同社にとって4隻目となるケーブル敷設・修理船が“KDDIケーブルインフィニティ”だ。2019年に竣工した、日本初の電力ケーブル工事にも対応する自航式船舶である。海底ケーブル積載用タンクを2基装備し、その搭載重量は4,000トン。深海用細径ケーブルなら5,000キロメートルの搭載が可能だ。この長さは、太平洋横断の約半分に相当する。操舵室 (船橋)は360度ガラス張りで視界を確保し、船体中央に配備することで船首や船尾の作業状況を把握しながら操船できる。
海底ケーブルの敷設やジョイント作業では、潮流による影響を考慮したシミュレーション技術を用いて船体の位置を調整する必要がある。そこで同船では、自動定点進路保持装置(DPS)を装備し、出力1,060kW のトンネルスラスタを2基、出力820kWの昇降式スラスタ1基を船首側に、出力2,500kWの推進器(アジマススラスタ)2基を船尾に搭載することで、従来のケーブル船と比べ、耐候性を格段に向上させた。これにより待機率を低減し、短期間での電力ケーブルの敷設工事を可能としている。また、航行時、工事時、接岸時など状況に応じた操船位置がとれるように、船橋の船首と船尾、両サイドの4カ所で操船が可能である。
機関部にはヤンマー製発電機関8EY26LWSを4基、停泊用発電機関として6EY18ALWS1基を搭載。長期間のメンテナンス支援体制や納入実績に裏付けられた製品の信頼性、母港とする北九州との地理的な優位性を考慮しての採用となった。いずれの機関も選択式触媒還元脱硝システム(SCRシステム)を搭載し、IMOの三次規制に対応していることから、世界中の海で航行が可能だ。