ヤンマーミュージアム
2019年10月5日リニューアルオープン
2019.12.11
ヤンマーミュージアムは、「やってみよう!わくわく未来チャレンジ」をコンセプトにリニューアルオープンしました。今回は、オープニングシアターのナレーションを担当した声優・山口勝平氏とヤンマーミュージアム館長の山本昇氏に、ナレーション秘話やヤンマーミュージアムのある滋賀県長浜市の魅力、お二人のチャレンジについて語っていただきました。
※取材者の所属会社・部門・肩書等は取材当時のものです。
山口勝平(やまぐち かっぺい)
1965年生まれ。アニメや映画などの声優をはじめ、舞台俳優、ラジオパーソナリティーなど、幅広い分野で活躍。「名探偵コナン(声:工藤新一)、NHK Eテレのテレビアニメ「はなかっぱ(声:がりぞー)」「らんま1/2(声:早乙女乱馬)「ONE PIECE(声:ウソップ)」「信長の忍び(声:木下秀吉、ナレーション)」など、数多くの作品に出演。悟空所属(代表)。豊臣秀吉公の大ファンで、2017年より「長浜市声の観光大使」を務める。
山本昇(やまもと のぼる)
1981年にヤンマー入社。入社後の30 年間、トラクターの開発・設計業務に携わる。商品企画部に異動後は、農業ICTを含む、農業機械の企画・推進を行った。2017年4月よりヤンマーミュージアム館長に就任。ヤンマーのブランド発信拠点として運営に取り組む。
―― 完成したオープニングシアターについて、お二人の感想をお聞かせください。
山口:ヤンマーといったら、「ぼくのなまえはヤン坊、ぼくのなまえはマー坊」の「ヤン坊マー坊天気予報」のテレビ番組のイメージが大きかったですね。
実は長浜市声の観光大使をするまでは、ヤンマーが長浜にあることを知りませんでした。観光大使として長浜に何回か来ることがあり、まだリニューアル前のヤンマーミュージアムに来る機会があって、楽しかったんですね。
今回、リニューアルしたヤンマーミュージアムのオープニングシアターのナレーションを担当させていただきました。創業者 山岡孫吉さんがやってきたこと、僕が小さい頃から知っていたこと、この2つを重ね合わせてみて「あぁ、そういうことだったんだ」というヤンマーのバックボーンを理解することができました。
長浜、そして全国の農業・漁業従事者に還元するためにチャレンジし続けた孫吉さんは、「本当に凄い人だ」と思います。自分も勉強させてもらいました。
山本:2019年3月、東京で行なったナレーションの収録に立ち会った時、勝平さんのこだわりにとても驚きました。自分が納得しないと、何回も収録をやり直していましたね。勝平さんのおかげで、さらに深くシアターの世界に入り込めるようになりました。
山口:収録前の打ち合わせで「こういうコンセプトでやりたい」と聞いて、「堅苦しい偉人伝にしたくない」と思いました。新しいミュージアムのオープニングなので、子供たちをヤンマーの世界へ導く、未来へのわくわく感を大切にしたかったですね。淡々と偉い人の話をするのではなく、明るく、わくわく、どんどん盛り上げていきたいと思いました。
映像は、プロジェクションマッピング的に作り込んであって、不思議な空間に入り込んでしまう。時間的に意外と長いのですが、あっという間に終わってしまいますね。
山本:映像とサウンド、そしてナレーションの組み合わせが素晴らしい。私が一番感動したのは、勝平さんのナレーションで「さぁここからは、皆さん一人ひとりが主役です!」というところの「皆さん一人ひとりが主役です!」の言い方です。ぞくっとしました。勝平さんにしかできない、映像に入る前の盛り上げ方。まさに「映像に命を吹き込んだ瞬間」と思いました。長さを感じさせないのは、ナレーションのテクニックも要因の一つだと思っています。
―― 創業者のチャレンジ精神を感じられたところは?
山口:やっぱり体験コンテンツですね。 僕が強く感じたのは「たがやせ!フィールド」です。畑を耕すチャレンジですが、やっていると腰にくる(笑) 「あぁ、それだけ農業、畑を耕すことは大変なことなんだなぁ」と実感しました。トラクターを作ったら農業がもっと豊かになる、みんなの苦労が楽になる、そういうことを体験できるところが凄いと思いました。
山本:私は、入社して最初の配属が開発部でした。開発部にいた頃は、かなり自由に開発させてもらった。つまり、チャレンジですね。ヤンマーの開発スタイルについて、他社交流などで話をすると「なぜ、それに予算が出るの?」と驚かれました。
ヤンマーのチャレンジ精神は、創業者 山岡孫吉のDNAそのものなんです。私も多くのチャンスをもらって、いろいろなことにチャレンジすることができました。ヤンマーミュージアムは、チャレンジの大切さや楽しさを、体を使って学べる施設を目指しました。
―― 創業者生誕の地であり、ヤンマーミュージアムのある長浜の魅力について教えてください。
山口:もともと戦国時代ファンで、特に豊臣秀吉が好きなんです。長浜は豊臣秀吉が初めて“城持ち大名になった地”ということで、興味を持ったのがはじまりです。それから、長浜のご当地キャラ「ひでよしくん」と知り合いになって親交を深め、声の観光大使を務めることになりました。
長浜は、観光地としても素敵な所です。城下町であった古い町並みは、歴史を感じることができます。琵琶湖の湖北地域は、姉川の合戦や小谷城、彦根城、安土城とか、戦国時代好きにはたまらないスポットがいっぱいです。
山本:実は、私も戦国好きなんです(笑) 長浜は戦国時代の歴史が凝縮されていて、ヤンマーミュージアムの3階にある「おにやんまの見晴台」からは、姉川の合戦からはじまって、小谷城、賤ヶ岳(削除関ヶ原)、歴史の舞台をくるっと見渡すことができます。
私の考えですが、長浜には “機械技術のルーツ”があると思っています。1つは、国友鉄砲がチャレンジした“ネジ技術”の成功です。当時、日本になかったネジの開発は“機械技術の始まり”とも言えます。もう1つは、滋賀県で2番目に高い山である金糞岳。山の周辺からは数多くの古い製鉄遺跡が見つかっていて、製鉄の残りカス「金屎(かなくそ)」が、名前の由来とも言われています。当時の長浜は製鉄が盛んな一大産業地帯だったんですね。
孫吉が世界で初めて成功したディーゼルエンジンの小型化もまた、長浜で受け継がれてきた“チャレンジ精神”の系譜の一つのように思えます。
―― お二人がこれまでチャレンジしてきたことをお聞かせください。
山口:僕は出身が福岡なので、最初のチャレンジは東京に出てきた時ですね。その時は「役者になりたい」という夢があって、劇団で役者をしていました。もちろん役者だけでは食べていけないので、アルバイトをしていました。周りからは「大変そうだね」と心配されるほどで、月末はお金がなくて「お腹すいたなぁ」ということはありましたが、「好きな役者ができるんだ」ということで、毎日がわくわくしていました。そんな時にたまたま声優の仕事をいただき、現在に至っています。
山本:開発者としていろいろやってきたのですが、1992年に取り組んだ「自動で走行する車」の開発です。「電線を地面に埋め、電線が発する磁力線を検知して、車両を自動走行させる」ということを、ヤンマーで挑戦することになりました。
原理は分かっているのですが、いざやってみると、とてもハードルの高いチャレンジでした。ヤンマー以外の知識を集めたり、いろいろ工夫したり、1年かけて走行できた距離が1m。でも、その1mで開発チームはどんちゃん騒ぎです(笑) この自動走行技術は、事業的には他の会社になっていますが、ゴルフカートの自動運転などに利用されています。
―― これからチャレンジしたいことはありますか?
山口:声優をやって30年になります。新しいチャレンジとして、一昨年から落語を勉強させてもらっています。慣れない落語に四苦八苦していますが、楽しいですね。声優とか30年もやっていると、それなりにできてしまうんです。ポジション的にも上になって、若い時のようにいろいろ言われなくなってしまう。「このまま胡座をかいていてはいけない」という気持ちがあった時、落語に出会ったんです。芝居もずっとチャレンジし続けたいですね。
山本:チャレンジには、ゴールがないかもしれませんね。
山口:その時は壁を乗り越えることに一生懸命なのですが、結局は「未来の自分はこうなりたい!」という夢を追っかけているんですよ。山本さんがチャレンジした「自動走行技術」でも、「1年で1mも進んだ!」と考えるか、「たった1mしか進んでない・・」と考えるかで、未来は大きく違ってくる。
山本:そうなんです。たった1mですが、技術者にとって1mは凄いこと。そういう意味では、チャレンジとは「チャレンジする人に対して平等、誰もが自分の基準でチャレンジすることができる」と、そんな気がしますね。
―― 未来を担う子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
山口:今回のリニューアルにあたって、ヤンマーミュージアムのチャレンジにびっくりしています。リニューアルする前に来た時は、「ヤンマーの技術を知ってもらう博物館」というミュージアムでした。今回、来てみるとがらっと変わっているんです。 山岡孫吉さんのチャレンジスピリッツを体験してもらうミュージアムになったことに衝撃を受けました。
どんどんチャレンジしよう!自分でやろうと思えば、チャレンジできることはたくさんある!チャレンジしてみると楽しい!ここでいっぱい体験して、自分の好きなことにチャレンジして、自分のぴったりのものを見つけてもらえれば嬉しいですね。
山本:各コンテンツは、安全面を十分にクリアしつつ、ハードルがほんの少し高くなっています。例えば、頭と体を使って迷路を抜ける「キッズエナジーアスレチック」は、上手く通らないと頭が当たって痛い、痛いんだけど、クッションを付けるとチャレンジにならない。チャレンジして、ハードルを乗り越えた後の子どもたちの“どや顔”が、実にいいんです(笑)
チャレンジは、当たり前のことかもしれませんが、まずはやってみよう!やらないと何も生まれない。そして、一歩踏み出したら諦めずにやろう!ということを学んで欲しい。ヤンマーミュージアムは、チャレンジすることへのわくわく感と諦めない心、やり遂げた達成感の気づきになって欲しいと思っています。