農業を取り巻く環境が大きく変化していく中で、経営を持続するためのコスト削減要求が高まっているが、加えて、規模拡大や高齢化に伴う労力削減も求められており、その中で生まれてきた一つの技術が密苗播種・移植システムだ。
育苗箱に通常なら種籾75~100gのところ、250~300gの高密度の播種・育苗を行い、それを精密な掻き取り性能を持つ田植機により従来通り1株3~4本で移植し、10a当たりに使用する育苗箱を慣行の20~22箱から5~6箱に削減する。大幅なコスト削減と労力削減、時間とスペースの有効活用をもたらす。
始まりは生産者の現場目線から。取り組みの中心にいる(株)ぶった農産の代表取締役社長佛田利弘氏(写真左)に話を聞いた。
同氏が5年前、石川県羽咋市にあるアグリスターオナガの濱田栄治氏の田んぼを見せてもらったとき、「10a当たり何箱で植えているのかを聞くと、200gの播種で10箱とのこと。それでもお米は穫れると言うので、次の年の春、密苗をつくり既存の田植機を調節して、10a当たり7箱で試しに植えてみました」。そのときに石川県農林総合研究センター農業試験場の澤本和徳主任研究員(当時)と現在ヤンマー農業研究センターで部長を務める伊勢村浩司(写真右)が田んぼを訪れて見学し、その取り組みに参加することになる。