お客様事例紹介

農業生産法人 株式会社ファームランド西田 西田 英史様

農業生産法人 株式会社ファームランド西田

西田 英史様

  • 地域 : 山口県下関市
  • 掲載年 : 2020年
  • 作物・作業 : 水稲/小麦/大豆/野菜

サラリーマンから個人事業主へ

農業生産法人株式会社ファームランド西田がある下関市菊川町は、豊浦郡菊川町から平成17年2月、同郡豊田町・豊浦町・豊北町と共に下関市に統合される。この地域は緑豊かな山系に囲まれ、標高15mの盆地を中心に木屋川、田部川が合流する田園平野が広がる中間農業地域だ。水稲を基幹作物にしつつ、小麦・大豆の栽培が行われ、また収益性の高いイチゴ・エビ芋・ナス・キャベツ等の作物も栽培が行われている。
西田社長の実家はこの地域に根差し、水稲農家として生計を立てていた。その当時、社長は農家を継ぐ気持ちはなかったが、何か両親の役に立つこともあるだろうと県立農業大学校に進学した。卒業後は山口陸用ヤンマー販売株式会社に入社。油谷支店で整備担当の技術職として3年、菊川支店で営業職2年勤務したのち退社、専業農家として独立をする。
「父の友人が耕作地を引き継いでくれる人を探しているとの話を知り、それが結構まとまった面積だったので、この広さなら何とか農業で食べていけるかもと思ったのがきっかけです。」
個人事業主になれば、自分の時間を作ることができ、休暇もゆっくり取れると思っていたという西田社長。就農当時は、実家が持つ2 haと借り受けの2 ha、合計4 haで水稲をスタートさせた。しかし、その後も耕作地を借りて欲しいという話を多く得て、3年後には30 haのほ場を管理することとなった。
農林業センサス2015によれば、全国の販売農家戸数は133万戸。そのうち後継者がいるのは過半数割れの65万戸(49%)となっている。また、後継者がいると回答していても、同居後継者の従事日数0日が7万戸(18%)、1~29日が16万戸(41%)、非同居後継者が25万戸(19%)であり、本当に後継者になりえるかは不透明である。さらに後継者不在農家においては、その経営を誰にどうやって引き継いでいくのか、耕作地をどうするのかが大きな課題となっている。その解決策のひとつとして、農業生産法人に貸し出す場合も多く、西田社長の会社もその例にもれない。

トラクターを自在に運転する妻も大きな戦力

個人事業主として農家になって13年目、従業員の社会保障や取引先との信用面を考慮し、西田社長の代に株式会社ファームランド西田を設立。6年目の現在、西田社長と奥様の陽子さん、それから従業員の百代さん。「主力メンバーはこの3人です。繁忙期にはアルバイトを4、5名雇います。田植えは妻と百代くんにペアを組んでもらい任せています。妻は個人事業主で農業を始めた頃からトラクターに乗ってもらっています。こちらも大きな戦力です。」
しかし、例え少数精鋭のメンバーであっても3人で40 haのほ場を管理するには、やはり工夫が必要だ。夏に生茂る畔の草刈りにミグモアや背負いの草刈機を使用していたが、現在はハンマーナイフモアやスライドモアを導入し効率を上げた。3年前には、山口県で一番に密苗も導入した。
「密苗は本当に効率が良く、助かっています。弊社は多品種を育てるため、栽培管理が慣行栽培とほとんど変わらず、品種に関係なく導入できるのが魅力でした。育苗箱数が減ることで播種や育苗にかかる資材のコストが抑えられ、運搬作業に伴う作業時間や労力の軽減、さらには育苗ハウスの省スペース化など、そのメリットは多くあります。何よりも、弊社ではこれまで1回に16枚を使って田植えをしていたのが、密苗だと8枚とか10枚ですんでしまう。なので、朝一番に100枚ほど苗を積んでしまえば、妻と百代くんに作業は任せ、私は代掻きをする。というようにこれまで、3人がかりで田植えをしていたのが、2人で完結できるのは、労力の削減という点ではとても大きいです。」

リモートセンシングで繋ぐ、10年後の未来

また、西田社長は密苗とほぼ同時期にドローンを使って幼穂形成期にほ場を撮影し、水稲の葉色と茎数を測定して生育マップを作成するリモートセンシングの導入を決めた。
「ヤンマーさんと5 haの契約栽培をさせていただいているご縁もあり、そのほ場にドローンを飛ばし、幼穂形成期のマップデータを3年間採っています。しかし、この3年間もったいないと思いつつもこのデータを活かし切れていなかったので、今年は昨年のデータを元に可変施肥を行う予定です。データを活かすにも専用の機械が必要であったりするので、資金繰りを考えつつ動いているところです。1年に一度しか採れませんから、それまでのデータも無駄にしないために、リモートセンシングは10年くらいのスパンで考えています。」
リモートセンシングを取り入れている農業生産法人は山口県では3社。西田社長は、10年という長いスパンでのデータの利用法を見据えつつも、自身でドローンの免許を取得。今年5月に導入し、つい先日にはテスト飛行を終えたところだ。今後はリモートセンシングのデータを活かしたドローンの活用も考えているという。

コスト管理こそ、おいしい米を作る秘訣

人件費にかかるコストを機械化することでバランスを取りつつ、資材のコスト管理にも注意を払う。農業を始めた当初は、おいしい米を作るには減農薬でないと、と力んでいたという西田社長。しかし、経験を積むにしたがって、資材のコストを削減すれば、おのずと減農薬となりおいしい米ができるということに気づいたという。
ファームランド西田の年商は、法人設立以降、5000万円前後と安定した売り上げとなっている。米の90%を卸に出荷直販が10%未満、JAへの出荷は1%未満となっている。
水稲の価格はどうしても不安定な要素が大きい、そのため安定した収益を確保するために複数の卸会社への出荷をメインにしている西田社長。一つの会社だけの取引では、何らかの原因でそこの取引がなくなると一気に経営は立ち行かなくなる。手間は掛かるが、あえて複数の会社と取引をすることで、経営的なリスクを回避できるようにしている。むろんキャベツとレタスの栽培も契約栽培だ。
「個人事業主で農業を始めた頃は、ほぼJAに出していました。しかし、資材屋経由で卸からこんな品種を育てて欲しい人を探している、という情報をもらうようになり徐々にJAへ出荷する量を減らしていきました。3年前からヤンマーさんとも契約栽培をスタートしています。収穫した米や野菜を出荷するというよりも、田んぼや畑の区画ごとに販売するイメージです。」

会社にして生まれたチームワーク

唯一の社員であり、生産管理担当の百代さんは、勤務して4年目、なくてはならない存在だ。「以前は製造工場のオペレーターをやっていました。後輩の〝農業楽しいよ〟という言葉が忘れられず、彼の所で仕事を手伝いながら農業を勉強させてもらっていました。そんなときに、人手が足りずにとても大変そうな西田さんを見て、もしかして会社だから雇ってもらえるかもしれないと、声を掛けさせていただきました。」
百代さんが「雇ってください」と西田社長に声を掛けた当時、社長の父が倒れ、母も病院に付き添うことになり、一気に2人の労力を失っていた。
「田植えを全て妻と2人で行うことになり正直、途方に暮れていました。とくに勧誘をしたわけでもありません。あの頃は本当に大変で、近所の農家に見たことがない若い人が働いていて、羨ましく思っていましたから、雇ってくださいとお願いされたときには、会社にしておいて良かったと心から思いました。」
米作りは西田社長が中心となり、大まかな計画を立て、ほ場の様子をみながら百代さんと相談しつつ最終の目標値まで持っていく。加工用のキャベツとレタスの栽培は百代さんが任されている。 「任されたものの、経験値も浅く、知識も持たない僕ですから、試行錯誤はするものの失敗の連続でした。やっと去年あたりから軌道に乗り始めたという感じです。社長は相談にはのってくれますが、最終的には僕の判断になります。でも僕には前職よりも、こっちの方が合っていると思います。待遇だけで判断すれば、前職の方がいいのですが、僕がいなくても誰かができる仕事。でも、こっちは手を掛ければ目に見えて変化するので、やりがいがあります。」

失敗しても諦めず、次の手を自分で考え続けること

西田社長の20歳の長男は現在、社長の働く姿を見て、農業はおもしろそうだと県立農業大学校へ通っている。
「2、3年後にここに帰って来たら、百代くんが息子を教え、そこでまた新しいものができるとおもしろいなと思っています。私のスタンスはあくまでアドバイスはしますが、結局自分で仮説を立て、考え、失敗する中で学ぶことが全てだと思います。僕も多くの失敗を重ねさせてもらっていますから。稲も野菜も手を抜けばそれなりだし、手を掛け過ぎると効率が悪くなってしまう。下手な手の抜き方をすると目も当てられない。その塩梅は難しいが、そこがおもしろい。そういう意味で、少人数で会社を回すためには機械化も必要だし、道具として使えるものは全部使っていいものを出荷したいと思っています。」

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