株式会社もち米の里
ふうれん特産館 代表取締役
堀江 英一様
堀江様は、地域の離農が進む中、もっとラクに田植えができ、しかも環境にも良い農業について自分にできることはないかと考えておられました。そこで、密苗に加え、田植えと同時に液状肥料を施肥する「ペースト2段施肥」を実証実験されました。
堀江様は、地域の離農が進む中、もっとラクに田植えができ、しかも環境にも良い農業について自分にできることはないかと考えておられました。そこで、密苗に加え、田植えと同時に液状肥料を施肥する「ペースト2段施肥」を実証実験されました。
春は遅霜、秋は早霜が降りる名寄市では、水稲の栽培期間が限られているため、初期生育の早いポット苗での栽培が主流です。しかし、地域で離農が進み、そのほ場を引き受ける現役農家の栽培面積がどんどん増える中で、堀江様は「もっと楽に田植えをする方法はないか」と探しておられました。
そこで出会ったのが密苗です。また当時、マイクロプラスチック問題※が取り沙汰されていたこともあり、14haのうち1haで、2 段ペースト施肥機付き田植機の実証実験に挑戦されました。特に違いを実感されたのは、田植え時の労力でした。YR8DAを試乗されたご子息には、「作業速度が速くて植付けがきれい。直進アシストでまっすぐ進むのでとても楽です!」とご満足いただきました。
収穫においても、「後半は生育が追いついてきて、ポット苗(成苗)で植えたほ場とも見分けがつきません」と堀江様。ムラなく肥料を効かせることができ、穂先の揃った黄金色の稲に育ちました。来年度は密苗の面積を3haに増やす予定で、「労力が抑えられ、しかも環境への影響にも良いと思います」と評価いただきました。
苗の植付けと同時に、苗の根圏(上段)と深層部分(下段)の2段にペースト肥料を注入。上段で苗の初期生育が促進され、下段で生育中期の肥料切れを防ぎます。
高密度に播種して育苗する密苗では、慣行よりも苗箱数が減ることが大きなメリットのひとつ。これまでポット苗を使用していたという堀江様のほ場では、10a当たり45枚だった苗箱数が、密苗に切り替えたことで17枚へ大幅減を実現されました。
パート従業員の方からは「苗運びの回数が減ってとても楽になりました!」と喜ばれているそうです。また苗補給の回数も減るため、田植えにかかる時間も短縮。「ポット苗の田植えは1日2haが限界ですが、密苗なら3haはいけると思いますよ!」。北海道では1枚の水田を2~3haのほ場へ区画整備する動きがあり、「密苗なら連続作業ができて、相当効率が上がるんじゃないかな」と堀江様。
ペースト肥料の場合は、大型タンクから直接ホースを引っ張って、田植機の肥料タンクに注ぐだけでOK。同社でも、補助者が足場の不安定なあぜから重い肥料袋を担ぎあげる重労働から解放されたそうです。
今回実証したペースト肥料は、タンク品(500kg)を使用。粒状肥料のように空袋が出ず、ゴミゼロを実現。1ha当たり年間4.8kgのプラスチック使用量を削減できるとのこと(堀江様の施肥体系の場合)。また「袋だと肥料の保管場所を確保するのも大変ですが、ペースト肥料ならタンクで保管できるので場所もとりません」と喜ばれていました。
ペースト肥料は植付けと同時に、根の近くに液状肥料を埋設するため、苗の活着や初期生育が期待できます。同社でも、肥料の効き方に驚かれており、「ペースト2段施肥は農業経験が浅い人でも均一に散布ができました」と実感されており、実験区では、穂先が揃った真っ平の稲ができたそうです。
2段ペースト施肥機付き田植機を使うと、全層施肥に比べて少ない施肥量で効果を発揮します。そのため、ほ場外への肥料の流出も少なくて済み、環境負荷軽減の一手にもなります。「マイクロプラスチック問題は少しずつみんなで協力し合わなければ、その結果がいつか自分にも跳ね返ってくるのではないかと思うのです。話題になり始めてから自分にもできることはないかと考え、今回の実証実験にのぞみました」。
ペースト2段施肥は、液状の肥料を根の近くに施用するため、肥料の吸収効率が高く、初期茎数が多くなることが特長です。特に幼苗で移植する密苗では初期生育が重要なので、ペースト2段施肥との相性は非常に良いといえます。今回実証実験を行った北海道では、ポット苗での育苗が主流ですが、「密苗×ペースト2段施肥」を導入することで、育苗ハウスや苗箱資材費の削減や、全層施肥の省略につながる可能性があります。省力化とコスト削減を同時に実現することができるため、今後、面積拡大を計画されている方には特におすすめの技術です。