YANMAR CONSTRUCTION EQUIPMENT EUROPE S.A.S.
Engineering Department
ヤンマーテクニカルレビュー
新型SV60 製品技術紹介
~ビジネスクラス並の快適性追求~
Abstract
Yanmar produces two series of hydraulic excavator, the ViO and SV, of which the ViO is a "true zero tail swing" excavator with no overhang of the rear of the superstructure. This makes the ViO series well suited to urban and other confined worksites. The SV, on the other hand, provides excellent practicality at sites where more space is available. This article describes the development of the new SV60 excavator targeted at the European market and designed to provide a business class level of comfort.
1.はじめに
ヤンマー建機の油圧ショベルにおいて、最も多い製品ラインナップは、旋回時に履帯幅から上部体後端がはみ出さない安全性に優れた後方超小旋回ViOシリーズである。ViOシリーズは、その特性から市街地や狭所において多くの工事現場で使用され、発売以来長い間お客様にご愛顧させて頂いている。そしてこの後方超小旋回シリーズに対し、安定性と居住性に重きを置いた違うコンセプトの商品ラインナップが、欧州における標準機SVシリーズである。SVシリーズの最大の特徴はViOシリーズより広い居住性と優れた安定性を持つことである。構造上、旋回時に後端部が履帯幅より出るという点はあるが、大きなアタッチメントを使い、体の大きい人が多いヨーロッパではこのタイプの製品のニーズが高い。ViOシリーズが主力商品であるヤンマーとしてはこのSVシリーズのラインナップの整備が急務であり、ここで紹介する新型SV60は、そういった背景の中、欧州市場向けに新規投入された商品である。
2.商品概要
図1 外観写真(左:新型SV60、右:ViO55-6)
本商品のターゲットは、従来機にないトップクラスの快適性である。
図1に新型SV60(左)とViO55-6(右)の外観を示す。この新型SV60は、2013年に発売されたViO55-6の意匠デザインを踏襲しており、-6型シリーズとしてのコンセプトを継承している。キャビンの広さは1ランク上のクラスのサイズを搭載することで、居住性を向上させている。油圧性能は、現在お客様に大変好評であるViO55-6を継承しており、低燃費・仕事量の高効率化を実現させた。本稿ではその新型SV60に関する商品の特徴を以下に紹介する。
3.特徴
3.1.居住性
日本人と比べ、一般的に体の大きなヨーロッパのお客様は、油圧ショベルに対し性能もさることながら、居住性や利便性に対しての要求度も非常に高い。ヨーロッパ市場でこのシリーズのシェアが依然として高い理由の一つとして、この居住性があると言える。
そこで、我々はキャビン形状を含め、オペレーションルームの大型化と利便性の向上を図った。まず、足元スペースを従来機に対し約80mm大きくすることで、キャビンの昇降間口を一回り大きくし、乗降性を向上させた。これにより、さらに1ランク上の格納式走行ペダルを設定することが可能となり、ペダルによる走行レバー操作性を向上させることが出来た。また、キャビン内容量は1クラス上の広さを設定し、トップクラスの居住空間を確保した。これにより要望の多かった格納スペースの設定においては、シートの背面側にランチボックスが丸々格納できる大きなスペース、大容量のペットボトルサイズに対応したホルダー、携帯電話ホルダー、雑誌等の格納スペースを設定した。
ユニバーサルデザイン(UD)を用いて、人間工学に基づいた乗降口ハンドルの形状や、座った位置ですべてのボタンが操作できるようにボタンレイアウトを詳細に検討した。更に様々なお客様のご要望に対応出来るように、多岐にわたるオプションにも対応可能としている。また、後方視界を安全に確認できるLCDモニターとリアビューカメラを標準装備とし、快適かつ安全性にも配慮した。
3.2.安定性
バックホーにおいて最も重要な性能のうちの一つがリフティングキャパシティ(吊り能力)である。工事現場などでバランスを崩すこともなく、重い貨物や土砂を楽々持ち上げる事ができることがあれば、お客様の仕事効率において大きなアドバンテージとなる。また欧州市場にある様々な重いアタッチメントに対しても、十分な能力を発揮することが出来る。そこで、我々はベンチマークを行い、これらの目標値設定を行った。尚、ベンチマークの対象となったA社・B社・C社の製品は何れも標準機タイプである。
この設定した目標値に対し、各部品重量・配置の計算を行うことでほぼ狙い値どおりの結果を得る事ができた。
また、重要な性能のうちの一つに、掘削力がある。
この新型SV60においては、従来機に対しアーム掘削力アップも目標に設定した。
モーメントの性質上、ロングアームになればなるだけ掘削力は低減していくものではあるが、この製品では、作業範囲クラストップレベルでありながら十分な掘削力を確保することも出来た。
3.3.整備性
ラジエータとオイルクーラーからなるヒートデバイスとエンジンの相対位置は基本的にViO55-6と同コンセプトである為、同じように本機後方ボンネットを工具レスで開閉できる構造とし、同じく右後方からワンサイドメンテナンスが可能となっている。バッテリーの交換は右ボンネットとダクト下カバーをオープンすれば簡単に行なえる。また、本機右側の樹脂カバーをオープンすると、燃料と作動油の給油、エアクリーナーエレメント交換を簡単に行うことが出来る。燃料給油においては自動給油システムが標準装備となっており、日常での給油の負担を軽減出来る。また燃料タンクは、ViO55-6と比較して約1.5倍の容量アップとなっており、長時間作業においてダウンタイムを少なくすることも可能となった。
4.おわりに
この新型SV60は日本・フランスの共同開発プロジェクトであり、プロジェクト発足以降、関連部門一丸となって様々な課題をクリアしてきた。お客様がこの製品に乗った時には、必ずこの広さと快適感を体感して頂けるものと確信している。今後もお客様に満足してもらえるような商品を提供していきたいと考えている。