2014.11.19

佐藤可士和が語る「次の100年に向けて踏み出した“はじめの一歩”」

未来を指し示すコンセプトモデルとしての
「YANMAR FLYING-Y BUILDING」

新社屋ビルは「YANMAR FLYING-Y BUILDING」と名付けられました。名付け親である佐藤さんいわく「いわばそれ自体がヤンマーテクノロジーのコンセプトモデル。ヤンマーが掲げるビジョンのシンボルであり、ベースキャンプ」。このビル自体が、ヤンマーの100年先を見据えた姿を表したもの。次の100年を支えるテクノロジーを生んでいく取り組み「YF2112」を象徴する存在です。

――「YANMAR FLYING-Y BUILDING」が象徴するヤンマーの次の100年への取り組み、「YF2112」についてお聞きしたいのですが。

佐藤 ヤンマーのDNAを次の時代に活かし、次の100年を支えるテクノロジーを生んでいく取り組み。それが「YF2112」です。ヤンマーのミッションステートメントは、”自然と共生し、食料生産とエネルギー変換の分野で持続可能な社会を目指す”というものです。「食」と「エネルギー」。それはまさに未来に向け、社会の持続可能性の中心をになう産業です。そこで、そのテクノロジーもより大きなビジョンのもとに開発していかなければならないという考えから、「YF2112」という旗印を掲げました。これからの社会の課題に対して、プレミアムなテクノロジーでソリューションを生む取り組みを、「YF2112」というシンボルに託して行っていこうということです。プレミアムブランドプロジェクトからすべてがつながっています。

――先ほどのお話につなげると、社屋そのものをメディアとして使うということでしょうか。

佐藤 そうですね。これをプレゼンテーションとして使わない手はありません。日本には「行間を読む」「暗黙の了解」といった、ハイコンテクストなカルチャーが伝統としてあります。それゆえに、コミュニケーションの戦略やプレゼンテーションの視点が欠けている側面もあると思っています。企業のミッションのような背景のあるメッセージは本来、説明が不可欠です。伝えたければ自己紹介をしないといけない。

このビルこそは、ミッションステートメントを体現したものです。そのオープンを、テープカットして、くす玉がポンと弾けるだけで終わらせてしまうなんて、あまりにもったいない。100年続いている企業は、なぜ自社が100年間、顧客に支持され続けてきたのかを理解しているはずです。一世紀にわたってブレない価値を提供し続けてきたからこそ、存続してきた。であるならば、これから先の100年間も以前と変わらず、確かな価値を目に見える形で提供していくことが、その企業にとっての義務といえるでしょう。

――「YANMAR FLYING-Y BUILDING」では、100年先に向けたヤンマーのどんな姿を見せてくれるのでしょうか。

佐藤 「食料生産とエネルギー変換」は、これからの地球にとって極めて重要な課題です。「YANMAR FLYING-Y BUILDING」ではその課題に対するソリューションを提示しています。まずはビルの年間のエネルギー消費によるCO2排出量がゼロとなるビル”ZEB”(ゼロ・エミッション・ビル)を目指します。そのために、ヤンマーのテクノロジーを活用する。たとえばガス・コージェネレーションシステムや太陽光発電といった、そのままずばり、エネルギー変換を実践する機能。建物の構造自体も熱負荷を遮るように設計されています。外側からは目にも優しい巨大な緑化壁面を設置しており、梅田の街を歩く人たちにも、このビルが自然との共生を目指していることが伝わるでしょう。

また、プレミアムブランドプロジェクトで、食の担い手である生産者を応援し、食材や料理を通じて消費者と結び付けてきた「プレミアムマルシェ」の取り組みもカフェ・レストランという形で“見える化”されます。はじめは社員食堂として、ヤンマーの社員自ら率先して食の未来を考えながら利用してもらい、ゆくゆくは一般公開される予定です。

ヤンマーが世界に誇る最新の環境技術を結集し、ノウハウを実践したこのビルは、いわばこれ自体が未来の方向性を指し示すコンセプトモデルなのです。

次の100年を支えるテクノロジーを生んでいく取り組み「YF2112」

再びミッションステートメントに立ち返ります。私たちが掲げた「食料生産、エネルギー変換における課題を自社のテクノロジーで解決する」というミッションを具体的に推し進めるため、100年先の未来を見据えた技術開発の取り組み「YF2112」がはじまりました。これからの100年、事業環境も厳しくなることでしょう。だからこそ、企業に求められる役割を社会的視点にまで高め、確かな価値を提供することが、100年先のヤンマーにつながります。

――佐藤さんは、100年後の社会をどのように捉えられているのでしょうか。

佐藤 おそらく自分は生きていないであろう世界を想像するのは難しいですが、エネルギーの枯渇、食糧難……地球レベルでの問題を思い浮かべずにはいられません。だからこそ、100年先の未来へ向けて、環境問題に取り組む企業には素直にがんばってほしい!と思ってしまいますよね。

食と農業、そしてエネルギーについての意識もどんどん高まっていくでしょう。間違いなく、これからの世界で必要なのは「食料生産とエネルギー変換」に関わる問題を解決していくことです。プライベートな話ですが、子どもが生まれてからもっとも変わったのが“食”に対する関心でした。人は口から入るものによって、すべてができている。この当たり前の事実とあらためて向き合った時、自分の子どもに何を食べさせるべきなのかを真摯に考えるようになりました。食やエネルギーの問題解決に求められるテクノロジーとは何か。漠然とそんなことを考えている時に、山岡社長から声をかけていただいた。だから、僕にとってこの仕事は、来るべき時に来るべきものが来た、と言えるのかもしれません。

――YF2112ではまさに、ヤンマーの100年先の未来へ向けたプロジェクトを行うことになります。

佐藤 100年先の世界が、どうなっているのか。そんなことは誰にもわかりません。けれども、どんな世界にしたいのかと思い望むことはできる。そのビジョンに従って、行動することもできる。だから、100年先を思い描いたミッションステートメントがとても大切なのです。僕も実際に100年先を意識してミッションステートメントを読み込んでみると、字面だけを読むよりも、目指しているものごとへの理解が深まりました。ヤンマーが取り組んでいる技術開発の意味もまた、くっきりと見えてくるようにもなりました。「YANMAR FLYING-Y BUILDING」が体現している、資源循環による持続可能性への取り組みの価値も、今では自分のこととして理解し、考えています。

――ミッションステートメントやYF2112は、100年先を見据えた行動規範と捉えることができますね。

佐藤 そうであり、それだけではありません。ここまで考えていることを、世界に向けてプレゼンテーションすることはヤンマーにとっての義務なのです。ヤンマーが持つプレミアムなテクノロジーは、他の企業や組織と協業することにより新たなイノベーションを産むはずです。そうしたイノベーションの連鎖を引き起こし、地球規模の問題を解決していくこと。それこそが100年先の世界に対して、ヤンマーが果たすべき役割でしょう。

――何より社員の意識が変わってきそうです。

佐藤 社内外の意識を変えることこそがブランディングの本質です。ミッションステートメントにより社員の意識が変わり、意識の変わった社員の行動が変わる。結果として社会のさまざまな問題が、ヤンマーの持つ総合的なテクノロジーによって解決されていく。YF2112が見据えているのは、そんな未来像だと僕は信じています。

2012年からつづくプレミアムブランドプロジェクト、そして2112年に向けて始動したYF2112について、プロジェクトのクリエイティブディレクターである佐藤可士和さんにお話をうかがいました。「YANMAR FLYING-Y BUILDING」のお披露目は、次の100年に向けて大きく踏み出していくヤンマーの最初の一歩となります。次の100年を見据えて、ミッションステートメントの実践、より豊かな社会の実現に向けて変わりゆくヤンマーに、ぜひご期待ください。

プロフィール

クリエイティブディレクター / SAMURAI 代表

佐藤可士和 Kashiwa Sato

1965年 東京生まれ。
博報堂を経て「SAMURAI」設立。国立新美術館のシンボルマークデザインとサイン計画、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略のクリエイティブディレクション、セブン-イレブンジャパンのブランディングプロジェクト、「カップヌードルミュージアム」のトータルプロデュースなど、ブランドアーキテクトとして対象物の本質を見抜いて研ぎすます表現で多方面より高い評価を得ている。 進化する視点と強力なビジュアル開発力には定評がある。 2012年からヤンマーのブランド戦略の総合プロデューサーを務める。

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