代表取締役
中森 剛志様
- 地域 : 埼玉県加須市
- 作物・作業 : 水稲(145ha)/小麦(75ha)/大豆(60ha)/子実とうもろこし(20ha)
大規模水稲栽培が盛んな埼玉県加須市で、水稲や小麦、大豆などを栽培する中森農産株式会社(以下、同社)。
日本の農業、食料安定供給などの未来を見据えて新たに普通型コンバインYH700Mを導入された同社の取り組みについて、代表の中森剛志さんにお話をうかがった。
関東平野の北部、埼玉県加須市を拠点とする同社は、20~30代中心の若手社員で組織するフレッシュな農業法人だ。代表の中森さんは高校時代に「農業こそが社会基盤である」という思いを抱き、東京農業大学に進んで農業生産について学ばれた。その後は、青果流通・飲食事業を立ち上げてビジネスの道へと進まれたが、2011年の東日本大震災がきっかけとなって営農を志された。
震災発生後すぐに支援に入った石巻で、インフラを遮断されながらも前向きな気持ちを失わない農村部の人々の姿に驚かされた中森さん。「田畑では食べ物がとれ、山には薪や水があり、トイレにも困らない。災害大国日本では、地方こそが有事の際の最大のセーフティネットであることを身をもって知りました」と当時を振り返る。
その地域が持つ最大の経営資源である農地を活用して利益を生み、地域を活性化させるにはどうすればよいか。熟慮の末に導き出された結論が「大規模水田農業」だった。「日本農業の要である水田農業は人材が育っておらず、世界の先進国と比べても将来性に課題があるのは明白。そこに参入するのが最もインパクトが大きいと考えました」と新規就農を決意。統計データを徹底的に調べ、さらに全国の農地をヒアリングして回った結果、都市圏に近く、新規就農者が農地を取得しやすかった加須市で営農を始められた。
水稲や小麦、大豆をつくってきた同社が普通型コンバインYH700Mを導入されたのは、2022年から着手した子実とうもろこし栽培がきっかけだ。近年、飼料高騰が続いており、その余波を受ける国内畜産業に貢献したいという思いも子実とうもろこし栽培を始める要因になった。
「YH700Mは、会社を立ち上げた時から農機の相談をしてきた内田農機さんからの提案で購入を決めました。コスト的にも無理なく導入でき、ヘッダーを変えれば大豆も刈れる点もポイントになりました」と中森さん。
「YH700Mのサイズ感は当社の営農規模にぴったりでした」と語るのは、子実とうもろこしの収穫作業を担当された同社の石川尚弥さんだ。コンパクトな機体サイズは、ほ場の出入口が狭くても操作がしやすく、また座席シートも上下・前後に調整できることもあってキャビンにもゆとりを感じられるという。
「特に操作性の良さは圧倒的だと思います。素直なハンドリングというか、こちらの思い通りにスルスルと動いてくれる感じがありますね」と、「乗用車感覚の操作」を目指して開発されたヤンマー独自の丸ハンドルに太鼓判を押された。他にも、収穫する作物を変更する際は、異物混入を防ぐために機械のこまめな掃除が欠かせないがYH700Mは脱こく前カバーをはじめ、機械各部が簡単に、かつ大きく開口するため※1、日々の掃除やメンテナンスの手間が軽減される点にも満足されている。
子実とうもろこしだけでなく、大豆の収穫にYH700Mを用いた際は、プラットフォームの底部に設けられた目抜き穴から土ぼこりがふるい落とされることで、汚粒が大幅に少なくなることを実感。脱こくの際にも「余分なものはしっかり取り除かれ、粒だけがきれいに出てくる」と、選別性能の高さも評価されている。
また、アタッチメントのコーンヘッダーの機能についても特筆すべき点があると石川さん。特に、茎葉部分をローリングカッターで切り落とし、雌穂(しすい)部分のみを脱こく部に搬送するという仕組み※2がもたらすヘッドロスの少なさを高く評価されている。「当社のほ場は雑草が繁殖しやすいのですが、このコーンヘッダーは『飲み込む』というより『こそぎとる』感じで、余計なものが詰まることが本当に少ないですね」。また、コーンヘッダーを装着したまま運搬用トレーラーに積み込む際には、機体水平制御の手動操作で車高を調整できるので、底部をこするリスクが軽減されるという、思わぬメリットも感じられたのだとか。
オペレータ目線から高く評価される一方で、経営者である中森さんは「私の知る限り、専用のコーンヘッダーが使える70馬力のコンバインはヤンマー以外にないはずです。価格はリーズナブルで操作もしやすく、新規に子実とうもろこし栽培を始めるにはぴったりの機械です。YH700Mのような機械がより普及し、子実とうもろこしを栽培する生産者が増えれば、飼料の高騰に悩まされる日本の畜産業にもプラスになるのではないでしょうか」と、YH700Mに専用アタッチメントがあること自体を評価された。
今後は子実とうもろこしに加えWCS(ホールクロップサイレージ)づくりも予定されるなど、耕畜連携のさらなる推進を目指されている中森さん。「当社は栽培作物や栽培方法にはとらわれず、飼料であれ食用であれ、柔軟に選択しています。直進アシストやドローンといったスマート化の強化を含め、その時々で最も高い生産性が見込めるように最適化することが『儲かる農業』には不可欠であり、その先にある地方活性化や食料の安定供給にもつながると考えています」とビジョンを語ってくれた。農業を大局的に捉える視点と、若いスタッフが生み出すエネルギーを武器に、日本の食糧生産の未来をリードしていく同社の成長を、今後も見届けたい。
大きな脱こく・選別部で、スピーディに、精度の高い収穫が行えます。