お客様事例紹介

梅田 裕也 様 〈6AYES2GG-GT〉

梅田 裕也様

住所 : 北海道宗谷郡猿払村

ホタテ桁網船『第六十八幸宝丸』 電子制御エンジン6AYES2GG-GT

全長・幅(m) : 26.5 × 5.5
総トン数 : 14G/T
主機関 : 6AYES2GG-GT(1002PS)

出典 : YANMAR mare vol.38(2017年8月発行)

エンジンは情報収集とモニター機の観察で決めた

猿払村漁協で2号目の電子制御エンジン6AYEを搭載した「第六十八幸宝丸」が、平成28年6月に新造船として竣工した。幅広い情報収集と緻密な建造計画により、着実に工程を進めながら2年かけて完成させた待望の漁船である。梅田裕也さん(33歳)は新造船の建造を思い起こして語る。「エンジンはヤンマーから情報を得た次世代型のコモンレールシステムに興味を持ったことがきっかけです。同じ漁港に試験的にこのエンジンを搭載したホタテ漁のモニター船があって、毎日様子を見ていたのでよくわかるのです」
出港から漁場での操業、そして帰港するまで、梅田さんは自らの作業に取り組みながら、その漁船の動態を目で追っていた。特に煙が出ない、静か、海面を滑るように走る姿、どれをとっても申し分ないと感じ入った。併せてヤンマーからはモニター船の操船データを入手して細部までチェックしていた。そして、その頃から、搭載するエンジンは電子制御エンジン6AYEしか頭になく、迷うことなくこのエンジンあってのホタテ漁だと確信したという。
また、造船所についても従来なら地元の業者に発注するが、ヤンマーに情報収集を依頼してきめ細かく検討を重ねた結果、ホタテ漁船を主力に造っている広尾の造船所で建造した。
いま第六十八幸宝丸は、電子制御エンジン6AYEの燃費低減、レスポンスの良さなどのメリットも加味され、日々安定したホタテ漁の実績を刻んでいる。

第六十八幸宝丸
梅田 裕也氏

来年の3月 晴れて船長として指揮を執る

現在は父親の梅田勇一さん(60歳)が船頭としてホタテ漁の指揮を執っており、裕也さんは漁場までの往復の操船と甲板での選別作業を主な役割として乗船している。ただし、漁協の規約に準じて勇一さんは今年度で定年を迎えることとなり、事実上、来年の3月からは裕也さんが船長・船頭となってホタテ漁の操業を一手に担うこととなる。
「18歳の時に組合員になり、研修で他のいろんなホタテ漁の漁船に乗り込んで、漁に関するさまざまな手伝いを5年ほど続けてきました」と笑顔を浮かべる。
早朝の4時半に出航し、ホタテ企業体のノルマである12トンの漁獲を目指す。漁船の右舷と左舷に1箇所ずつ取り付けられた重さ約300キロの八尺(桁網)を海に投げ込み海底を曳く。左右の八尺に各約3.5トンのホタテ貝が入る。甲板で選別され船倉へストックされる。
12トン以上漁獲する場合もあるが、「船倉に積めるか積めないかの判断も重要になるし、併せて天候や波の高さ、そして加工場の処理能力も適宜、考慮しながら操業する」というから船頭には多面的な観察眼が要求される。
操業が本格的になるのは4月末頃で、6月頃から10月頃にかけての最盛期には34隻の漁船が漁場を行き交い、全船で1日に約450トンが漁獲される。

裕也さんの来年からの操業が楽しみというお父さん梅田 勇一氏。

4輪採制の漁獲で資源管理型漁業を推進

猿払のホタテ漁は「4輪採制」で行われている。つまり海岸線14マイル(約22.4キロ)、沖出し8マイル(約12.8キロ)の範囲内を4つの漁場に区分けし、その4区分に稚貝を地撒き( 放流)して4年かけてじっくり育て、毎年4年目に当たる区分のホタテ貝を漁獲する。このサイクルを繰り返していく資源管理型の方法である。
ただ、これまでは5年サイクルで漁獲していたが、3年前の平成26年12月の大型低気圧の影響によるホタテの壊滅的被害から、リスク低減を考慮して4年に変えられた。
「爆弾低気圧で海底の砂が舞い上がり、ホタテを覆って窒息させたことが主な原因で、オホーツクのホタテは大幅に減少しました」と裕也さん。
頓別、枝幸、雄武、沙留は被害が大きかったが、猿払は被害が軽微だっただけに、少ないながらも水揚げできた。その影響で道内でのホタテが品薄となって単価が高騰し、結果的に生産額が上がった。
猿払では過去にも漁業不振の時期があった。昭和29年以来漁の対象だったニシンの姿がまったく途絶えた。さらにその10年後には、乱獲による減少でホタテ貝の姿まで見えなくなった。この現象に危機感を抱いた漁業者と村は、一体となって資源管理型漁業へシフトを変えた。同46年、日本で初めてホタテの稚貝の大規模な放流を行い、同49年から漁獲が可能となり、以来、管理型漁業を推し進めて今日、日本一の漁獲を誇るようになった。

操船の扱いやすさを極めた操舵室の最新機器。

他の同じ規模のエンジンと比較して劣っている点は皆無という6AYES2GG-GT。

進取の精神で新しいものをどんどん推奨

現在、猿払村漁協の青年部で副部長を務める裕也さん。ヤンマーのエンジンと船のトン数、船首に配置したブリッジ、重心バランスの良さなど、トータルにベストマッチングに建造された第六十八幸宝丸の素晴らしさをもっと漁協内に広めていきたいと抱負を語る。
そして自らのミッションとして、安定的にホタテ企業体の年間漁獲目標である4万トン以上獲得に全力を注いでいくことだという。着実に、時には大胆に、進取の精神を糧として歩む裕也さんの未来はますます輝きを増していくだろう。

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