有限会社黒澤農場
取締役
黒澤 彰典様
- 地域 : 石川県白山市
- 作物・作業 : 水稲(約50ha) / 大豆・大麦(3ha) / 小松菜・水菜・トマトなど(約4ha)
- 密苗実証面積 : 0.6ha
- その他 : 慣行栽培
有限会社黒澤農場
取締役
石川県白山市の日本海沿岸に近い平野部で、約50haの稲作を中心に転作作物約3ha(大豆・大麦)、施設野菜(小松菜・水菜・トマト等)約4ha、露地野菜(スィートコーン・キャベツ・ネギ等)約5haなどをつくる農業法人、有限会社黒澤農場。平成14年の設立以来、地域に根ざして安定経営を続けておられる。そんな同社のモットーは〈『安全』で『安心』できる農作物をお客様に届ける〉だというが、その思いを実現するために環境や品質への配慮はもとより、ベースとなる経営を支えるための省力化やスピードアップ、コストダウンなどに対する取り組みには前向きだ。
そんな取り組みのひとつが、今回はじめて導入した密苗だった。
黒澤さんによると「(条件により)これまでに直播は経験したことがありませんけど、疎植に関してはやったことはあります。多少株数を減らして細植えしてみましたけど、結局は苗箱を18枚/10aぐらいは使うので、省力化というカタチでは大きなメリットは感じませんでした」。そんななか、巷のうわさで「『苗箱の数が明らかに違う!』と聞いたんで、そんなに違うなら、一度やってみようかという思いではじめました」。今回の密苗の栽培面積は0.6ha、播種量は乾籾で280g/枚だ。
さて、はじめて密苗に取り組んだ黒澤さんだが、播種から育苗、移植に至る工程で何を感じ、また現場の声はどうだったのだろう。
「播種作業で感じたことは、(初体験なので)作業のペース自体は時間がかかりました。けど既存のやり方でできたので不安もなくて、その点については大きなプラスだったと思います」。慣行と大差はなく不安要素がないのであれば、後は慣れてしまえば作業はもっと早く終わるに違いない。
移植のタイミングについては、ヤンマーからのアドバイスが功を奏した。「苗床から出すまでの間、苗がデカすぎるかな?とも思ったんですけど、ヤンマーの担当の方が『これで、大丈夫!』と、言ってくれたので、じゃあとりあえず植えてみよう!ということでスタートしました。実は『若干、苗が細くなるのかな…』と心配していたんですけど大丈夫でした。移植後のほ場の風景も、慣行と比べても遜色なく、出来としては非常に良かったんじゃないかなと思います」と、うれしいお答え。
さらに密苗はたくさん播いて少しずつ精密に植えることから、苗つぎの回数が格段に減る。そのことについては「補助者がほんとうに楽だと言ってました。その分オペレータもスムーズに作業できて、非常に良かったですね。これまで慣行では、苗箱を20~22枚/10aぐらいでやっていて、運搬に人手を多く割いていたんですが、密苗だと、約9枚/10aに減ったので苗の運搬が減りました」。
作業全体を通しても、慣行に比べて仕事量が明らかに減っているので、スタッフからも『助かる』という声が多くて、非常に良かったですね」と、ご満悦だ。
密苗の播種から移植、収穫までを体験された黒澤さんに、今回の取り組みを振り返っていただいた。「とにかく、これといって不安は無かったと思います。(逆に良かった点は)生育的に順調にきたこともあって、収量も660kg/10aと非常に良かったし、品質的にも悪いところがありませんでした。やっぱりその点が良かったですね」。その魅力が省力効果だけでなく、収量と品質の良さというのは安定経営には欠かせない要素だ。
今回の取り組みを通して、黒澤さんの頭の中では密苗が徐々に大きな存在になってきたようで、今後の同社の展開をうかがうと「まだ計画段階ですけど、今年度から導入というカタチで、やっていこうかなぁ…という思いはあります」と、控えめながらも前向きなお考え。そこでもう一歩突っ込んで、具体的なお話しを聞いてみた。「えっ、面積ですか?(笑)そりゃ、できれば全部やりたいところですけど、ちょっとそこまでいけるかどうか…、いろいろ考えながら試行錯誤しながらになると思いますけど、少なくとも今の(水稲)面積の半分ぐらいを密苗でいければ、だいぶ違ってくると思うんで、そのあたりを目指しています」。黒澤さんの営農計画の中には、すでに具体的に密苗が入っているようだ。またご自身だけでなく周囲の方々に、密苗の魅力をお伝えいただくこともあるという。
巷のうわさ話からはじまった今回の密苗の取り組みは、安全で安心できる農産物をつくり続ける同社の将来にとって、とても大きな出会いになったに違いない。
栽培のポイントやよくあるご質問など、初めて導入する方にもこれまで経験のある方にも役立つ情報をご紹介
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