 小2でサッカーをはじめる
2010 1期生として入団(当時中学1年生)

■藤原のどか DF
2008 小3でサッカーをはじめる
2012 3期生として入団(当時中学1年生)
2021 つくばFCレディース移籍
2022 セレッソ大阪レディース復帰

※取材は2023年12月22日に実施

※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。

初戦でプロの洗礼、目指すは優勝!

──まずは初めてプロリーグを戦う心境を教えてください。

藤原:やっとという気持ちです。2年遅れでWEリーグに入ったので、他のチームよりも「やってやるぞ!」という気持ちは大きいと思います。必ず勝って終わろうという気持ちで挑んだ開幕戦。「応援してくださるサポーターの皆さんに結果で恩返しする!そしてプロチームとしてファンを増やすためにも勝たないといけない!」と様々な気持ちが交錯する中で、開幕戦で勝てたことは、チームとして自信に繋がりました。

悲願のWEリーグ参入! セレッソ大阪ヤンマーレディースの挑戦
<藤原のどか選手>

玉櫻:ただ勝てた試合で敗戦してしまったという反省点もあります。
これまでセレッソは後半、相手チームの体力が落ちてきたときにも走れるのが強みで、そこで点を取れることが多いのですが、それが通用せず、プロはそんな甘くないとWEリーグの洗礼を受けました。
今、鳥居塚監督に、『1試合13キロ走れ』と課題を出されています。

古澤:13キロ、苦しいですけどね(笑) 監督が言う13キロの間のボールを触っていない時間に、一人一人が状況を判断しチームを支えるためにどう動くかが重要だと思っています。それを個々に考えられれば、勝ち点を重ねていけるはずです。チームとしての目標は、今シーズン5位以内ですが、やるからには優勝したいです!

──プロチームになり一番、変わったことは何ですか?

玉櫻:見に来てくださる方が増え、グラウンドから見た景色が大きく変わりました。ヨドコウ桜スタジアムはグラウンドと観客席が近いということもあるのですが、はじめてお客さんの歓声で、自分たちの声が聞こえないという嬉しい経験をしました。

悲願のWEリーグ参入! セレッソ大阪ヤンマーレディースの挑戦
<玉櫻ことの選手>

古澤:去年までは、平均観客数が1000人に届かなかったのですが、今シーズンは、平均2000人と倍になりました。サポーターの年齢層も、同世代くらいの男女、子連れの家族など若い世代も増え、確実にチームの認知が広がっているなと感じます。

藤原:開幕戦でベースボールTシャツを配ったのですが、試合のときにそれを着てくださっている方を見かけると、また見に来てくださったんだと嬉しくなります。継続して足を運んでくださる方も多くなってきたように思いますね。

チームを支えられる選手に
~それぞれの持ち味を活かし、与えられた役割を果たす

──サッカーのいちばんの魅力は何ですか?

玉櫻:言葉や国籍、性別など関係なく誰とでも仲良くなれるところです。私自身、コミュニケーションが得意な方ではありません。サッカーは初対面の人でも自然と楽しく、話をしながらプレイすることができ、私にとって大切なコミニケーションツールの一つです。

悲願のWEリーグ参入! セレッソ大阪ヤンマーレディースの挑戦

藤原: 私にとってサッカーの魅力は、チームで1つのことに向かって取り組み、成し遂げることです。チームで行動し、何かに取り組んでいくとき、それぞれの役割が必ずあります。サッカーを通して、自分に求められていることを見極め、感じて、行動する、そういう能力が身に付いたように思います。

実は、試合出場機会に恵まれず違う環境を経験しようと2021年に移籍しました。大学を休学し、親元を離れフルタイムで働きながら初めての環境でプレイする決断は勇気がいりました。セレッソを離れて気付いたのは、これまでの恵まれた環境です。セレッソは、グラウンドやクラブハウスがありサッカーをする環境が整っていると実感しました。

またチームメンバーの仲の良さも違う環境を経験して感じたことの1つです。他のチームだと、まず人を知ることからのスタートで、それだけでも何ヶ月もかかってしまいます。その点、育成チームのセレッソの場合、一人ひとりのプレイスタイルまで熟知しているので、それをどう活かしていけばいいのか考えるだけです。精神面でも、大きな目標を共通認識として持ち続けているので、チーム内で気持ちの共有ができています。だから試合に勝つためにはどうすればいいのかに集中できるんです。

そして、常にチームのことを考え、行動する古澤選手、玉櫻選手のような人がチームには必要なのだと改めて感じました。開幕戦もそうでしたが、試合前、みんなが緊張しロッカーがシーンと静まり返っているときに、古澤選手が来て、「みんな、頑張って!」と明るく盛り上げてくれ、みんなに笑顔が戻りました。チーム全体が精神面でもすごく支えられています。

古澤:試合に出られず悔しい思いもしましたが、出られなくても自分ができることは何かということを考えています。チームのみんなが意見しやすく、楽しく過ごせるように、私は常に道化を演じているんです(笑)

悲願のWEリーグ参入! セレッソ大阪ヤンマーレディースの挑戦
<古澤留衣選手>

女子サッカー界は着実に前進
~勝ったときのあの一瞬の嬉しさのために頑張り続ける

──皆さんの今後の目標・挑戦したいことを教えてください。

古澤:2011年のW杯優勝の時は、マスコミにも大きく取り上げられ認知度が上がったのですが、それから熱量が落ち、当時に比べると観客数が激減しています。サッカーに関わってないと、WEリーグが発足したことやセレッソに女子チームがあることすら知らないという人も多いと思います。

WEリーグをもっと盛り上げ、試合を見に来てくれる人たち、応援してくれる人たち、サッカーをする子どもたちがもっと増えるようチーム一丸となって試合に勝ちたいです。

藤原:女子サッカー選手としてのキャリアをますます築いていきたいです。
WEリーグには結婚している選手、出産後もサッカーを続けている選手もいます。様々なライフスタイルを経てもまたサッカーができる環境は、WEリーグが発足してから確実に幅が広がりました。託児所併設の練習場やスタジアムもこれから増え、女性選手がキャリアを築きやすい環境も整っていくと思います。サッカーをするか悩んでいる女子がいたら、ぜひ、飛び込んできてほしいです。

玉櫻:常に5位以内、優勝できるようなクラブになりたいです。
セレッソに入ったときには、女子サッカーにプロリーグができるなんて思ってもいませんでした。ましてや自分がそこでプレイするなんて想像もできませんでした。

これまで前十字靭帯という膝の靭帯のケガを3度経験し、辛くてもうやめようと思ったときもありました。そんなとき大学の先生に「今しかできないことがあるよ」と言われ、やめることはいつでもできる、もう少し頑張ってみようと思えました。サッカーを続けてきたからこそできた経験があり、またサッカーを通してたくさんの人に出会え、自分の世界を広げることができました。

悲願のWEリーグ参入! セレッソ大阪ヤンマーレディースの挑戦

古澤:私たちのモチベーションは、勝ったときの喜びや感動、達成感です。勝ったときの喜びを知っているから、大変なときにも頑張れるんです。

藤原:ほんと、あの一瞬のうれしさが忘れられない!

古澤:強いチームに、そして勝てるチームになって、タイトルを取りたいです。リーグ戦や皇后杯で優勝して、ユニフォームに優勝した証である星をつけたいですね。

強いからこそ応援してもらえると思います。たくさんのファンやサポーターの皆さんに愛される、そんなチームになりたいです。

<選手の対談動画もチェック>

●セレッソ大阪ヤンマーレディース焚き火対談 前編

●セレッソ大阪ヤンマーレディース焚き火対談 後編