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2018年6月取材

いま、東北の密苗が熱い!2018密苗情報交換会in福島県西白河郡

全国で普及が進んでいる密苗だが、なかでも福島県県南地域は全国トップの密苗栽培面積を誇るほどで、米どころ東北の中でも、群を抜いている。そこで密苗実施者や、これから取り組もうという前向きな方々が一堂に会し、情報交換を行う〈密苗情報交換会〉が、福島県西白河郡で開催された。

全国でも密苗普及が進んでいる当地に、エールをおくる!

専任部長 三瓶 民哉 氏

ヤンマーアグリジャパン株式会社 東北支社
アグリサポート部
アグリサポートグループ

当日会場は小雨が降る天気のなか、密苗経験者、未経験者を含め、約35名の参加者で賑わった。去年に引き続き2回目の開催となる。前回はそれぞれが情報を持ち寄り、意見交換を行ったが、今年は事例発表と質疑応答が中心となる。
情報交換会は、ヤンマーアグリジャパン株式会社東北支社 南東北営業部 中浜南ブロック エリアマネージャーの吉田昌孝氏による挨拶でスタート。引き続き〈密苗の伝道師〉の異名を持つ、同東北支社 アグリサポート部アグリサポートグループ部長の三瓶民哉氏による、東北での密苗取り組み状況に関する説明があった。

密苗実施者から密苗の“伝道師”

県南地域の密苗農家は、密苗の拡大普及に向けて精力的に活動している三瓶氏からすると、どこよりも一層頼もしく見えたに違いない。
「去年、半信半疑で試験栽培から始めていただいた密苗ですが、今年は雰囲気が全く違う。去年取り組んだ方が『よし、これならいける!』と手ごたえを感じ、新たに取り組んでいただき、今年はそれがすごい数字になって表れました。東北全体で10,037.4haの栽培面積ですが、福島県と宮城県は2,000haを超えました。その福島県の中でも、特に普及が進んでいるのが、こちらの県南地域で、さらにこの地が全国で一番になりました。今年は、皆さん良い苗をつくっていただきました。ただ気温が高かったので、育苗に対していろんなアクシデントがあり、私もいろいろ対応させてもらいました。今日はそういうアクシデント情報も含めて、さまざまな情報を持ち寄って、現場の生の声を皆で共有して、来年はもっと良い苗にしていきたいと思い、この会を開催いたしました!」と、三瓶氏。

密苗実施農家に対して、お礼の言葉を述べると共に「今後とも、ヤンマー密苗のトップランナーとして、よろしくお願いいたします!」と、熱いエールを送った。
その後、同東北支社 矢吹支店 支店長の近藤洋平氏より〈中通り・浜通り地区での、密苗取り組み状況〉の報告。さらに同 農機推進部 営業推進グループの梅津陽輔氏より、全国各地での密苗普及状況の説明と、箱施用剤を散布する新しい側条施用機の紹介があり、前半は終了した。

農業生産法人 みちのく白河合同会社

農場長 穂積 紀洋 様

福島県 白河市

Profile
みちのく白河合同会社は、エコファーマーの認定を取得し、自社での有機栽培、特別栽培、減農薬栽培などの水稲生産・直販・加工・販売を中心に、農作業、建設機械作業、各種請負作業などを幅広く行っている農業生産法人。

“現代の篤農家”がおくる、現場目線のノウハウ集

1人目の〈密苗実施者の声〉として、農業生産法人 みちのく白河合同会社農場長の穂積紀洋氏から事例発表があった。
今回穂積氏は、東北でこれから密苗をはじめたい人向けに、「本日参加されている皆さんのほうが、ノウハウをお持ちだと思うのですが…」と、恐縮しつつも、ご自身の現場目線でまとめられた〈誰でもできる密苗実践マニュアル・育苗編〉の紹介、穂積氏が実際に今年取り組んだ〈密苗育苗風景〉の紹介、さらに穂積氏が推奨する〈密苗とプール育苗・太陽シートは最高の組み合わせ〉の説明、最後に〈密苗・プール育苗のQ&A〉などについて、原理原則を重視しながら、具体的に紹介してくれた。

ポイントは、資材消毒の徹底、30℃以内の催芽温度、浸種時の食用酢使用などだ。密苗独自のノウハウのように思われるが、実はみちのく白河合同会社ではもともと、慣行でも同じことを行っているという。
「慣行と密苗の違いは、苗箱1枚に、催芽籾を375g播くことだけです」と、言い切る。穂積氏によると、基本的には慣行も、密苗も、育苗では変わらないという。細かなデータに説得力がある。まさに“現代の篤農家”というイメージだ。

穂積氏が提唱する密苗育苗のポイント

  1. 資材消毒の徹底
  2. 30℃以内の催芽温度
  3. 浸種時の食用酢使用

密苗成功の意外なポイントは、育苗資材の徹底した消毒

穂積氏が特に重視するのは病害抑制と効率化(作業低減)、コスト抑制だ。そのために資材消毒の徹底やプール育苗、太陽(アルミ蒸着)シートなどを採用している。穂積氏によると、7年前に経験した茨城県の大規模農家での播種研修で、消毒の重要性を教えられ、以来、その教えを守っているという。

穂積氏はとにかく勉強家でプール育苗、太陽シート、健苗ローラー、ヤロビ農法など、世に出ている技術を書籍やインターネット等で学び、実践しておられる。
これから密苗を導入しようとしている人に対して、「密苗導入の目的は、規模拡大だけではありません。皆さんの健康を第一に、奥様や補助者の方が楽になることを考えて進めてください。機械のことはヤンマーさんにまかせて、育苗、肥培管理は皆さんが主役ですので、健苗づくりに注力してください」と、アドバイス。
最後に「いまウチでも省力化が進んでいますが、それは機械力が中心。今後は人材育成、育苗技術の作業体系の標準化などが最優先ですね」と、ビジョンを語って発表を終えた。

小抜農匠園株式会社

代表取締役 小抜 吉平 様

福島県 須賀川市

Profile
土地と家を14代にわたり受け継ぐ農家で、安全・安心かつ美味しい農産物をより多くの皆様にお届けするため、生産から販売まで一貫して行う。また地域農業の活性化にも貢献している。“匠”にこだわり、米づくりに妥協を許さないその姿は、まさに求道者や職人を彷彿とさせる、まさに“正統派の篤農家”だ。

密苗相談会、事例発表と、役立つ情報に興味津々の参加者

穂積紀洋氏の事例発表に続き、休憩前に書いてもらったアンケートを受けての、三瓶氏による〈密苗相談会〉を挟んで、2人目の〈密苗実施者の声〉として小抜農匠園株式会社 代表取締役の小抜吉平氏が事例を発表。参加者は、先祖代々の篤農家が語る貴重な情報に、興味津々の表情を見せていた。
最後に須賀川支店 江藤支店長による閉会の挨拶で、さらなる密苗の普及拡大、栽培ノウハウの向上と皆様の御発展を祈念して、情報交換会は盛大に締めくくられた。

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