ボールを持つ南野拓実
MINAMINOREPORT#1
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サッカーと

サステナブルの

意外な関係

サッカーと

サステナブルの

意外な関係

南野拓実。ヨーロッパでの活躍、FIFAワールドカップカタール2022に向けたアジア予選で7試合連続ゴールの記録の樹立など、名実ともに日本代表のエースへと成長を遂げた彼には、いま大きな関心事がある。サステナブル。地球規模の課題に対して、「持続できること」を前提にして、人類が皆で解決を図っていこうとする取り組みのことだ。
しかし、まだ、南野は「自分はまだ何も知らない」と言う。そして「だから、知りたい」と。
そこでまずは南野にとってもっとも身近な、サッカー界におけるサステナブルな活動の事例を、『MINAMINO SUSTAINABLE REPORT』編集部から紹介してみることにした。

きっかけは、高校生のときに起きた未曾有の出来事

アイコン:ヤンマー

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近年、サッカー界ではサステナブルな取り組みがたくさん行われています。

アイコン:南野選手

南野

そのような取り組みが増えているとは感じていますが、知らないこと、わからないことばかりなんです。

アイコン:ヤンマー

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『MINAMINO REPORT』は、そんな「まだ知らない」という思いがスタートになっているんですね。

アイコン:南野選手

南野

はい。

アイコン:ヤンマー

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まず初回は、南野選手の周辺にあるサステナブルなトピックをきっかけに、お話できればと思います。南野選手が社会貢献に興味を持ったきっかけは?

アイコン:南野選手

南野

東日本大震災のとき。確か高校生でした。

アイコン:ヤンマー

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それはどんな取り組みでしたか?

アイコン:南野選手

南野

ヨーロッパでプレイしている選手たちが、ユニフォームにメッセージを書いて、被災した人たちを勇気付ける様子が報道されていました。

アイコン:ヤンマー

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内田篤人選手のメッセージはいろいろなメディアで見かけましたよね。

アイコン:南野選手

南野

その姿を見て、“アスリートには、競技していないときでも、人を奮い立たせる力があるんだ”ということを初めて意識した記憶があります。

アイコン:ヤンマー

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いまでは、フィールド以外で社会貢献活動をするプレイヤーたちが増えてきましたね。香川真司さんは、子どもたちに夢を与えたいという想いからファンと直接会える機会を作ったり、元日本代表の巻誠一郎さんは熊本地震の復興支援活動などをやられたりしています。南野選手が意識的に取り組んでいる社会貢献活動は何かありますか?

アイコン:南野選手

南野

今は胸を張って「これに取り組んでいる」と言えるものはありません。プラスチックのゴミをなるべく出さないようにしたり、こまめに電気を消したりと、日常生活の中で、なんとなくやっていることはあります。でも、自分の行動が世の中のどんな課題とつながっているのか、これからしっかり考えてみたいと思っていました。

実はこんなにたくさんある
サッカー界のサステナブルな
取り組み

アイコン:ヤンマー

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本題に移らせていただきますが、サッカーといえば、今年外せないトピックとしてカタールW杯がありますね。現地では着々と準備が進められているようですが、解体可能なスタジアムが作られているというのは知っていますか?

アイコン:南野選手

南野

いえ、はじめて知りました。すごい発想ですね!

スタジアム974

2022年W杯カタール大会のスタジアム8つの中でも異彩を放つのが「スタジアム974(4万人収容)」。主な建築資材として、貨物コンテナが使われている。W杯スタジアムとしては史上初めて「大会のために造られ、大会後に完全解体されるスタジアム」。

アイコン:ヤンマー

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国際的なスポーツ大会では、スタジアムなどの「レガシー」のその後の運用について、いろいろ意見が交わされますよね。解体できる、というのはまさにサステナブルです。

アイコン:南野選手

南野

スタジアムといえば、一度建てたらその土地に永く残るというのが普通ですよね。僕がプレーしていたイギリスには地震がないので、スタジアムをはじめ歴史のある建物が数多く残っています。

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老朽化したスタジアムにはメンテナンスという課題が残りますよね。

南野

確かに。でも、この「ラス・アブ・アブード・スタジアム」のように解体可能なスタジアムなら、将来の心配がないんですね。

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南野選手自身がそのスタジアムでプレーする日がくるかもしれませんよ。

南野

そうですね。僕は、サッカーのことしか分からないけど、このようなサステナブルな動きが増えていることをひしひしと感じています。ワールドカップのような世界規模のイベントを通して、サステナブルな活動に目を向け、関心を持つきっかけができるのは良いことだと思います。

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もう一つ、面白いスタジアムの事例があります。太陽光発電システムを搭載したスタジアムがあることはご存知ですか?

南野

そんなスタジアムがあるんですか?

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ドイツ・ブンデスリーガの「SCフライブルク」というサッカーチームのホームスタジアムには、ソーラーパネルが設置され、太陽光でつくられた電気が芝生の養生などに使われているそうです。

SCフライブルクホームスタジアム

環境都市として知られるドイツフライブルクに本拠地を構えるSCフライブルク。2021年に新スタジアムをオープンする。初の太陽電池式サッカースタジアムとしてソーラーパネルを屋根に統合し、暖房は近くの製造工場から生成されたエネルギーをリサイクルして使うなど、CO2ニュートラルになることが期待されている。その他にも、電気自動車の充電ステーション(合計2,000ベイのうち10ベイ)、および電動自転車、スクーター、スマートフォン用のプラグインスポットの提供なども行う。

南野

まったく知りませんでした。なるほど、芝生の養生にも電気が使われるものなんですか……。スタジアムに電気が通っていないと僕らはそこでプレーできないですね。そういえば、ヨーロッパではどんな方法で電気が作られているんだろう。

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ヨーロッパは、水力発電のほか、風力発電やバイオマスなどの再生可能エネルギーの割合が日本より高いと言われていますね。

南野

たしかにヨーロッパには、風力発電の大きなプロペラみたいなのが至るところにあるなと感じていたんです。何気ない生活の中でも、気づけることはたくさんあるんですね。

知ることで変わることがある
だから僕は知りたい。

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南野選手はファッションもお好きだと思うのですが、アイテムを選ぶ際に意識していることはありますか?

南野

これまではあまり意識していなかったんですが、最近、分からないながらも、環境に良さそうだなと思うものに興味を持つようになりました。

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例えばどんな商品でしょう?

南野

海洋プラスチックごみで作られたランニングシューズがあるんですけど、それをよく履いています。デザイン的にもすごく好きで。でも、ただかっこいいかどうかだけではなく、環境に配慮したものなど、アイテムの背景にあるストーリーを知ると、余計に愛着が湧くし、何より気持ちがいいですよね。

海洋プラスチックとシューズ

海洋プラスチックへの関心は世界的に高まっており、企業やブランドが様々なアクティビティを行なっている。例えば、2017年よりアディダスは、環境保護団体PARLEY FOR THE OCEANSと、海洋プラスチック汚染問題に対する世界規模のムーブメント「RUN FOR THE OCEANS」を開催。2022年は、「走行時間10分ごとに、プラスチックボトル1本相当のプラスチックゴミを沿岸地域から回収する」という試みを全世界で実施した。

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環境への配慮という基準ができると、ファッションの楽しみ方、アイテムの選択の仕方も変わりますね。近年、ファッションブランドによっては、毛皮の使用を控えるといった動きも見られます。最近では「マッシュルームレザー」というものも出てきているそうですよ。

南野

マッシュルームってことは、キノコということですか? どうキノコがレザーに……?

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面白いですよね。キノコの菌糸を培養させて生産する人工レザーというものらしいのですが。

写真:レザー代替素材「Mylo™ (マイロ)」

レザー代替素材「Mylo™ (マイロ)」は、米国のバイオテック企業「Bolt Threads(ボルト・スレッズ)社」が開発した、キノコの菌糸体(菌が構成する、根のような糸状の組織体)から生まれた新素材。日本の革製品ブランド「土屋鞄製造所」は、2021年夏からMylo™を用いた新素材モデルの試作を続けており、2022年12月にミニ財布とウォレットバッグ、iPhoneケースの計3型を発売予定。

南野

しっかりと強度が保てるものなんですね。すごい。

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動物の命に配慮するという考えでいうと、食文化にはなりますが、「ヴィーガン」というスタイルもあります。チームメイトやスタッフの中に、ヴィーガンの方はいますか?

南野

以前に所属していたチームのスタッフに、肉、牛乳、バターなどを一切口にしない方がいましたね。でも魚や卵は食べていた気がします。ヴィーガンやベジタリアンの方の食事には、宗教的な発想が影響しているんですか?

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そうでもなくて、肉や魚を食べないというライフスタイルにサステナビリティを感じているということのようです。

南野

どんなところがサステナブルなんだろう。

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国連は、家畜産業に起因する温室効果ガスの排出量は、車・飛行機・フェリー等、全ての交通機関からの総排出量よりも大きいと発表しました。ウィーガンやベジタリアンの方は、肉を生産するために地球にかかっている負担を少しでも軽減しようという意思表示をしているんです。

南野

なるほど。ヨーロッパの人たちの環境への意識の高さのあらわれなのかもしれませんね。

編集

では、最後にサポーターの方々について聞かせてください。ヨーロッパでは、サポーターがサッカー観戦を心から楽しんでる人が多いと感じますが、いかがですか?

南野

ヨーロッパではサッカー観戦は単なる娯楽ではなくて、文化であり生活の一部なんです。おじいちゃんがサポーターで、お父さんもサポーターだから、自分も生まれた時から地元チームのサポーターだというように、先祖代々受け継がれているものという感じです。

編集

まさにサステナブルですね。

南野

たしかに。DNAに組み込まれているかのように、三世代、四世代と続いていく。本来、サステナブルな取り組みというのは、そのくらい当たり前になっていかないといけないのかもしれません。でも、いまの僕にはまだ知らないことがたくさんあります。だからこそ、自分の目で確かめ、何ができるかを真剣に考えてみたいと思っています。