代表取締役 社長
永石 憲彦 様
- 地域 : 佐賀県多久市
- 掲載年 : 2022年
- 作物・作業 : 水稲(13ha)/麦(20ha)/大豆(8ha)/小豆(1.5ha)/玉ねぎ苗(1ha)
- 密苗導入面積 : 13ha
- 栽培品種 : 夢しずく、さがびより、ヒノヒカリ
佐賀県のほぼ真ん中に位置する多久市は、四方を山々に囲まれ緑豊かな盆地を形成している。米や麦、大豆、みかん、畜産を基幹作物としていて、農業が盛んに行われている地域だ。取材させていただいた株式会社永石農産のほ場は中山間地にあり、水田が段々と連なっている風景が特徴的。訪れた8月初旬は稲が辺り一面青々と茂っていた。
代表の永石さんは祖父の代から続く農家の3代目。一度は別の仕事に就かれたが22歳で就農して以来、年々規模を拡大されている。担い手として、安定した農業経営を目指すためには従来のやり方では難しいと考え、大型農機や新技術を積極的に導入されてきた永石さん。2019年に密苗を導入された理由は、作業者の負担軽減や省力化とコスト削減を期待されてのことだった。
密苗を導入されたきっかけをお聞きすると、「先輩農家がいち早く導入されていて、私も興味を持ち始めていた頃に、ヤンマーの担当者から密苗を提案され、自分もやってみようと思いました」と永石さん。「慣行栽培だった頃は15haの栽培面積で、年間3,000~3,500枚の苗箱を使用していました。育苗から田植えまでの一連の作業にかかるコストや労力を、少しでも削減したいと思い導入しました」と話してくださった。続けて、「年々、栽培面積が拡大している中で効率よく安定して生産するために、密苗は効果的なのではないかと思ったんです」と、密苗であれば抱えている課題を解決できると感じたという。
同社では5月下旬に育苗を始め、6月中旬に田植えを行う。収穫は品種ごとに時期が異なり、9月下旬に夢しずく、10月上旬にヒノヒカリ、10月中旬以降にさがびより、というスケジュールだ。密苗に取り組んでからの変化についてお聞きすると「苗箱数が極端に言えば半分に減りました」と永石さん。密苗導入後の使用苗箱数は約11枚/10aと、慣行時の約18~19枚/10aから10a当たり8枚減と大幅な苗箱数の削減に成功されている。なお、播種量は1箱当たり乾籾320gと、慣行時の約2倍を播種されている。
さらに、箱数削減に伴って費用面や作業者の労力面にも変化があった。「土代などが減りコストが約半分に減りました。苗を運搬する人手も以前は3~4人必要だったのが、2人くらいでできるようになりました」と、密苗のメリットを感じてくださっている。
密苗を始める際に育苗の方法を、プール育苗から露地でかん水チューブを使用する方法に変えたそうで「苗の生育の調整がしやすくなり、芽立ちも速いし生育も良くなりました」と永石さん。育苗管理で工夫されていることお聞きしたところ「慣行苗より高密度に播種している分、同じような感覚で育苗をすると苗丈が少し短い印象があります。苗箱にラブシート(保温シート)を掛けるのですが、1年目は早く剥がしすぎて苗丈が短くなってしまったこともありました。2年目以降は剥がすタイミングも分かってきて、今は植え付け時期ギリギリまでシートを掛けて苗丈を伸ばしています」続けて「路地での育苗は乾燥しやすいので定期的に散水するのですが、苗が高密度なのでムレやすいんです。病気が発生しやすくなるので苗を注視するようにしています」とポイントを話してくださった。
苗のこまめな観察など増やした工程もあるそうだが「苗箱数が減ったことで育苗管理の労力が格段に軽減されました」と喜んでくださっている。
特に密苗を導入して良かった点についてお聞きすると「苗箱の運搬作業です。中山間地なので水田が段々になっていて、場所によっては道と水田の高低差が2~3mあります。苗補充の際には道の上から苗を下ろさなくてはいけなくて、この作業が重労働だったのですが、苗箱数が約半分に減ったのでとてもラクになりました」と永石さん。作業の省力化に大きく貢献できていることが分かった。さらに「苗箱数が減るのでそれに伴う作業時間が短縮できるのも良いですね。育苗を始める5月中旬・下旬は、麦の刈取りや田植えの準備など、複数の作業が重なる時期なんです。多忙を極める時期に播種作業や育苗管理の時間を短縮して、空いた時間を他の作業に回せるのはとても助かっています」とメリットを感じてくださっている。
また、今期から直進アシスト機能を備えた田植機YR8DAを使用されての感想もうかがうことができた。「ひと言で『ものすごくラク』です。田植え作業ひとつをとっても技術と経験が求められますが、直進アシストがあればA点(始点)とB点(終点)を登録してスタートを押すだけで、真っすぐに作業してくれます。経験年数や性別に関係なく誰でも操作できるのは魅力です」と笑顔で答えてくださった。
永石さんは35歳と若手ながら、地域農業を支える担い手として農家の間で頼られる存在となられている。多久市でも人手不足問題は深刻で、高齢化による後継者不足で耕作放棄地は年々増加している。相談があれば引き受けるようにされているそうだが「今後ますます1人当たりの耕作面積が増えることは明白です。限られた人員や時間の中でいかにスムーズに生産性を向上させられるか」と使命感をにじませ、解決策を模索する永石さん。「規模を拡大しながら安定した生産を実現するには、従来のやり方では限界があります。その解決策の一つとして、密苗は最適な技術だと思います」と未来の農業を見据えながら力強く語ってくださった。
栽培のポイントやよくあるご質問など、初めて導入する方にもこれまで経験のある方にも役立つ情報をご紹介
4~8条まで、密苗にベストマッチな田植機