お客様事例紹介

個人専業農家 樋口 直行様〈密苗〉

個人専業農家

樋口 直行様

  • 地域 : 宮崎県宮崎市
  • 掲載年 : 2022年
  • 作物・作業 : 水稲
  • 密苗導入面積 : 食用米2ha、加工用米12.5ha
  • 栽培品種 : ヒノヒカリ、おてんとそだち、宮崎52号、み系358他

密苗に取り組んで5年、省力化と収量増を実現。

早期作から普通期作と幅広い作型に密苗を導入。

宮崎県東諸県郡国富町は、宮崎市内から車で20分ほどのピーマンやキュウリのビニールハウスが立ち並ぶ農業が盛んな地域。
大きな倉庫には巨大な乾燥機と、真新しいヤンマーのトラクター、田植機が並ぶ、地域をけん引する若手農家の樋口さん。樋口さんを含むご家族4名と従業員4名の8名で水稲栽培と水稲の作業請負をされている。
水稲栽培の作型は、宮崎県の温かい気候を利用した早期作(播種2月中旬、田植4月上旬)と普通期作(播種3回:5月初旬・5月下旬・6月初旬、田植5月~6月末)を行っている。5年前にヤンマーからの紹介で密苗を知り、現在の作付面積14.5haのうち早期作4.5ha、普通期作10haにおいて密苗で栽培している。

密苗導入により、苗箱数は半分に。播種回数も大幅減少。

樋口さんは2連棟のハウスで育苗されており、どうしても苗を置く場所が限られてしまうとのこと。慣行苗の時は4,000枚くらい播いていたのが、密苗に変更後半分の約2,000枚に減り、かなりのスペース削減に成功された。「普通期作は今まで播種した育苗箱を育苗ハウスに置ききれず、品種によっては数回に分けて播種していたのですが、それが1回で済むようになりました」と、樋口さんが感じた密苗導入の効果として、苗箱数の半減と播種回数が減少したことをあげてくださった。

密苗の育苗管理のポイントは、発芽時の育苗シートを外すタイミング。

特に密苗の育苗管理のポイントについてお聞きしたところ「宮崎52号など早期作の場合、播種後、苗箱に育苗用反射シートを被せ、さらにその上にハウスのビニールを被せます。そしておよそ5日でビニールを外し、1週間後、芽が3㎝程度で苗がうっすら緑色になってから育苗用反射シートを外します。ハウスのサイドは閉めたままです」「ヒノヒカリなど普通期作の場合、育苗時期が6月にかかり気温が上がるので、育苗用反射シートだけを被せます。およそ5日間で芽が2~3㎝になったら育苗用反射シートを外します。芽がまだ伸びていない場合は、病気が出ないように殺菌剤を散布して、再度育苗用反射シートを被せます。1~2日待って、芽の長さを調整しています」と、作期や品種で管理方法を分けられているとのこと。「品種によっても芽の伸び方が異なります。例えばおてんとそだちは伸びやすいので育苗用反射シートを早く外しますし、ヒノヒカリは逆に伸びにくいので育苗用反射シートを長めにかけておきます。育苗ハウス内の苗の置き場所も品種によって決めています。伸びやすい品種はハウスの温度の低い手前に、伸びにくい品種は温かい奥に置くなど工夫しています」と、ポイントは発芽時のきめ細やかな温度管理であると教えてくださった。

密苗栽培は省力化と低コスト化が目に見えてわかる。

「慣行苗の苗管理は水管理がすごく大変で、今までは人に頼んで水やりをしてもらっていました。まずその必要がなくなりました」「さらに田植えの時、今までは苗を1日に軽トラ2台で運んでいましたが、それが1台で済み、運ぶ量が半分でよくなりました。苗を運ぶ人手がいらなくなった分、苗を渡す作業の人を増やせ、ノンストップで苗を補給できます。6条の密苗田植機なら15aくらいは苗補給しなくてもよく、田植えが早くなりました」「結果として田植え時間の短縮にもなりますし、人件費削減にもつながっています。田植えの時補助してくれる父も密苗に前向きです」と密苗導入には目に見える効果があることを熱く語ってくださった。

密苗は植えやすく、密苗田植機は欠株なく植えてくれるので補植回数もぐんと減る。

樋口さんに密苗と慣行苗の差をお聞きすると「密苗はすごく植えやすいですね。種を多く播いている分、根が張って土がしまっているので、苗がすごく安定していて崩れにくいです」また密苗田植機を使って密苗を植えた感想については、「慣行苗を植えるとちょっと植え付けが薄くなることがありましたが、密苗だとしっかり植えていくので、欠株で株間があくことはあまりないです。10a当たりの苗箱数は慣行苗の時は22~23枚くらい使っていましたが密苗だと10枚いらないくらいになったので、慣行苗の半分以下です。」とのこと。

収量は慣行苗の時よりも増収。

慣行苗と密苗との収量の違いについてお聞きすると、「慣行苗の時は、結構欠株が多かったので、補植するのが大変でした。密苗に変えてからは欠株が減って、その分収量は上がりました」「密苗にして、ヒノヒカリだと玄米で10a当たり480~510kgくらい、み系358のような多収性品種だと10a当たり700kgくらいは獲ります」とのこと。
九州地域で問題となっているジャンボタニシの被害についてお聞きすると「この地域でもジャンボタニシは問題になっています。ただ、密苗にしたからジャンボタニシの食害にあいやすいということはないです。ジャンボタニシの食害を受けるのは特に田の四隅が多くて、水深の深いところです。それは慣行苗も変わりません」とのこと。
密苗に取り組んで5年の経験を踏まえた上で密苗が収量増につながっているとお答えくださった。

作業請負でも密苗を希望する方が増加している。一度やれば密苗の良さはわかるはず。

地域における密苗の広がりについては「うちで作業請負する時は、うちで密苗を作ってうちで植えているのですが、これからは密苗でやってほしいという方が徐々に増えています」「田植えの時は地主さんに補助をお願いしているのですが、やはり苗運びや苗補給の作業が慣行苗の半分になって楽になり助かるという声が多いです」「これからは密苗になると思います。密苗導入はいろいろ心配もあるかと思いますが、まず一回やってみることですよね。やってみたらもう本当に良いですから」と実感を込めてお話いただけたのが印象的であった。

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