営農情報

2024年6月発行「トンボクロス8号」より転載

〈メーカー探訪〉種を播く技術で顧客に寄り添う アグリテクノサーチ株式会社

代表取締役CEO 長谷田 肇様

兵庫県姫路市
アグリテクノサーチ株式会社

「種を播く」技術の探求を通じた農業への貢献が使命

兵庫県姫路市に本社を構えるアグリテクノサーチ株式会社は、播種機を主力商品とする農機メーカーだ。トラクターに取り付ける大型機から手押し式の小型機まで幅広く手掛け、ゲル被膜で種子を覆って発芽率を高める技術「タネまる」も持つ、いわば播種技術の探求に特化した集団だ。大正8年に「多木農工具」として創業し、その歴史は100年を超える。時代に沿って革新を繰り返し、2021年には旧社名「アグリテクノ矢崎」を「アグリテクノサーチ」に変更した。代表取締役CEOの長谷田氏は、その狙いを「今の時代に求められる農業技術をより深く『探求』するという姿勢を明確にするために、『サーチ』という言葉を選びました」と語る。農業の基礎である「種を播く」技術にこだわり、日々その技を磨き続ける同社の取り組みを聞いた。

全ての商品は完成品ではない。納品しても探求は続く

同社の特長は、顧客対応を最重視する姿勢と、たゆまず改良を続ける真摯さだ。長谷田氏は、前社長の福光氏から受け継いだという理念を語る。「『全ての商品は完成品ではない』というのが私たちの基本理念です。環境や作物によって求められる技術は異なり、お客様に納めた商品は様々な課題に出会います。先代社長の福光は、経営者であると同時に開発者でもありました。弊社のほとんどの機械は、福光自身が設計し、テストし、お客様の声を反映して形にしたものです。そんな福光は、お客様の声を直に聞き取る現場対応を何よりも大切にしてきました。市場に出た商品も、お客様からのご要望やクレームに逃げずに向き合い、磨きあげることでより良いものになります。『現場にしか正解はない』というのが福光の言葉で、より良い商品を生むアイデアも、お客様との信頼関係も、現場でこそ得られるものだと考えています」。

その理念の実践について、営業部チーフマネジャーの浦野氏に聞いた。「播種作業の時期になると、作業の前後でお客様を訪問し、事前・事後のメンテナンスのご提案や、使い勝手の聞き取りを行います。納品の際にも、担当者がお客様にしっかりと商品説明を行い、不安なく使っていただけるように努めて、信頼関係を築くことを大切にしています」。長谷田氏は、同社が選択したのが「種を播く」技術であることも、真摯であり続けなければならない理由だという。

「本来、種を播くということは、芽が出るかも、そもそも生きているかもわからないものに、栽培を始める年に一度の機会を託すことです。種を播く技術に特化するのは、悪くすればお客様の1年を台無しにしてしまうリスクを負うことですが、どこよりもその技術を突き詰めることは、決して大きくはない弊社が生き残る道になります。そのためには、常に現場で正解を探り続けるしかありません」。

YouTubeや会報誌で盛んに情報発信

顧客との直接交流を何よりも重んじる一方で、同社はYouTube動画や会員サービス「アグリテクノ倶楽部」での情報発信にも余念がない。それらの取り組みについて浦野氏に聞いた。「YouTubeの弊社グループ公式チャンネルには、商品を使った実際の作業動画や、播いた種の生育を追った動画などをアップしています。以前の調査で、農家様が農機の販促動画などをよく見ておられることがわかり、2017年から着手しました。商品を実際に触っていただくのに近い情報を提供できる点が強みで、営業マンにはタブレットを持たせ、対面での販促ツールとしても活用しています」。

2024年2月の時点で動画数は96本にのぼる。PRだけでなく、ゲル被覆種子技術のイメージキャラクターとして生まれた「タネまる」を使った短編アニメーションなど、遊び心のある作品もアップされている。

イメージキャラクターの「タネまる」。
会報誌やYouTube動画など、アグリテクノサーチの様々なコンテンツで会社の顔として活躍する。ふたご座の男の子とのこと。

「会員サービスの『アグリテクノ倶楽部』は、会員間での情報共有サービスなどを提供するものですが、会員様からのフィードバックを活かしたモノづくりや、会員様が展示会に別の農家様を誘って来てくださるなど、弊社にもメリットの大きいものになっています」。アグリテクノ倶楽部では、年1回以上発行の会報誌にも力が入っている。ユーザー事例の紹介や開発秘話、社員紹介など、40ページを超えるフルカラーの会報誌だが、記事執筆から紙面のデザインまで、編集業から転職した社員がひとりで担当しているという。本業とは全く畑違いの分野から人材を受け入れ、会社のひとつの顔となる会報誌を丸ごと任せるという姿勢も、同社の懐の深さを示している。

社会貢献を目指して農業事業にも取り組む

同社は農業事業部を持ち、岡山県高梁市で水稲やシャインマスカットを生産する。長谷田氏は、収益化は課題のひとつではあるものの、最重視しているのは、農業文化の継承や環境の保全だと語る。「弊社は社是として『敬天愛農』を掲げています。天を敬い、人が生きるための根幹の営みである農業を愛する、という思いを込めた言葉です。日本で培われた農業技術や農村文化、ことに河川や山林の保全にもつながる水田農業の文化は、私たちの守るべき財産です。自ら農業に取り組むことで、農村の存続に貢献し、土地を保全し、農業を持続できる環境を維持する。農業事業はそこに価値を置いています。また、農業は互助で成り立っており、直接には携わらない社員にも、その精神を共有してほしいという思いがあります」

高齢化、後継者不足、獣害など、農村を取り巻く問題は数え切れない。同社の取り組みは地域を支えることにもつながる。同社の農業は高梁市から地域興しの要請を受けて始まった経緯もあり、なかば社会貢献事業となりつつある。「高梁市と備北広域農業普及指導センターが主催する桃の栽培講習『ピーチスクール』や、姉妹講習の『トマトスクール』『ブドウスクール』の支援もしており、おそらく農機メーカーとしては唯一の取り組みではないかと思います。諸々の難しさはありますが、逃げるわけには行きませんね」と長谷田氏は力を込める。

人に関心を持ち、持たれること、何事もそこから始まる

同社を訪問すると、誰の声が掛からずとも、フロア中の社員が一斉に立ってお客様を迎える。その様子はとても自然だ。また、社内は「ありがとう」が飛び交う環境だという。業務のやり取りであっても、ごく当たり前に「ありがとう」を交わす。長年にわたって、気持ちの良いマナーと柔らかい風土が培われてきたことがうかがえる。

しかし長谷田氏は、「そうした良い風土はありつつ、以前は全体に静かで、社員同士の会話が少ないことが気になっていました」と振り返る。「CEO就任後、私の居室の扉は常に開け放し、積極的に社員に声をかけるようにもしています。社員には、人に関心を持てる、また持たれる人間になってほしいと思います。お客様をご訪問したなら、仕事に終始して帰ってくるのではなく、苦労されていることのひとつでも聞いてきてほしい。必ずしも商品を売らなくていい。その代わりに、お客様から『来てくれ』といわれる人間になってほしい。人と人とが相互に関心を持つこと。何事もそれが始まりだろうと、いつも考えています」。

長谷田氏は「何よりも私自身が、黙って閉じこもっていられない性格ではあるのですが・・・」と笑うが、トップのそんな個性こそが、長年健やかに育まれてきた種を、大きく芽吹かせるのではないだろうか。

実践と共にある社是「敬天愛農」

アグリテクノサーチは、社業のよりどころである農業に対する思いを「敬天愛農」の言葉で表現している。機械メーカーとしては異色の社是だが、それだけに「農業を愛する」という表明は決して言葉だけに留まらない。
同社は社内の農業事業部で農業に取り組むだけでなく、グループには農業専業の「夢ファーム豊後株式会社」も擁する。夢ファーム豊後は大分県佐伯市で水稲や麦、ニラを栽培し、地域から必要とされる農業を実践している。
社是を理念に終わらせず、確かな実践に結び付けているのもアグリテクノサーチの魅力だ。

敬天愛農 天を敬い、人類が生きるために最も重要である農業を愛す。
  1. 農業の基本は「種を播く」ことであり、この技術の探求を核に豊かな人間社会を築く。
  2. 農業技術と農村文化を探求することにより、持続可能な地球環境を築く。

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