代表取締役
森 和彦様
- 地域 : 三重県鈴鹿市
- 掲載年 : 2022年
- 作物・作業 : 水稲(43ha)/大豆(40ha)/小麦(50ha)/菜花(3ha)/ごま(3ha)/子実コーン(3ha)
三重県鈴鹿市で土地利用型農業※を展開する株式会社モリファーム(以下、同社)は、スマート農機をいち早く導入し、労力軽減や作業効率アップを図っておられる。スマート農業のメリットについて代表の森和彦さんにお話をうかがった。
※土地利用型農業とは、広大な土地(ほ場の面積)を活用し、水稲などの穀類、加工原料用作物などの生産を行う農業生産方式。
三重県北部に位置し、土地利用型の稲作、野菜栽培が盛んなことで知られる鈴鹿市。同市に拠点を置く同社も、水稲、大豆、小麦を中心に、ごまや子実コーンなど幅広い作物を栽培しておられる。米は卸業者との契約栽培がメインで、主に給食などの業務用ルート向けに多収性の品種を栽培。同時に飲食店・個人向けに減農薬・減化学肥料の米も栽培されている。「販路によって実需者が求める品種を着実に栽培し、供給することがモットー」と語ってくれたのが、代表の森さんだ。
森さんが就農したのは今から約20年前のこと。水稲と麦を合わせて5haのほ場から始め、土地利用型農業の拡大とともに約28倍の142haまで営農規模を拡大してこられた。6次産業化にも取り組まれており、特にごまは、収穫から乾燥、選別までを機械化され、国産ごまとしては国内でもトップクラスの取り扱い量を誇るという。
2017年には法人化され、現在は5名の従業員を雇用。「他の生産者と比べても、スマート農機の導入はかなり早かったと思う」と、スタッフの労力軽減・作業効率の向上を図るため、積極的にスマート農業に取り組んでこられた。
現在はトラクター9台、乗用管理機2台、コンバイン4台、田植機2台を所有。特にオート田植機YR8Dは、スマート農機の導入率が高い鈴鹿地域の中でも最初期に導入され、愛用しておられる。誤差数センチというRTK-GNSS測位方式を採用するYR8Dは、直進・旋回を自動で行えるため「まっすぐ植付けることだけに集中する必要がないから、視界を広く保てるし、何より作業者の負担が減りました」と高く評価されている。
リモートセンシングで作成した生育状況データを活用して可変施肥機能も使用されており、生育の均一化や収量・品質の安定化はもちろん、ムダの削減を実感。「田植機がスリップした際も施肥量を補正してくれるから、肥料のロスが本当に減りました」と信頼を寄せられる。
また「ヤンマーの技術の中で一番」と森さんが評価される密苗に対応している点にも満足しておられ、計画的に苗が使えるようになり、苗の廃棄ロスが大幅に減少されたという。さらにオプションの箱施肥用剤散布機も導入。農作業を受託されることもある森さんは、密苗と慣行苗の両方を扱われる。1箱ではなく1反当たりの施薬量が設定できる箱施用剤散布機によって、その都度施薬量を計算する手間から解放されたという。
YR8Dだけでなく、YT470と2台のEG105にGNSSガイダンスシステムGFX750を搭載するなど、トラクターにも自動操舵を導入されている。野菜のうね立て時には、うねを等間隔につくることができ、播種を含むその後の一連の作業が効率的になったそうだ。
また代かきには最も効果を感じておられ、作業時間を1/3近く短縮することができたという。「代かきの自動操舵は、ほ場面積が大きいほど効果を実感できます。自動操舵を使わずとも、隣、隣と正確に進めていけば理論的にはズレることはありません。でも実際に水を張ったほ場では次の位置の見極めが難しいこともあり、同じ位置を2度かいてしまうことも多かったんです」と森さん。
自動操舵の導入後は、直進・旋回ともにズレがなくなり、労力・時間ともにロスを削減。また、スタッフに対するトラクター操作の指導・教育にかかる時間と手間が軽減されたことも、経営者である森さんにとってはメリットが大きかった。
他にも、2条飛ばしに旋回を大きくとるなどコース設定も簡単に行えるため、旋回に要する時間を最小限にとどめることができ、枕地を傷めることも少なくなったという。「当社にとって自動操舵はなくてはならない技術。先日の通信障害で一時的に自動操舵が使えなくなった時には何もできず、改めて価値を実感しました」。
積極的なスマート農業の取り組みによって作業効率を高め、順調に営農規模を拡大してきた同社。しかし「今後も地域で離農があれば当社が引き受けることはあると思いますが、それは私たちが計画できることではありません。これまで以上に多収性の水稲を増やしていくなど、あくまでも自分たちの目の届く範囲の中でやっていくことが理想です」と、今後は規模拡大よりも、農地当たりの収量をいかに増やしていくかにトライしていかれるという。そのため今後のスマート農機にも、より収益性の向上、経費の削減につながる技術が開発されることを期待しておられる。
さらに、将来は農産物の直売所を開設する計画もあるという。「農業は食べる人とつくる人の接点が少ない業種です。まだ具体的ではありませんが『こんなものが食べたい』『これがおいしい』という声を直接聞ける場所があれば」と語る森さん。消費者のニーズをつかみ、スマート農業に取り組むことによって最適な方法でカタチにし、供給する。そんな理想の農業の実現に向かって、今後も邁進していかれるのだろう。
経験と勘で行っていた作業が、誰でも簡単に、正確に