代表取締役
石島 和美様
- 地域 : 茨城県下妻市
- 掲載年 : 2022年
- 作物・作業 : 水稲/そば(約66ha)
茨城県下妻市の株式会社ライス&グリーン石島は、いち早くスマート農業実証事業に取り組まれ、農機の稼働状況をデータ収集し、データの閲覧・管理ができる営農支援サービス「スマートアシストリモート(以下SA-R)」を導入されている。作付け計画から日々の業務管理に至るまで、営農全般の効率化を果たされた代表の石島和美さんにSA-R導入の経緯や効果についてお話をうかがった。
石島さんが代表を務める株式会社ライス&グリーン石島(以下、同社)は、茨城県下妻市で水稲56haとそば10haを栽培する農業法人だ。「作物をつくるのではなく、作物が育つ環境をつくることが農業の本質」という考えのもと、作物が本来もつ力を最大限に生かす自然農法にこだわっている。1996年二本紀・今泉地区を拠点に営農をはじめ、2009年に法人化。以降も営農規模を段階的に拡大し、現在は石島さんを含む3名の役員が水稲栽培とそばの栽培、加工品といった事業を行い、2名の従業員を雇用している。
主食用米の国内需要が低迷する中、いち早く海外に目を向け米の輸出事業に取り組んできた同社は、「ハイブリッドとうごう3号」「ほしじるし」「ゆめひたち」といった輸出に適した多収品種を中心 に生産している。海外でのシェアを拡大するため、 より低コストで高品質、安定した営農モデルの構築を目指す同社にとって、なくてはならないツール になっているのがヤンマーのSA-Rである。
ヤンマーが提供するSA-Rとは、GPSと通信端末を搭載した農機から位置情報や走行距離などの稼働状況をデータ収集し、専用サイトからデータの閲覧、管理ができる営農支援サービスだ。同社では、2015年から農林水産省が実施した「農匠ナビ1000プロジェクト」に参画し、その際に担当者からSA-Rを紹介されたことをきっかけに、2016年にSA-R搭載のトラクター(YT5113)を導入。2019年には田植機(YR8D)、トラクター(YT5113A)、コンバイン(YH6115)と3台のSA-R搭載機を導入された。
石島さんは若い頃から「記憶より記録」の営農に取り組んでこられたが、事業が拡大し、ほ場面積が30haを超えた頃からデータ管理の作業が大きな負担になってきたという。「例えば、ほ場の管理をするときは大きな紙に印刷し、手書きで色分けを行っていましたが、数が多くなればどうしても間違いや漏れが発生していたんです」。それがSA-Rを導入されて以来、こうした状況が一気に改善されたという。
SA-Rを導入したことで様々な局面でメリットを実感しておられる石島さん。例えば、ほ場ごとの作業記録は、これまでは手書きで時間がとられる作業であったが、SA-R導入後は、機械の稼働状況や登録ほ場ごとにデータが蓄積されるようになり、その閲覧と操作がパソコンやスマートフォンの専用アプリから簡単に行えるようになったという。また、農機のエラー通知や稼働診断といったサービスによって農機のメンテナンスの時期がわかりやすくなったほか、広いほ場を管理されるうえでは、盗難の見守り機能がついていることにも安心しておられる。
さらにSA-R搭載のコンバイン(YH6115)の導入後は、収穫したほ場ごとの収量や水分量も測定・記録できるようになるなど、営農全般が大幅に効率化されたという。なかでも特にメリットを実感しておられるのは、「作付け計画の作成」だ。同社では、現在約120枚のほ場を管理しており、石島さんはその作付け計画を一手に担っている。前年栽培された品種や農作業の内容、収量といったデータを数あるほ場ごとに把握・分析し、次年度の計画を立てる作業には膨大な時間と手間が必要とされる。しかしSA-Rを使えば各種のデータがほ場ごとに簡単に記録でき、品種や収量に応じて色分けしてマップに表示することもできる。「導入前に比べて、データを正確かつ視覚的に把握できるようになりました」と笑顔の石島さん。
ほかにも石島さんが重宝している機能が「気象情報」だ。SA-Rには契約開始時からのデータが蓄積されるため、毎年の気温や天気といった詳細な気象情報も簡単に確認ができる。ほ場ごとの積算温度(気温、地温、水温などの毎日の温度を一定の期間について合計した値)が瞬時に表示されるため、「例えばコシヒカリの出穂までの積算温度は1000℃とされているので、その年の出穂日さえわかれば、おおよその収穫日が予測できるようになりました」と満足しておられる。
また、作業にかかった時間も農機が稼働した時間から自動で記録されるため、データから作業時間が短縮されたことがわかれば、従業員のスキルが向上したことが把握できたり、逆に時間かかっている場合は問題発生の可能性を発見できるなど、個々のスキルの可視化や業務上のフォローも各段にスムーズになったそうだ。
入社1年目のスタッフにとってもSA-Rは欠かせないツールとなっている。毎朝のミーティングではその日担当するほ場の場所や面積、作業内容の確認にSA-Rを活用し、作業中も自分が今どのほ場にいるのか、何をすべきなのかがスマートフォンからいつでも確認できるという。
現在、米の輸出事業に注力されている同社では、海外市場で勝負できる価格競争力をもった米の生産に取り組んでおられる。「農地集約」も進めており、これまで茨城県の農地中間管理事業を活用して二本紀・今泉地区の約300か所に点在していたほ場を約120か所に集約された。そのため、ほ場を区切る畦畔は除去され、一枚当たりのほ場区画が拡大することで1回当たりの農作業の効果も高まり、品質を落とさず人件費を抑制することができた。
また、「農地集約」は作業効率の向上だけでなく、SA-R上の管理工数の削減にもつながっているという。例えば、ほ場1枚ごとに登録していた項目は、ほ場の数が減れば減るほど登録の手間が軽減される。こうした管理・農作業の効率化とコスト削減によって価格競争力を高めている石島さんは、今後も「SA-Rを活用したスマート化」と「農地集約」をさらに推進されるという。「長く続く米価の低迷を解消し、国内だけでなく世界で評価されるような価値のあるお米を育てていきたいと思います」と、意欲的な石島さん。今後もより高い付加価値をもったお米づくりに邁進されるのであろう。
ヤンマーの農業IoTが新しい農業のカタチをつくりだす。