個人農家(浦門農産)
浦門 秀明様
- 地域 : 鹿児島県熊毛郡
- 作物・作業 : 水稲
個人農家(浦門農産)
安納いもやサトウキビが基幹産業として栽培されている種子島。島の南部に位置する南種子町は、畑作よりも稲作が盛んな地域で、水田の面積は約700ha におよぶ。そのうちの25haの水田をお1人で管理されている浦門農産の浦門秀明氏は、以前から防除作業の省力化を考えておられた。特に夏場になると、25haのほ場をホースを引っ張りながら防除するのは大変な重労働だ。
そこで決定打として導入されたのが、産業用マルチローターMG-1だ。導入されて間もない浦門氏だが、見事にマルチローターを操っておられた。島内でもスマート農業の先駆的な存在でおられる浦門氏に、導入の経緯やメリットをうかがった。
浦門氏のほ場は、世界一美しいロケット発射場として知られる種子島宇宙センターのそばにある。経営面積は、食用米(コシヒカリ)7ha、WCS※1(タチアオバ)3ha、飼料用米(夢あおば)15haだ。計25haの栽培面積の内の5haは浦門氏の所有で、20haは島内の農家から借り受けている。それだけ地元で頼られる存在なのだ。
浦門氏に農家としてのキャリアをうかがうと「最初は、宇宙開発事業団(現JAXA)の下請け会社なんかに勤めながら、兼業農家を12年間やりました。以前はかんしょ栽培もやっていましたが、管理が大変なので水稲に一本化しました。水稲に専業化して今年で18年です」。兼業と専業、合わせて30年のベテランだ。
25haの水田の管理を1 人でやっているというから驚く。以前は安納いもをつくり、息子さんがインターネット販売などを担当されていたが、現在は勤めに出られている。また、奥様も会社に勤務されているので、農繁期だけご家族とアルバイトで対応しているという。農繁期以外はお1人での管理体制のため、さらなる省力化と労力軽減が求められていた。これが転機になったのだ。
「やはり防除作業が大変ですね。特に夏場は体力的にきつい。以前は、動噴のホースを100m以上引っ張って防除していましたが、次第に規模が大きくなってきたので、省力化を図りたいと考えました」。暑い種子島ではなおさらだ。そこで、種子島ではほとんど導入されていなかった産業用マルチローター(ドローン)MG-1を、2018年12月に導入された。さらに詳しくうかがうと「もともと、ヘリや航空機などが好きだったんです。最初は無人ヘリの免許を取るつもりでしたが、ドローンの登場で切替えました。まずはラジコンショップで購入したドローンで練習して、講習で免許を取得しました。
ヤンマーさんに決めたのは、トラクターの購入や整備などで、日頃からお世話になっている岩坪さん(ヤンマーアグリジャパン(株)種子島支店)の人柄が決め手ですよ」と、笑う。MG-1を使ってみて、どうだったのだろうか。「機体が練習機よりも3倍くらい大きいので、最初は戸惑いましたが、逆に大きいことで飛行は安定しています。
レーダーがあるので、電柱や竹などの障害物があると検知してくれます。送信機についている液晶ディスプレイで、速度や高度、飛距離、農薬の残量などがひと目でわかるのもうれしいですね。飛行軌道もリアルタイムで見えるんですよ。あと、1条目の散布が終わると、4メートル隣の次の条に自動で移動してくれます。目視に比べて精度が高いし、やり直しも必要ないので助かっています」と、非常に満足されているご様子だ。
MG-1の導入により、どれほどの効果があったのだろうか。「以前は動噴を使って、2名で1日に3~5haほど防除するのがやっとでしたが、MG-1導入後は、同人数で同じ面積を、半日で終えられるようになりました。作業スピードがアップしましたし、重労働から解放されたのはとてもうれしいですね。それに作業が大変で1回しか散布できませんでしたが、今年は2回散布することができました」と、省力化と労力軽減をご実感いただけたようだ。
来年はオプションの粒剤散布装置を使って除草剤も散布しようと考えています」と、さらなる挑戦に期待を寄せる。岩坪氏も「MG-1の空からの防除によって、コシヒカリで害虫の発生が少なかったんでしょうね。それにほかのお客様の話でも、空中散布を1回よりも2回防除する方が、防除効果が出ています」と、効果について口をそろえた。作業中にほかの農家さんが時々見学に来られるそうで、その際は「操作に慣れていない人にうれしい機能がたくさんついているので、おすすめしたいですね。講習を受ければそんなに難しくありません。小規模ほ場が点在するウチのほ場では、乗用管理機に比べるとメリットがあると思います。そのほかに、機体が軽いことで、1人で軽トラに積み込んだり取り回しが楽だというメリットもあります」と、推薦していただけているとのこと。うれしい限りだ。
最後に今後の展望についてうかがった。「防除作業はMG-1で省力化と労力軽減が図れたので、今後は田植え作業をもっと省力化したいと考えています。具体的には今ある田植機をオート田植機に更新したいですね。あと、これはまだ先の話でしょうが、MG-1が「リモートセンシング」とも連携できるようになったら、農業の『見える化』も考えられます」と、意欲的だ。とはいえ、基本的にお1人での作業は大変であることに変わりはない。
今後も同じ体制で続けられるのだろうか。「まだ具体的には動けていませんが、当然、後継者問題も解決したいと思っています。例えば、法人化して若い人が継いでくれればいいですね。今までの農業にはない『空から』防除ができるMG-1は、新しい人材のリクルートにも貢献してくれるのではないかと期待しています。そして、それが実現したら50haくらいの規模には拡大したいですね」と、笑顔で語ってくれた。
狭小田・中山間地域でも「空から」防除。