農事組合法人早崎農産
代表理事
早崎 長人様
- 地域 : 石川県白山市
- 作物・作業 : 水稲(約21ha)
- 密苗実証面積 : 0.6ha
- その他 : 慣行栽培
農事組合法人早崎農産
代表理事
「北陸・石川の魅力を、食を通じて全国の皆様に感じていただきたい」との思いから、自らつくった米を〈五領(ごりょう)のコシヒカリ〉のブランドで消費者へ直送しているのは、農事組合法人早崎農産代表理事の早崎さんだ。石川県白山市で、ご家族を中心に水稲21ha、(品種:コシヒカリ10ha、ゆめみずほ8ha、あきだわら3ha)麦種子5haなどを栽培している。
〈五領〉とは、現在の石川県白山市明島町を含む地域(旧蔵山地区)の昔の呼び名だ。同法人では、石川のおいしいお米や野菜を消費者に届けるために高精度で高能率な農業機械を駆使したり、生産方法にこだわるだけでなく、設備では除湿保冷庫を導入、注文を受けてから精米するなど、日々研究を重ね、丹精込めて育てた農産物をインターネットで販売している。
これまでの水稲の作付けは移植栽培のみで、苗箱への播種量は140g/枚、苗箱枚数は16~18枚/10a使っておられる。田植機には、ヤンマーのVP80をお使いのお得意様だ。先ほど、水稲作付けは移植栽培のみと言ったが、実は省力化に対する取り組みとして、これまでに一度、鉄直に取り組んだことがある。だが「ほ場状態や気候がうまくかみ合わなくて、収量が落ちてしまったんで今はやっていません」と、残念そう。なぜなら、省力化を求めるいちばんの理由が、労力軽減だからだ。「家族が高齢化してきているんで、なんとか苗箱の枚数を減らしたいというのがきっかけです」。そんな事情から苗箱枚数も、苗運搬作業も、苗つぎ回数も大幅に減る密苗にチャレンジすることとなった。家族思いの早崎さんだ。
密苗に取り組む多くの人が最初に感じるのは、やはり苗箱枚数の低減によるメリットだろう。早崎さんも、5月5日に行ったという播種作業について「播種機は2回通す必要がありましたが、慣行と比べて苗箱の数が格段に減ったんで作業が非常に楽にできました」と、笑顔で語ってくれた。
育苗期間は20日間弱。「かん水を少し増やしたぐらいで、ほぼ慣行通り」という育苗管理中も、「特に気を使ったり、苦労したことは何もありませんでした」とのこと。そして肝心の労力軽減にいちばん影響する移植については「苗つぎが少なくてすごく楽でした!あと、これは体感ですが田植えのスピードも早かったですね。たぶん苗つぎの回数が減ったからだと思います」と、納得のご様子。さらにその後については「植え終わった後、欠株が少し目立つ気がしていたんですけど、最終的に収量は慣行と変わりませんでした」。ほぼ満点と言ってもいいのではないだろうか。
補助の方の感想についてうかがうと「苗箱枚数が少ないからか、播種の時には『こりゃ楽だ~』と言ってました。でも移植のときは、もっと省力効果があったからでしょうか『やることがなくて暇や~』(笑)でしたね」。苗箱枚数は16~18枚/10aの慣行栽培に比べて、密苗の場合は8枚/10a。つまり苗箱枚数が1/2に減ったという、圧倒的なメリットをご実感いただけた。
とにかく、最大の魅力である〈苗箱枚数の大幅低減〉をご実感いただいいた早崎さん。次の一手はすでに決まっているようだ。「密苗の実証で、非常に手間が減って楽になったので、これからは密苗をメインにしていけたら良いなと思っています。規模としては、まずは5割ほどを目指したいですね」。なんと早崎さんは、具体的な目標まで出して今後のビジョンを熱く語ってくれた。
ただ今回は、播種機の仕様の都合で、苗箱1枚について2回播種する必要があったため、「それをどのように改善しなければいけませんね」と、課題もきちんと踏まえての選択だ。さらに「ウチは非常に柔らかいほ場が多いので、そんなほ場ではどうなるのかな…というのがちょっと不安です」とも。
密苗はまだまだ進化する可能性を秘めているし、地域への定着という意味でも、これからも試行錯誤が続くに違いない。今回の成功を足掛かりに、当地ならでは、同法人ならではの密苗の確立を目指してほしい。
実は、密苗が最終的に慣行と同じように見えることから、周りの人たちは密苗と慣行との違いがよく分からなかったようだが「ウチの取り組みがうまく続いていくようであれば、周りの人にもすすめたい」と、密苗の普及にも一役買っていただけるとのこと。
これからも、北陸・石川の食の魅力を全国の消費者に届けながら、同法人での成功事例が、また労力軽減の大きなメリットが、地域に広がるのを期待したい。
栽培のポイントやよくあるご質問など、初めて導入する方にもこれまで経験のある方にも役立つ情報をご紹介
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