電動パワートレイン
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エンジン電動化の世界的動きと普及への解決策

世界各国で重要なテーマとして掲げられている、カーボンニュートラル、ゼロエミッション。そこで、産業用機械向け電動化ソリューションに取り組むヤンマーパワーテクノロジー株式会社の小野寺恭志氏に、電動化に向けた世界の動き、電動化ソリューションをスタートさせた背景、電動化を普及させるための課題や解決策について話をお伺いしました。

カーボンニュートラルという明確なゴールに対して
世界はその道筋をまだ模索している

カーボンニュートラルやゼロエミッションは、世の中の大きなトレンドです。しかし、どうしても政策ありきで市場が対策を模索しているという動きにならざるを得ないというのが今の状況だと思っています。つまり、大きな方向性自体は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを各国が打ち出していますが、具体的にそこへ向かっていくロードマップなどは、まだ定まっていません。
OEM各社と話をしていても、電動化を推進する必要があるのは理解しているが、一部のイノベーターおよび一部のアーリーアダプターを除いて、市場も見込めない、ニーズも見えないため、ほぼ全員が手探りで動いているというような形になっています。そのため、私たちにいただくご相談として多いのは、ディーゼルエンジンメーカーのヤンマーに対し、私たちがどう思っているのかという意見を聞きたい、もしくはヤンマーが持っている情報が知りたいというものです。

動き始めている一部のイノベーターやアーリーアダプターの人たちも、模索しながら進んでいることに変わりはありません。例えば、ノルウェーなどのスカンジナビア地方にある一部の都市では、既にゼロエミッション機械を持っていなければ、公共工事に入札できないというような世の中になりつつあります。
その一方で、建機メーカーはまだプロダクトを持っていないため、実は最終市場では既存のエンジン機を改造専門メーカーが電動にするというビジネスが生まれている状況です。車両メーカーは全く関与しておらず、その結果、品質保証やサービス面で非常に大きな課題が生まれています。

電動化というソリューションを通して
ビジネストランスフォーメーションをアシストする

市場が不透明で、かつ大きな数量も見込めない。その一方で、その中でゼロエミッションに向けて動かなければいけないというのが、OEMの企業をはじめ、この業界のみなさんの認識だと思います。それと平行して、遠隔操作やスマートビジネスに向けたアプリ、自動走行ができるような車体の開発を推進しなければいけません。
しかし、この2つを同時進行させることは、私は無理があるように思います。OEMの方々にとっても、本当は企業価値を高めるためにエンドユーザーに近いソフトウェア開発に注力したいはずです。それであれば、ゼロエミッションへの取り組みは専門業者に任せた方が良いのではないか、というのが私たちが電動化ソリューションを提供しようと考えた背景です。つまり、OEM企業のビジネストランスフォーメーションをヤンマーがアシストしたいというのが私たちの想いとしてあります。
そのために、「電動パワートレイン」と言われるシステムを丸ごと私たちがご用意し、お届けできればと考えています。もちろん、それを実現するために必要な開発サポート、マーケットリサーチ、アフターサービスといったソリューションも行う方針です。

また、私たちは2022年に高いバッテリ技術を持つオランダのELEO社とパートナーシップを結びました。バッテリだけのビジネスをご要望の方に対しては、バッテリに限定してプロダクトをお届けすることも可能ですし、周辺機器も含めたご要望であれば、トータルに提案することも可能です。電動化に対するあらゆる課題に対して、柔軟にお応えしていきたいと思ってます。

機器の電動化に向けて看過できない
電動化に対応するための環境づくり

電動化を進めるにあたっての課題は、電動建機に絞って言及するとすれば、充電という大きな問題があります。そもそも電動建機は現時点ではディーゼルエンジンと同じ時間、稼働させることができません。午前中に仕事をしてお昼休憩の間に充電をし、午後もう1度使えるようにすれば、ディーゼルエンジン同等の稼働ができると考えられている方が多いです。しかし、そもそも建設現場には電線が通っていないケースもあり、仮に電気がとおっていたとしても、一気にすべての車両を充電すると急速充電に耐えられず停電を引き起こしてしまう可能性もあります。
実際にかつて日本でポルシェのタイカンという電動自動車が導入された時、大容量の急速充電器が導入されましたが、地域の停電を避けるためにグリッドの安定性が議論になったこともありました。さらに付け加えると、再生可能エネルギー電力のメインソースになっていくはずですが、再生可能エネルギーは天候に左右されるため非常に不安定です。この不安定な電源ソースに対して、より不安定にさせるような急速充電器というものがどんどん増えていくことになります。
この問題に対する解はまだ、どこにもありません。ただし、その糸口を探るとすれば、世の中をどうサステナブルにするかというグローバルチャレンジに対して、いかにみんなが手を組んで進めるかという事に尽きるかと思います。その点で言うと、私たちは200社以上にディーゼルエンジンをお届けしているため、各社のコミュニケーションハブになりうる存在です。またインフラ整備という点では、大型ビルなどの電気供給に強いヤンマーエネルギーシステムという会社がグループ内にあるため、グループ間で連携を強化することも、サステナブルな社会の実現に向けて非常に大きなポイントだと考えます。
パワートレインの電動化と同時に、サステナブルな社会を実現できる環境づくりにおいても、社会のお役に立てるよう尽力してまいります。

小野寺 恭志ONODERA Takayuki

ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
電動化推進部/ELEO Technologies B.V.

2006年入社。産業用ディーゼルエンジンの基本設計を担当。2020年より電動化推進室室長として電動化戦略を立案。以後、バッテリメーカーのM&Aを行い2022年よりオランダに駐在。
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