お客様事例紹介

工藤 幸弘 様〈6AYES2GG-GT〉

工藤 幸弘様

住所 : 北海道宗谷郡猿払村

ホタテ桁網船『第八幸生丸』 電子制御エンジン6AYES2GG-GT

全長・幅(m) : 25.50 × 5.25
総トン数 : 14G/T
主機関 : 6AYES2GG-GT(1002PS)

出典 : YANMAR mare vol.38(2017年8月発行)

千載一隅の好機を得て父親の漁船に乗り込む

北海道宗谷岬から約30キロ南下した地に位置する猿払村。眼前に広がるオホーツク海には豊富なプランクトンが生息する。また森や湿原から川を伝って流れ込む陸の栄養分もあり、猿払村の前浜は絶好の漁場を形成している。猿払村がホタテの水揚げ日本一を誇る所以である。この地で祖父の代から漁業を営む工藤幸弘さん(41歳)は、26歳の頃に初めて父親が操業していた第八幸生丸の乗組員として乗船した。
「大学卒業後なので、他の同級生より漁業に就いたのは遅いのです。まず漁協の組合員になり3年間は研修です。丁度4年目に第八幸生丸に欠員が出たのでタイミングよく乗ることができました」と当時を振り返る。

第八幸生丸
工藤 幸弘氏

新しいもの好きの父親に似て自らもエンジンの情報を物色

父親が操業する待望の第八幸生丸に乗り込んだ工藤さん、「最初の1年は漁のことなど何も分からず、父親の一挙一動を見て必死になって覚えました」と苦笑する。代々「漁は親の姿を見て覚えろ!」というのが流儀で、一切漁については父親から教わらなかったという。
また、最初に乗船した年に不漁の日が続き、3日間、昼食も食べずにホタテ漁にかかりっきりになったこともあった。「朝早くから沖へ出て八尺(熊手付きの桁網)で海底を曳いてもなかなか獲れず、港に戻ってきて八尺を岸壁に上げて、夜遅くまでかかって補修する、ということを3日連続でやりました」と、当時の苦労を思い起こす。
そういう苦労の積み重ねがあったあと、33歳の頃には船長、船頭、漁労長を兼ね、舵を握ってホタテ漁の操業に出るようになった。
「漁協では60歳定年制が敷かれているので、私の父親も6年前に定年で船から降りて私に代替わりしました。父親は新しいもの好きで、新しいエンジンが出たらすぐに換装するというくらい初物喰いです」と語るが、その気質は工藤さんにも引き継がれているようで、今回の電子制御エンジン6AYES2GG-GTの搭載が実現したのも、そのせいかも知れない。
工藤さんは、3~4年前にヤンマーで新しいエンジンが開発されているというニュースをキャッチし、情報を物色していた。ただコンピュータ制御だというので躊躇した。本船の前の船に搭載したコンピュータ制御のエンジンで不具合の経験があったからだ。しかし新しいもの好きの父親は頑として換装を勧めたという。

新しいもの好きのお父さん
工藤 幸雄氏。

スピード、パワー、静粛性など、申し分ないエコなエンジン

新しいエンジンの換装を真剣に検討するようになった頃、知来別の漁港にヤンマーの新しい電子制御エンジンを搭載したホタテ漁の新造船が入港した。量産体制前に、1年間の操船データを入手するため先行投入された漁船である。
「入港して半年くらい経った頃にその漁船の船長さんに様子を伺うと、スピードも出るしパワーもある。素晴らしいエンジンだと。それじゃ搭載するかと即座に結論に至りました」と工藤さん。
第八幸生丸に搭載して竣工したのが平成28年の3月。11月初旬までのホタテ漁での操船の感想は、「前のエンジンの6AYPと比較すると、当然パワーはあるし、エンジン音は静かで、振動もない、煙も出ない。そういう意味では環境にいいエコなエンジンですね」と、すべてにおいて満足と笑顔を浮かべた。
ホタテ漁は海底で桁網を曳いて漁獲する。石の散乱している海底は曳く力もそれほど強さは必要ないが、粒子の細かい泥状場所はパワーが求められる。「電子制御エンジン6AYES2GG-GTは、パワーもトルクもあって、泥状の重たい場所で桁網を曳くのが楽になりました。エンジンの回転数を上げなくても低い回転でも力が出るから燃費も良くなる。前のエンジンより20~25%の低減となっています」と語る。

海底が泥状の漁場でも底力を発揮して
パワーを見せ付ける6AYES2GG-GT。

使いやすさを向上した電気リモコンヘッドと
液晶パネルを採用した計器盤。

将来の夢は子供と一緒にホタテ漁の船に乗ること

ホタテの漁獲は1日で12トンというホタテ企業体でのノルマがある。そのノルマを切らさず操業することが重要で、漁獲中の船上では手を休める暇もないという。クレーンで網を引き上げて甲板に降ろされたホタテは選別され、違う種類の貝や天敵のヒトデは別のコンテナに収納される。選別作業に40分を要するが、その間ほぼ20分ほど八尺を曳いているので、次々と甲板に収穫物が降ろされる。
例年、3月から始まり11月初旬まで続くホタテ漁。今は稚貝の放流などで資源管理型漁業を推進しているが、自然の気候変動だけは対処のしようがない。工藤さんの想いもそこにある。
「異常気象などで環境も変わってきているので、この先どれだけ長くホタテ漁が続けられるか危惧するところです。猿払に関しては恵まれているが、他の地域では不漁のところもある」と不安視するが、ひとつの夢を抱いている。工藤さんには5歳と3歳の男の子がいる。将来その子らが漁師になると言ってくれて、一緒に船に乗ることになれば、この上ない幸せだと。
日本一のホタテの漁獲を誇る猿払、そして第八幸生丸の潮目はますます明るく輝いている。

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