MINAMINOREPORT#7
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南野拓実、

モナコの街に溶け込む

サステナブルな日常を

体験する。

南野拓実、モナコの街に

溶け込むサステナブルな

日常を体験する。

南野拓実、

モナコの街に

溶け込む

サステナブルな

日常を体験する。

モナコは高級リゾート地としての魅力を保ちつつ、地球環境に配慮したサステナブルな都市へと進化を遂げようとしている。南野が所属するASモナコでは、海洋保護への取り組みを反映し、環境に優しい素材を使用したユニフォームの制作が行われていた。

※前回の記事はこちら。

次に、南野は街を巡りながら、モナコが推進するサステナビリティに焦点を当てた街づくりと、そのシェアリングエコノミーの取り組みを体験し、学んでいく。

リユース可能な食品容器を活用し、
包装廃棄物削減へ貢献

「マルシェで買ったフルーツは、他では味わえない特別な美味しさがあるんです」と、南野は笑う。地元の農家が手間ひまかけて育てた果物は、味が濃厚で、その鮮度と品質の高さを直に感じ取ることができるようだ。

街を歩いていると、開放的で気持ちのいい坂道が現れる。その道をたどると、ハイブランドの店舗が立ち並び、至る所が洗練された雰囲気に包まれていた。しかし、そんな中にも地元の人々が集うカフェが点在。街の多様な顔が垣間見えてくる。

特に印象的なのは、海を望むように設置されたベンチだ。一般的にベンチは道路に面して設置されることが多いが、モナコでは海を眺めながらくつろげるようになっている。このことから、街がどれほど自然の美しさを大切にしているかを感じられる。

次に向かったのは、南野がお気に入りのレストラン「Woo Monaco」。ここでも実は、サステナブルな取り組みが実践されているという。リラックスした様子で、普段の店での過ごし方を南野が教えてくれた。

「Woo Monacoには最低でも週に1回、時間があれば週に3回くらい行くこともあります。カフェとしての雰囲気も良くて、休日の朝食にもぴったりです。特にフルーツプレスジュースが好きで、デトックスウォーターみたいに健康に良くて、アスリートに必要な栄養を手軽に摂れるのが魅力ですね。しかも、オーガニック食材のみを使用している点も、健康を意識する上で非常に重要なポイントです」

南野の言うとおり、店内にはさまざまなタイプのサンドイッチがエコフレンドリーな紙容器に整えられて陳列。ディスプレイの上の部分には、フタ付きの容器に入ったサラダやフルーツが並び、その横には「Vegan buddha bowl」というラベルが見える。このラベルには、野菜や穀物をふんだんに使用した「ヴィーガン・そうでない人も一緒に楽しめる」という健康的な食事であることが説明されていた。

南野が流暢な英語で注文すると、赤色のロゴとQRコードが貼られた透明な容器に詰めこまれ、サンドイッチが出てきた。
店員から、このQRコードは「マ・コンシーニュ」と呼ばれるシェアガラス食器のシステムであることを聞かされた南野。「よく見かけるけれど、これは一体何なのだろう」と興味津々だ。その様子を察したのか、マ・コンシーニュに所属するローレンス・ナベットさんが、この独特なシステムについて南野に丁寧に説明してくれた。

「マ・コンシーニュは、使い捨て容器の廃棄物削減を目的に2022年6月にスタートした食品容器のリユースシステムです。モナコ政府のサポートを受けて運営されており、毎日朝から夜遅くまで、提携している38軒のレストランに清潔な容器を配達しています。使い方は簡単で、レストランで好きな料理をこの容器に入れてもらい、使い終わったら14日以内に市内の23か所に設置されているコレクターへ返却するだけです。事前にアプリをダウンロードし、QRコードをスキャンするだけで使えるようになります。料金はかかりません」

南野は便利さと環境への配慮を兼ね備えたシステムに驚いたようで、「レストランまで戻る手間もなくていいですね」と笑顔で答えた。

ローレンスさんは、アプリで地図を見ることができ、コレクターの位置やレストランのリストが載っていることを付け加えた。

「サラダが食べたいときは、レストランで言ってくれれば、この容器に入れてくれます。返却の際に、汚れていても洗う必要はありません。私たちは夜に全ての容器を回収し、丁寧に洗浄した後、翌朝には再びレストランへお届けしています」

「サステナブル・ライフ」とは、単に「作って、使って、捨てる」のサイクルから脱却し、「作って、使って、再生させ、再び作る」ことを意味する。これはリサイクルを超えた概念で、使用される素材自体が環境や生態系に悪影響を与えない社会を目指す考え方だ。
「このシステムなら、プラスチックの使い捨てを減らせるし、環境に良い影響を与えられますね」と南野。日常生活の中での食事選びにも、環境への配慮を取り入れることができそうだ。

都市交通に行き届く、
モナコの環境配慮の意識

昼食後、南野はモナコの街を紹介してもらうため、ヴァネッサ・トゥビノさんとの待ち合わせに向かった。

ヴァネッサさんは財務のプロフェッショナルで、監査役として企業の会計を預かる重要な役割を担っている。彼女の経歴は多岐にわたり、数年にわたって間ASモナコの監査役としての経験を持つ。

その一方で2022年には、地球温暖化研究のためにアルベール2世大公と共に北極を訪れるなど、環境保護への強いコミットメントを見せている。

モナコの活気あふれる街を2人で散策している最中、ヴァネッサさんが「モービーをご存知ですか?」と質問を投げかけた。「目にはしたことがありますが、実際に利用した経験はないんです」と南野は答える。

モービーは、モナコ公国内ならどこでも自由に移動できる電動自動車のカーシェアリングサービスだ。2人乗りまたは5人乗りの自動車を選ぶことができ、このサービスではウェブやスマホアプリを使って、車の予約からドアの解錠までが可能だ。利用時間に制限がなく、子どもの習い事の送迎に使う親もいるそうだ。

「モービーの仕組みはとても便利ですね。日常の中で気軽に使えますし、電気自動車のシェアなのでCO2の排出も削減できる。モナコの環境保護への意識の高さがうかがえます」(南野)

ヴァネッサさんはさらに、「モナバイク」という自転車のシェアサービスを紹介してくれた。このサービスでは、ソーラーエネルギーで充電される電動アシスト付き自転車を借りることができる。市内には約300台の自転車と35箇所の充電ステーションがあり、誰でも簡単に街の散策を楽しめる。

南野は、自身のモナコでの生活の経験もふまえて、モナバイクの利点を強調する。
「モナコは丘が多いので、アシスト機能の付いた電動自転車は移動にとても便利です。街がコンパクトなので、晴れた日は快適に坂を走れますし。支払いもクレジットカードで簡単に済ませられるのが魅力的ですね」

南野とヴァネッサさんが街を散策していると、環境に配慮されたバスが目に入った。モナコのバス会社は、温室効果ガスの排出量を削減するためにバイオディーゼル「ディスター」を使用している。

ヴァネッサさんは、「一部のバスは既に電動化されており、2025年までにはすべてのバスが電動化される予定です」と説明してくれた。

少し立ち止まってバスを見ていると、「EEV」というラベルが貼られているのに気づいた。「EEV」は「Enhanced Environment friendly Vehicle」の略で、環境に優しい車両を意味している。フランス語では「Véhicule à performances environnementales avancées」(「高度な環境性能を持つ車両」)と表記されている。

モナコの都市交通の環境意識の高さに触れ、南野がうなずく。

「電動自動車、自転車、バスと、モナコにはエコフレンドリーな交通手段が広がっている。人々の利便性を高めるだけでなく、地球環境にも良い影響を与えているのを実感しますね」

リサイクルから建築基準まで、
日常に溶け込む環境意識

昼食後、南野はモナコの街を紹介してもらうため、ヴァネッサ・トゥビノさんとの待ち合わせに向かった。

街を散策していると、乗り物に限らず、環境への意識の高さが日常生活に深く根付いていることが見て取れる。公共の場所には、「Verre」と表示されたガラス製品用のコンテナや、家庭用包装材と紙製品を分別するための黄色い枠のコンテナが設置されている。

ヴァネッサさんが「ご自宅でのリサイクルはどうしていますか?」と尋ねると、南野は「プラスチックや紙などはきちんと分けています」と答えた。続けて「分別した後、ゴミはどうなるんですか?ご自宅のビルには専用の処理設備があるのですか?」と聞かれると、「はい、専用の処理設備があり、分別したゴミはそこで適切に処理されます」と説明した。

その話を聞きながら、ヴァネッサさんは街中に設置されているごみ収集ボックスの特徴を教えてくれた。

これらのボックスには、具体的なガラス製品や紙製包装材のイラストがあり、観光客が正確にごみを分別するのに役立っている。さらに、これらのごみ箱は地下のシステムに直結しており、直接処理工場へと送られる仕組みになっているという。

このシステムに南野が驚く。

「ゴミが直接地下に運ばれるんですか?」

「そうです。街中にあるカラフルなごみ箱は地下システムに直結していて、ゴミは自動的に処理工場へ送られるんです」とヴァネッサさんは説明した。

また、モナコの建物にはエコ認証が求められることも教えてくれた。現在建設中の建物も多く、すべてが厳しい環境基準を満たす必要があるという。。

「環境に優しい基準をクリアすることは、モナコでは非常に重要視されています。そのため、ここには環境保護を重んじる様々な施策が存在するんです」とヴァネッサさんは続けた。

街を散策しながら対話することで、モナコの日常生活に溶け込むサステナビリティの取り組みについて理解を深めた南野。あらためてその環境意識の高さに触れたことで、南野自身の日々の行動や発信にも、サステナブルに根ざした変化が生まれそうだ。