農業法人 株式会社グラン・ファーム
代表取締役
後藤 直之 様
- 地域 : 福島県
- 掲載年 : 2020年
- 作物・作業 : 水稲
農業法人 株式会社グラン・ファーム
代表取締役
東日本大震災から復興の歩みが進む一方で離農する農家の農地が増加している。そんな状況をなんとかしたいと立ち上がったのが福島県相馬郡新地町で農業法人を営む株式会社グラン・ファーム。代表取締役の後藤直之氏は、地域のきめ細かなニーズに対応するため、70ha規模のこだわりが詰まった理想的なライスセンターを建設した。同氏を突き動かした熱い想いを語っていただいた。
福島県相馬郡新地町で株式会社グラン・ファームの代表を務める後藤氏は、従業員4名で68haの水稲を栽培している。栽培品種は、ちほみのり、ゆみあずさ、天のつぶ、ミルキークイーン、コシヒカリ、とよめき、みずほの輝きの7品種だ。ライスセンターの荷受けの期間は9月20日頃から11月10日頃で、1日の稼働時間は、8時~17時の9時間。1日の荷受量は3ha可能で、刈取り面積は2.5~3ha/日を目標にしておられる。
70ha規模のライスセンターが必要になった経緯についてうかがってみた。「元々自宅で乾燥・調製を行っていましたが、規模を拡大するうちに手狭になってきたんです。また、2011年に発生した東日本大震災により離農する農家が増加し、今後も規模拡大が見込めたので導入を決めました」。日頃の業務の中で困っていたことはなかったのだろうか。「放冷タンクがなかったので、前日に刈取った籾は籾すりをしてからでないと刈取りに行けない状況でした。午前中に籾すりを行い、午後から刈取りに行くという流れだったので、作業性は悪かったと思います」と語る。導入までのスケジュールについては「2017年の冬頃にヤンマーさんに相談しました。同時に色んな施設を見学させてもらい、設計などのすり合わせを行いました。2018年冬に工事に着工、2019年4月に完成しました」と2年以上におよんだそうだ。
ライスセンターの建設にあたり、まず荷受設備についてうかがってみた。「荷受けについては元々やっていたピット式を導入して欲しいと伝えました。軽ダンプでの搬入に加え、2トン車でも受けられるような容量の大きい荷受ホッパーを要望しました」。乾燥設備についてはどうだろうか。「自作面積だけではなく、受託も行っていますのでこだわりました。受託で行うと、6反歩規模の農家さんがほとんどですので、そういった小規模の農家さんに対応できるように50石をベースに設計してもらいました」と地域のニーズに応えようとする後藤氏の姿があった。
設計の中で最もこだわったという調製設備については「放冷タンクを導入して、荷受けと籾すりをラップさせたいという所を要望しました。放冷タンクの導入後は、朝一には籾の乾燥が終わっていますので、それを放冷タンクに移動させることですぐに荷受けが可能になります。また荷受けと平行して乾燥・籾すり調製がラップしながら行えることが良かったです」と新しい施設によって作業の効率化にも手応えを感じておられた。
乾燥・調製システムフローについて明確なビジョンをお持ちの後藤氏だが、ヤンマーからの提案についてはどうだったのだろう。「荷受け、乾燥機、放冷タンク、籾すり調製までトータルにコーディネートしてもらえたので助かりました。既存の機械もレイアウトに組み込み、ダクトの位置までコーディネートしてもらい思い通りの設計になったので、全体の使いやすさも向上したと思います」と高評価いただけた。
後藤氏のこだわりが詰まったライスセンターには、スマート農業の技術も導入されているという。「(株)山本製作所のYCAS(山本乾燥機遠隔確認システム)を導入することによって、事務所と自宅が離れていても、情報端末で作業を確認できる所が良かったと思います。昨年は夜に1回だけ異常発報がありましたが、すぐにメールで知らせが届いたので夜の内に対応でき、非常に助かりました。」と導入の効果を感じておられた。
従業員の方はライスセンターの建設をどう思っているのだろうか。「現在、従業員は4名いるのですが、以前の施設と比べると、作業エリアが充分確保でき、放冷タンクを配備したことで、余裕を持って作業ができると満足しているようです。また、作業性が高まったことで今までは休めなかった場合でも、交代で休みを取ることができると喜んでいます」と働き方改革の実現にも貢献しているようだ。最後に今後の展望についてうかがってみた。「この設備を最大限に活用して100haを目標にしたいですね。農家を取り巻く環境はとても厳しいですが、地域の担い手として地域に貢献できるように頑張りたいです」と語る後藤氏の瞳は輝いていた。
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