森 伸晃 様
- 地域 : 三重県津市
- 掲載年 : 2024年
- 作物・作業 : 水稲(約20ha)
お父様の跡を継いで就農された三重県の森伸晃さん。受け継いだ3haのほ場は、近隣農家からの請負によって5年で20haに急拡大し、草刈り作業が大きな課題となっていた。安全で効率の良い作業を目指してラジコン草刈機YW500RCを導入された森さんにお話をうかがった。
森さんの就農は2019年。お父様が体調を崩されたことがきっかけだった。少年時代から、田植えや稲刈りなどの手伝いをされることはあったものの、成人後はご自宅で外装業を営まれるようになり、本格的に農業に携わることはなかったという。「父が倒れて作業ができなくなり、必要に迫られて始めた形でした。最初は父の見よう見まねで取り組み、悪戦苦闘しましたが、次第に面白くなり、やがて就農を決断しました」。
お父様から受け継いだほ場は約3haだったが、作業面積は5年間で約20haに拡大した。増えた面積は高齢化と担い手不足が進む近隣農家から依頼された請負によるものだ。「父の代から使っていた農機では、増えたほ場に対応するのは難しく、トラクターを増車するなどで何とかやってきました。ほ場の管理は大変ですが、請負をすることが地元の農業を維持する一助になると思い、ここまで面積の拡大を進めてきました。今後もさらに増やしていく予定ですが、どれだけほ場が増えても、最初から最後まで手を抜かず、請負ったほ場をきれいに維持して、おいしい米をつくる。そんな思いでやっています」と森さんは意気込みを語る。
就農して直面した大きな壁のひとつが、夏場の草刈りだったという。
「ほ場のほとんどが請負のものなので、ただ米をつくっていればいいわけではありません。手を抜かず、きれいに維持するために、草刈りは特に気を使うところです。トラクター用のブームモアもあるのですが、トラクターが走れないところでは、人が入っていって刈払機で刈るしかありませんでした。これが大変な重労働で、刈払機での作業では、空調服を着ていても30分続けるのが限界でした。ひと通りの草刈りを終えるのに2週間ほどかかり、刈り終えたら最初に刈った場所がまた伸びているという具合でした。草刈りを頼んだアルバイトの方が熱中症になってしまったこともあって、悩みの種になっていました」。
暑さによる健康被害だけでなく、森さんの地域は中山間地域で斜面が多く、傾斜地や人の足では踏み込みにくい場所での草刈りも必要で、そうした場所での作業にはケガの危険も付きまとう。草刈りをアルバイトに頼むに当たっても、それらが懸念事項だったという。「どうにかしなければと悩んでいたところに、昨年、地元のヤンマーさんからYW500RCの実演会の案内を受けました。実演を見て、ラジコン操作で身体が楽だとか、草刈りの性能が高いといった点はもちろん魅力でしたが、何より45°の斜面をものともせず走る姿に惚れてしまいました」と森さんは笑う。
ひと目惚れで導入したというYW500RCの使い勝手を森さんにうかがった。「まずは、ラジコン操作できつい作業が劇的に改善されました。日陰から操作することもできますし、作業しながら水分をとるのも楽になりましたので、導入前は30分ごとに休憩を入れていたところが、一日中でも続けて作業できるようになりました。ノンストップといってもいいほどですね。感覚的なものですが、刈払機での作業に比べると、心身ともに負担は半分以下になりました」。
草刈りの性能や各種のアシスト機能にも満足されており、経営面でも効果を実感されているという。「丈が高めの草もよく刈れますし、バックしながら刈れるのもいいですね。草の量によって走行の速度が自動で変わる『快速制御』の機能も、操作しているこちらが気付いて速度を緩めたり、刃の高さを変えたりといった調整をするきっかけになり、機械に無理をさせることなく作業ができて助かります。導入前の草刈りは私と妻、アルバイトひとりでやっていましたが、作業の効率が上がり、私ひとりでこなせるようになったため、導入後は2人分の人件費を削減できました」。
獣害や虫害に対しても、抑止の効果を期待されているという。森さんのほ場は、そばに川が流れ、シカの糞やイノシシの掘り返した跡が多く見られる環境だ。「草刈りの仕上がりが良くなったことで、動物の寄り付きが少し減ったようです。カメムシなどの害虫も減ったなと感じています。獣害対策としては十分だとはいえませんが、虫に対しても薬はあまり使いたくないので、草刈りで被害を抑えられればと期待しています」。何よりも「惚れた」ポイントだという急斜面での作業についてお尋ねすると、森さんは熱を込めて語ってくださった。「実演会でも対応上限の45°に近い斜面での作業が見られましたが、実際に使ってみて、足では立つのも難しいような斜面を、楽々と横切りながら刈ってゆく姿に本当に感動しています」。
YW500RCへの森さんの評価はすこぶる高く、追加の導入も検討していると聞かせてくださった。「楽に、安心して草刈りができるようになり、さらに請負を増やしても、ほ場を維持できるめどが付きました。今後も『最初から最後まで手を抜かず、ほ場をきれいに維持して、おいしい米をつくる』という信念を曲げずに、請負元に喜ばれる仕事を続けます」。
ご先代である森さんのお父様は2023年にご逝去された。森さんは、農業を継がれてからの日々をこう振り返る。「子どもの頃から田植えや稲刈りといった田んぼの手伝いはしていたものの、父が倒れるという急な事情で就農したので、いざ自分が主体となって取り組むとなると、初めて経験することばかりでした」。 就農後、お父様は仕事を褒めることがなかったと森さんは笑う。「ただ、父も表にこそ出しませんでしたが、内心では喜んでいたように思います。私自身も、父のやってきた仕事を面白いと思うことができ、『うちの米はうまいな』と改めて思うこともできました」。
今後はYW500RCの増車だけでなく、スマート農業の技術を導入して経営改革に取り組み、野菜の栽培にもチャレンジしたいとのこと。草刈りの課題が解決し、森さんの展望は大きく広がっているようだ。 「うちで請負っているほ場の持ち主は、高齢で手が回らなくなったご近所の農家さんです。そういう状況の中で踏ん張って、さらにほ場を拡大し、地元の農業を守りたいと思っています」。
子どもの頃、お父様の運転するトラクターに乗って喜んでいたことを懐かしく思い出すという森さん。地元農業への責任感には、家族が耕し、暮らしてきた土地への思いが垣間見えるようだ。外装業も続けておられるが、それも自身の持てるものを惜しまず地域に提供する姿勢の表れではないだろうか。妻の美幸さんは「夫が就農を決めた時、子育てがもう終わっていましたので、不安なく背中を押すことができました。小学生の孫も農機が好きで、ヤンマーのトラクターを運転したがっています。あの子は農業を継いでくれるかもと、今から楽しみにしています」と語る。 これからも森さんの志は、ご家族にも支えられて、地元の農業を支えていくだろう。
草刈りの負担を大幅に軽減!