旋回力による土ならし、土壁の解体や旋回中にバケットのティースを土中にくい込ませるような作業はしないでください。作業機を破損するおそれがあります。
油圧ショベル・ミニショベルを長く使い続けるために
カテゴリ:建機の基礎知識
ならし運転
どんな建機も初めから無理な使いかたをすると、機能の低下を早くし、寿命を短くしてしまいます。初めの100時間(アワメーターの表示時間)程度は、ウォーミングアップにならし運転をしましょう。
特に次の点に注意してならし運転を行ってください。
- 始動後5分間はエンジンをアイドリング状態で、暖機運転をしてください。
- 重負荷や高速での作業は行わないでください。
- 急発進、急加速、不必要な急停止や急激な方向転換は行わないでください。
油圧ショベル・ミニショベルの寿命を縮める使い方と注意点
油圧ショベル・ミニショベルを長く使ってもらうためには、無理な作業や動作は禁物です。以下の事柄に注意して操作を行いましょう。
<警告>
- 走行中に、やむを得ず作業機操作レバーを操作しなければならないときは、走行を中止してから作業機の操作を行ってください。
- 岩盤(硬岩、軟岩)での作業はしないでください。
●旋回力による作業は禁止
●走行力による作業は禁止
バケットを地面にくい込ませた状態で、走行力による掘削はしないでください。
車両後部に無理な力がかかり、車両の寿命を縮めます。
●油圧シリンダーのストロークエンドまでの作業は注意
作業中は油圧シリンダーをストロークエンドまで作動させないでください。
油圧シリンダー内のストッパーに大きな力が加わり作業機の寿命を縮めます。
余裕を取って操作してください。
●バケットの落下力による作業は禁止
作業機の落下力を利用して掘削しないでください。
バケットをツルハシの代用にしたり、バケットを使用した衝撃掘削や杭打ちは、車両後部に無理な力がかかり、車両の寿命を縮めます。
●車両の落下力による作業は禁止
車両の落下力を利用して掘削しないでください。
●岩盤(硬岩、軟岩)での掘削禁止について
堅い岩盤は、他の方法で小さく割ってから掘削してください。
●つり荷作業の禁止
車両を使用してのつり荷作業は、法律で禁止されていますが、労働安全衛生規則第164条に定める内容に限り認められています。
この場合、専用のつり上げ用フックが必要となります。(詳細は取扱説明書を参照ください)
●ブレードの衝突に注意
ブレードを岩や石などに衝突させなでください。ブレードや油圧シリンダーが破損するおそれがあります。
●作業機の折りたたみ時の注意
走行・輸送姿勢で作業機を折りたたむときは、バケットとブレードが当たらないようにしてください。
●ブレードの支持時の注意
ブレードをアウトリガーとして使用する場合は、ブレードの両側で支えてください。
●掘削作業時のブレード位置に注意
ブレードの前方で深掘り掘削するときは、ブレードにブームシリンダーが当たらないようにしてください。
必要なとき以外は、ブレードは後方にしてください。
ゴムクローラーを長く使い続けるために
●ゴムクローラーの上手な使いかた
ゴムクローラーは、鉄クローラーにない優れた特長がありますが、鉄クローラーと同じ使いかたをすると、その特長を十分に生かすことができません。現場の状況や作業内容に応じて、無理のない作業を行いましょう。
ゴムクローラーと鉄クローラーの比較
安全 | ゴムクローラー | 鉄クローラー |
---|---|---|
振動の少なさ | ◎ | △ |
走行の滑らかさ(きしみがない) | ◎ | ○ |
走行音の静かさ | ◎ | △ |
舗装道路の損傷の少なさ | ◎ | △ |
取り扱いの容易さ | ◎ | △ |
損傷の受けやすさ(強度) | △ | ◎ |
けん引力の大きさ | ◎ | ◎ |
◎:特に良い ○:良い △:普通
ゴムクローラーは鉄クローラーに比べて多くのメリットがある反面、強度面の弱点があります。しかし、ゴムクローラーの特長を十分に理解し、禁止作業および取り扱い上の注意事項を守ることにより、ゴムクローラーの寿命を延ばし、メリットを最大限に発揮することができます。取扱説明書の注意事項の項を十分に読んでください。
●ゴムクローラーの保証について
ゴムクローラーの正しい張りの点検や、整備および“鉄板、U 字溝、ブロックなどの角部、切り立った砕石や岩石の角部、鉄筋、鉄くずなどゴムクローラーを切り裂く可能性のある現場で作業した”など、禁止作業や作業上の注意事項を守らないなど、お客様の不注意が原因となった損傷の場合は、保証の対象にはならないので注意しましょう。
●ゴムクローラーの禁止事項と取り扱い上の注意事項
次の作業は行わないでください。
- 砕石地盤、凹凸の激しい固い岩盤、鉄筋、鉄くず上、鉄板のエッジ付近での作業および旋回は、ゴムクローラーを傷めますので行わないでください。
- 河川敷など、大小の転石が多量にある場所では、石をかみ込んでゴムクローラーを痛めたり、脱輪しやすくなります。また、スリップした状態で無理な押土をすると、ゴムクローラーの寿命が短くなりますので行わないでください。
- ゴムクローラーにオイル、燃料、化学溶剤などが付着しないようにしてください。万が一、付着したときはすぐに拭き取ってください。また路面に油などがたまっているところは走行しないでください。
- たき火、炎天下に放置された鉄板、熱いアスファルトの上など、高温になっている場所へは乗り入れないでください。
- 作業機で片側のゴムクローラーを持ち上げた状態で、もう一方のゴムクローラーでの移動は、ゴムクローラーの外れや、破損の原因となりますので、絶対にしないでください。
油圧ショベル・ミニショベルによる作業終了後の注意事項
油圧ショベル・ミニショベルに泥や水などが付いて足回りが凍りつき、翌朝動けなくなる事態を避けるため、以下のことを守りましょう。
- 車両に付着した泥や水を落としてください。特に油圧シリンダーのロッド面に付着した水滴と一緒に泥などがシール内に入るとシールが損傷します。
- 固い乾燥した地面に駐車してください。固い乾燥した地面がない場合は、地面に板を敷いて駐車してください。地面と足回りの凍結を防止します。
- ドレンコックを開けて、燃料系統にたまった水を排出し、凍結を防止します。
- バッテリーに覆いをするか、車両から外して保管し翌朝に取り付けてください。
- バッテリーの液面が低い場合は、作業開始前に蒸留水を補充してください。
寒冷時期に建機を取り扱う場合の注意点
●冬期への備え
外気温が低くなると建機の始動が困難になり、エンジン冷却水に凍結などが生じますので気象に適した処置をしましょう。
●燃料・オイル
燃料・オイルは、粘度の低いものに交換してください。
●エンジン冷却水
エンジン冷却水の交換時期と不凍液の混合割合を変更してください。
エンジン冷却水にヤンマー純正ロングライフクーラントLLCを添加していますので、-15℃までは特に変更する必要はありません。
-15℃以下になるときは取扱説明書を参照して、濃度を調整してください。
●バッテリー
外気温が低くなると建機のバッテリー能力は低下し、充電率が低いとバッテリー液が凍結する場合があります。充電率をできるだけ100%に近い状態にしておき、保温に注意して翌朝の始動に備えてください。
<警告>
- バッテリーは引火性の水素ガスを発生させますので、火気(タバコ、マッチ火など)を近づけたり、端子部でショートさせたり、通電中に配線を外したりしないでください。爆発により死亡または傷害を負うおそれがあります。
- バッテリーの電解液は希硫酸ですので、取り扱うときは保護メガネなどの保護具を着用してください。万が一、目に入った場合は多量の水でよく洗い、医師の治療を受けてください。
●寒冷時期がすぎたら
季節が変わり、外気温が高くなってきたら次のようにしてください。
- 燃料やオイルを指定粘度のものに交換しましょう。
- AF-PT不凍液(冬季1 シーズンタイプ)を使用している場合は、不凍液を完全に排出してください。冷却系統内部を洗浄してから水道水を給水してください。
<重要>
メタノール、エタノール、プロパノール系不凍液は使用しないでください。
<警告>
不凍液は引火性があるため、火気には注意してください。
不凍液を取り扱うときは、禁煙を厳守してください。
油圧ショベル・ミニショベルを長期保管するコツ
●休車前
油圧シリンダーロッドに、錆の発生を防止するため休車中の車両姿勢は図のようにしてください。
また、長期間の休車は、次のようにして格納してください。
- 各部を洗浄、掃除してから屋内に格納してください。屋外に格納するときは、平たんな場所を選んで覆いをしてください。
- 給油、給脂、オイルを交換してください。
- 油圧シリンダーロッドの露出部に防錆油を薄く塗布してください。
- バッテリーに液面指示線の上限まで蒸留水を入れてください。十分に充電してマイナス端子を外して覆いをするか、車両からバッテリーを外して保管してください。
- 各操作レバーとペダルは、ロックレバーとペダルガードでロック状態にしてください。
- 外気温が0℃以下になる場合は、エンジン冷却水に不凍液を添加してください。
- エンジン冷却水にヤンマー純正ロングライフクーラントLLC を添加していますので、-15℃までは特に変更する必要はありません。
- 海岸など潮風の当たる場所での保管は、さびが発生しやすいため、ピストンロッドの露出部に防錆油を塗布してください。露出部をポリエチレンシートまたは油紙などで保護してください。
- 防錆油の溶剤はゴム類に対して悪影響をあたえるものもあります。必ず推奨防錆油を使用してください。
推奨防錆油メーカー
推奨防錆油 | メーカー |
---|---|
P-1300(溶剤希釈型) | JXTGエネルギー(旧:新日本石油) |
P-3(溶剤希釈型) | JXTGエネルギー(旧:ジャパンエナジー) |
P-300(溶剤希釈型) | コスモ石油 |
●休車中
休車期間中も月に一度は建機を運転し、潤滑部の油膜切れを防ぎ、バッテリーも充電してください。
<警告>
やむを得ず屋内で防錆運転するときは、ガス中毒防止のために、窓や入口を開けて換気をよくしてください。
●休車後
長期間休車した建機を運転する場合は、次の作業を行ってください。
- 油圧シリンダーロッドに塗布した防錆油を拭き取ってください。
- 可動部に給油・給脂してください。
- 燃料タンク、エンジンオイルパン、作動油タンクのドレンプラグを外し、混入している水を排出してください。
- エンジン始動後は、暖機運転をしてください。
<重要>
月に一度の防錆運転をしないで、長期間休車した車両を運転するときは、最寄りの販売会社に相談してください。