荒綾農産
代表
荒川 大輔様
- 地域 : 宮崎県東諸県郡
- 作物・作業 : 土づくり
荒綾農産
代表
宮崎県は全国一のキュウリ生産地として知られている。今回は、そんな宮崎県東諸県郡で、ハウスキュウリ中心の営農から、露地野菜栽培中心の農業経営に転向し頑張っておられる、荒綾農産の荒川大輔氏を訪ねた。荒川氏は、TVでお馴染みの「出張DASH村」でも紹介された若手農家だ。
現在は荒川氏とご両親の3名で作業をされ、繁忙期は〈農福連携〉にも取り組み、福祉施設から15~20名を雇用。それでもほぼお1人で機械作業をされることから、夜の9時までロータリー作業をされるなど、多忙を極めるという荒川氏を、GNSSガイダンスシステム+自動操舵補助システムが救った。スマート農業の最前線を歩む若き篤農家にお話をうかがった。
荒綾農産の荒川氏は、以前、ご両親が営んでおられたハウスキュウリ栽培中心の営農形態から、現在は唐芋(かんしょ)3ha、ばれいしょ2ha、ダイコン2.5ha、飼料稲1~1.5haなど、露地野菜を中心とした営農形態に転向しておられる。「両親はハウスキュウリだけだったんですが、2005年に私が就農したときに、国の事業でハウスを新しくして3人ではじめたんです。ところがやってみると3人だと人手が余ってきたんですよ(笑)。それで、夏場でキュウリの作業が切れるときに、露地野菜をやってみようかな…と思ってはじめたんです。そしたらそれが面白くて、キュウリも含めて今ではほぼ年中野菜をつくってますね(笑)」。
爽やかな笑顔で出迎えてくださった荒川氏は、現在30代の若き篤農家だ。子供のころからご両親の農業を見てこられて「高校時代から農業をやろうと決めていたんです。でも両親にまだ早いと言われたんで、農業大学へ進学して施設園芸を学んでいました。卒業後に就農して、今年で14年目になります」と、さらりと語る荒川氏。
そんな荒川氏の志が、いかに高いかを物語るエピソードをひとつ紹介しよう。取材の途中で、荒川氏のトラクターを見せていただいて驚いた。なんと〈日本を支える魅力ある農業〉など、ご自身で農業への思いをキャッチフレーズにして、トラクターのボンネットに貼っておられるのだ。このような若者がいる限り、農業の未来は明るい。しかし、このように若く志の高い荒川氏でも、日々の蓄積疲労にはまいっていたという。それを解消してくれたのが、ヤンマーと販売提携をしているニコン・トリンブル社(本社/ 東京都)のGNSS※1ガイダンスシステム+自動操舵補助システム(以降、同システム)だった。
播種前のロータリー作業が曲がると、どうしても播種も曲がってしまうんですよ。だから、それを気にしながらハンドルを握っていると、やっぱり疲れる。なので以前から、なんとか楽にならないかと思っていました。それで、展示会のブースでGNSSガイダンスシステムを見て、興味を持ったんです。このモニターだけ導入して、モニターに表示された経路を見ながら作業をすれば楽にならないかなぁ…と思って、ヤンマーの谷山さんに相談していたんです」と、当時を振り返る。
それを受けたヤンマーアグリジャパン(株)国富支店の谷山正一氏も「やはり精度の部分で精神的に疲れるから、日頃から負担があったんだと思います」と、うなずく。「そんなときヤンマーさんからこのシステムの実演動画を見せてもらって、自分より若い女性が熟練者のように作業をしていたので、これは良いと思いました。まぁ、谷山さんの提案がうまかったこともありますよね(笑)。それで2019年1月ごろに導入しました」と、荒川氏。同システムの魅力が荒川氏の想像を超えていたことがうかがえる。
次に使い心地についてうかがってみた。「現在はデルタ仕様のYT470に装着して、ロータリー作業を中心に使用しています。まず驚いたのが本当に疲れないことです。作業は真っすぐ進まないといけないというプレッシャーがありますし、ハンドルを握りながら、作業機がちゃんと仕事をしているか、ちょこちょこ後ろを見るので疲れるんですよ。それから解放されたのはうれしいですね。ハンドルを握らなくても直進してくれるので、基本的に社長座りでやっています(笑)」と、とても満足されているご様子だ。
では性能についてはどうだろうか。「これまでは隣接耕をしていたんですが、枕地で旋回するときに切り返しで時間がかかっていたんです。でもこのシステムを使えば、1本飛ばしで作業ができるので、旋回時間を短縮できるうえ、ロータリーなどの作業機の重なり部分もほぼピッタリ合います。あと、枕地での切り返しがないので、泥を押して枕地を荒らすこともなくなりました。それからモニターに作業をした軌跡が色で表示されるので、うっかり作業を忘れることもありませんね。繁忙期の作業は夜に行うことが多く、ほ場がよく見えないために雑になってしまうことがあったんですが、このシステムを使えば、ほ場がよく見えなくても確実に真っすぐ進んでくれるのでとても助かります」と好評価をいただけた。
最後に今後の展望についてうかがった。「今後は人手不足解消と人件費低減が目的なんですが、播種用やマルチ用の小型トラクターに同システムを装着して、私がいなくても作業ができるようになればいいですね。それから、来年あたりに法人化しようと考えています。農地の確保はまだですが、規模拡大もやっていきたいですね」と、ICTを活用しながら挑戦し続けようとする気持ちが頼もしい。
谷山氏も「このシステムは全国で約6000台普及していますが、そのうち80%が北海道なんです。この辺りの地域ではまだ珍しいシステムですが、荒川さんのように若く意欲のある人が導入してくれると、地域で広がってあと数年で当たり前になっていくと思います。荒川さんは国が進めているスマート農業のプロジェクトにも興味を持たれていますので、ヤンマーもこれからいろいろとスマート農業化へのサポートをしていきたいですね」と語ってくれた。これからもICTを軽々と使いこなす若さで、地域を、いや日本の農業を支えていっていただきたい。
経験と勘で行っていた作業が、誰でも簡単に、正確に。