「究極の育成型クラブ」で
“原石”たちが描く青写真
『育成のセレッソ』を掲げるクラブにおいて、アカデミーからの人材供給は重要なポイントとなる。特に今季、WEリーグに初参入したセレッソ大阪ヤンマーレディースは、新加入のインドネシア代表、ザーラ・ムズダリファを除く全選手が育成組織出身。チーム編成を担当した佐伯真道レディース事業部長も「究極の育成型クラブ」と胸を張る。『フューチャー論』と題した今回の座談会では、20歳の若さで副キャプテンを務める荻久保優里、その一学年下の米田博美、現在高校2年生の栗本悠加が登場。男子トップチームでルーキーイヤーを戦う大迫塁、阪田澪哉、木下慎之輔とともに、和気あいあいとした雰囲気の中で、現在の思いや、今季成長したこと、将来成し遂げたい目標まで、現在と未来を余すことなく語り合った。(取材日:2023年10月22日)
初対面だと聞いているので、まずはそれぞれの紹介からお願いします。
阪田:(大迫)塁は高校選手権とかで有名になっていますけど、普段はそのときのイメージではないです。ちょけますし、だいぶ関西のノリに馴染んできました(笑)。
木下:結構、ボケますね(笑)。
大迫:(木下は)めちゃくちゃ猫を被っています。変な子ですよ。急に叫んだりします(笑)。
阪田:寮ではヤバいですね。ただ、先輩にはその姿を見せません。
木下:普通に真面目にしています。
大迫:自分だけよく見せようとする(笑)。
大迫:(阪田)澪哉はプレーも性格も奔放です。自分を出すタイプですね。
木下:塁と一緒で、澪哉も自分から前にいくタイプです。
レディースの3選手もお願いします。まずは、一番年下の栗本選手はどんな性格ですか?
荻久保:レディースに上がってきたときは「静かな子かな?」と思っていましたが、結構、先輩にも喋りにいきます。サッカーでも自分から仕掛けていくし、ガンガンいく印象です。
米田:天然なところもあるし、しっかりしているところもあります。
米田選手はどうですか?
栗本:引っ張っていってくれる先輩で、頼りになります。
荻久保:サッカーでは、守備で強くいける選手です。いい選手だなと思います。プライベートでは、先輩から愛されているなと感じます。結構、イジられているので。
大迫:俺と一緒か!
荻久保:たぶん、違うと思う(笑)。
全員:ハハハ(笑)。
荻久保選手は、大迫選手、阪田選手、米田選手の一つ年上ですが、チームの副キャプテンです。
阪田:すごいですね!
栗本:話しやすいし、頼りになります。プレー面でもいろいろと教えてくれます。
米田:冷静で、落ち着いていて、しっかり者という感じですね。
互いの試合を観たり、意識したりする部分もありますか?
荻久保:自分たちは結構、トップの試合も観るので、同年代の選手が活躍していると、自分たちも頑張ろうと思います。
栗本:自分も見ます。好きな選手がレオ・セアラ選手なので、注目して見ています。プレースタイルが好きです。
荻久保選手や米田選手は、特によく観る選手はいますか?
荻久保:私は背番号が7番で、「男子で7番は誰かな?」と思って観たら上門(知樹)選手でした。そこから気になってプレーも観ていたら、好きになりましたし、うまいと思います。
米田:同じポジションの鳥海(晃司)選手です。落ち着いていて、プレー面も参考になります。
大迫:自分もレディースの試合はYouTubeで見ました。
阪田:僕は、実はレディースの百濃実結香選手と小学校のときにチームが一緒でした。自分が4年生のとき、百濃選手が6年生で、一緒にプレーもしていました。いまもプレーを見ていますし、リスペクトしています。
スタイル的にも同じドリブラーですね。
阪田:当時から、男子の中でもめちゃくちゃうまかったです。
木下選手は同じセレッソのアカデミー出身ですが、レディースの試合は観ますか?
木下:あまり観られてはいないですが…ずっと強いイメージはあります。アカデミーのとき、ガールズの練習に参加したことがあるのですが、「うまいな」という印象を抱きました。
荻久保・米田:ウソや(笑)。
栗本:(木下は)レベルが違いました。
木下選手は、セレッソのアカデミーに入ったきっかけはなんですか?
木下:小学生のころ、エリートクラスのセレクションに受かって、その流れでジュニアユースに入りました。
米田選手と栗本選手は奈良県出身ですが、セレッソのアカデミーに入ったきっかけはなんですか?
米田:小学校のチームの監督から紹介してもらって、練習に参加することになりました。楽しかったし、うまい選手が多くて、自分もうまくなりたいと思い、セレクションを受けることにしました。中1から入りましたね。
栗本:自分は親に勧められて練習に参加して、レベルが高く、入りたいと思い、セレクションを受けました。博美さん(米田)がいることも知っていたので、その影響もありました。私も中1から入りました。
荻久保選手はいかがですか?
荻久保:小6まで男子チームでやっていて、中学からは女子チームでやりたいと思いました。「関西だとどこがあるかな?」と考えたときにセレッソがあったので、私もセレクションを受けて中1から入りました。
入った当時の印象は覚えていますか?
荻久保:年齢に関係なくみんなで話せるし、楽しくて明るい印象を受けました。
米田・栗本:同じです(笑)。
木下:環境のよさを感じましたし、練習を重ねるたびにうまくなる喜びもありました。
大迫選手と阪田選手は、セレッソから声がかかったときはどんな思いでしたか?
大迫:都丸さん(都丸善隆スカウト)に中3の国体から見てもらい、高2でセレッソの練習に参加したとき、キヨさん(清武弘嗣)がめちゃくちゃうまかったのを見て、「ここでサッカーをしたい」と感じてすぐに決めました。
阪田:僕は高2の選手権が終わったあとにオファーをもらいました。早い段階で声をかけて下さったので、自分もすぐに決めました。僕が練習参加したときは、チームがアウェイ戦に行っているときで、残っている選手と練習をしたのですが、たまたま奥埜(博亮)選手がいて、「うまいな」と思ったのが最初の印象です。
木下選手は、高校サッカーはどう観ていましたか?
木下:注目されているのがうらやましいなと思って観ていました(笑)。選手権で活躍している姿を観ると、「いいな」と。
現在の3選手の関係性はいかがですか?
阪田:意識はしていますけど、ライバルというより「一緒に頑張ろうぜ」という感じですね。
大迫・木下:そんな感じですね。
それぞれの現在地。
プロの舞台で糧にしていること
プロの世界で揉まれ、もがきながら1年目を戦っている男子トップチームの大迫、阪田、木下。レディースも今季からWEリーグに舞台を移し、プロとしての戦いがスタートした。環境が激変した中で、自身の特長をどうチームに還元していくか。最初は難しさも感じつつ、時間の経過とともに少しずつ順応。それぞれ言葉の端々から、着実に成長している様子が伝わってきた。そんな6選手の現在地に迫る。
ここからは、現在の様子についてうかがいます。男子の3選手は高校からプロになり、レディースも今季WEリーグに参入。環境が変わった中で、伸びていると感じていること、ここを伸ばしていきたいと感じていることなどはありますか?
阪田:はじめは緊張して自分の特長を出せなかったのですが、徐々に先輩とも話せるようになり、日々成長していると感じています。いつ試合に出てもいいように準備はしています。
大迫:自分も最初は全然、我を出せなくて、うまくいかないことも多かったですが、とにかく先輩に話を聞くことを大事にしています。いまだったら、練習後に(鈴木)徳真さんがジョギングしているところに「横、失礼します」と言って、いろいろな話を聞いています。それをプレーで表現することを心がけていて、最近になってようやく自分を出せてきたかなと感じています。
阪田選手は先輩に話しかけたりしますか?
阪田:優しい先輩が多いので、皆さん接しやすいです。最近では、喜田(陽)選手がずっと喋ってくれます。普段の距離感が近くなれば、プレー中も会話が増えたり、いい影響が出たりすると思うので、先輩と話すことは大事だと思います。
木下選手はケガで別メニューが続いていますが、先輩と接する機会はありますか?
木下:リハビリでキヨさんとずっと一緒でした。そこでいろいろな話をしてもらう機会は多かったです。ケガのことやリハビリについても聞きましたし、鼓舞してもらって、支えてもらっています。
栗本:私も最初のころは自分を出せていなかったのですが、少しずつ慣れていくにつれて、自分の特長を生かして、自分のプレーも出せるようになってきました。最近の課題は、もっと決定力を高めることです。
先輩とのコミュニケーションはいかがですか?
栗本:みんな優しくて、いい人ばかりです。オンとオフが全然違うので、接しやすいです。
米田選手と荻久保選手は成長している実感はありますか?
米田:WEリーグを経験された先輩方が戻ってきて、いろいろな要求やアドバイスをしてくれます。それにプレーで応えられるように、という思いで練習していますね。自分の持ち味であるビルドアップ、落ち着いてボールを回すことはもっと意識してやりたいです。プレー中は、同じポジションの筒井梨香さんや、(荻久保)優里ともよく話します。
荻久保:今年になって変わったと感じる部分は、全体の質です。今年の2月から新チームを立ち上げて、監督がトリさん(鳥居塚伸人監督)になってから、サッカーを戦術面で考えてプレーすることが増えました。そこが一人ひとり、成長しているところだと感じています。
それぞれ、プロの公式戦を戦って何を感じましたか?
阪田:ホームの札幌戦(J1第7節)で初めて出させてもらったのですが、その前に出たルヴァンカップの京都戦(第3節)とは違いました。リーグ戦は、「ここで何ができるのか」という本当の力が試されると感じました。札幌戦で自分は何もできませんでしたが、最近は練習試合で少しずつ結果も出せています。カテゴリーは下ですが、練習試合から緊張感をもってプレーすることを意識していますし、次、リーグ戦に出る機会があれば、以前よりもっと力を発揮できる自信はあります。
大迫:公式戦はまだ少ししか出ていないので、もっと出たいですね。神戸とのステップアップリーグでも、自分のやりたいプレーが出せましたし、チームメートも自分のよさを引き出してくれています。その上で、ゴールにつながるプレーをもっと増やしていきたいです。
お二人とも、春先とは言葉の力強さがまったく違います。レディースの3選手は、舞台が変わった中で感じたことは ありますか?
米田:プレースピードや強度は全然違います。(WEリーグの選手は)個人戦術も一人ひとりがしっかりしていると思いました。
荻久保:博美が言ったように、違いもありましたし、通じるところもありました。それをやり続けていけば、リーグ戦でも戦っていけると思います。
栗本:プロとしての覚悟と責任が、相手から感じられました。自分も、もっとチームに貢献したいという思いが強くなりました。
荻久保:自分たちが疲れている時間帯で(栗本が)交代で入ってきたら、相手からしたらイヤだと思います。そこでしっかりと点も決めてくれることを期待しています。
栗本:頑張ります。
自分がこのクラブを引っ張る。
若人たちの目標とこれから
今後のチームを支えていく6選手。最後は将来の夢や、選手としての理想像、サッカーを続ける原動力など、より深く内面に迫った。それぞれが熱い思いをぶつけ合った中で、「サッカーが好き」「タイトル」の二つは男女ともに共通する思いだった。「自分が中心となってチームを引っ張る」その日まで、成長の歩みを止めることはない。
最後は未来の話をしていきます。今後のセレッソを支えていくであろう皆さんは、どういう存在になって、どんなプレーでチームを引っ張っていきたいですか?
大迫:自分はリーグ戦で優勝したいです。今年も途中まで優勝争いをした中で、最後は(J1第28節で)神戸に負けて難しくなりました。優勝するチームは、ああいう試合で勝つチームだと思います。まだセレッソにはそれが足りません。1年かけてチームを作ることは、昨年も神村学園高(鹿児島)でキャプテンをしてすごく感じました。プロになって満足してしまう選手もいるかもしれませんが、戦うなら絶対に優勝したほうがいい。本当に優勝したいです。そのために力をつけて、近い将来、チームの中心になりたいといまは強く思っています。
全員:(拍手)
阪田:自分たち若手の中でも、「自分らがセレッソにいる間に優勝しよう」という話はしています。いま、塁も言ってくれましたが、優勝したいですし、そのときに中心選手としてプレーしたい気持ちはあります。アタッカーのライバルは多いですが、いつ試合に出てもいいように準備しつつ、出たときの結果も意識してやっていきたいです。
木下:最終的には得点王を狙える選手になりたいです。まずは先発争いに入って、勝ち取れるようにします。ケガで離脱している期間も大事にして、復帰したときにしっかりとプレーできればと思います。
レディースの3選手は、WEリーグ参入1年目の今季をどんなシーズンにしたいですか?
荻久保:今までなでしこリーグで戦っていたときは、自分の成長だけを考えてプレーすることが多かったですが、プロチームとしては、何より結果が大事になってきます。チームのことを考えてプレーしたり行動したりすることを意識して、この1年、チームでしっかりと成長していきたいと思います。
栗本:チームのために走れたり、得点できたりする選手になりたいですし、「コイツを出さないと勝てない」と思われるような選手になっていきたいです。
米田:WEリーグ1年目に「旋風を起こす」とチームで話しています。もちろん、厳しい戦いが続くとは思いますが、目の前の試合に勝つために、個人、チームで100%を出せるように、練習から全力でやりたいです。私も優勝したいので、セレッソ大阪のトップチーム、レディースで一緒にタイトルを獲りたいです。
全員:(拍手)
個人として、理想のプレーヤー像はありますか?
阪田:本職(SHやWB)ではないのですが、最近は練習試合でもFWやSBをやっています。どこで出ても結果を出せる選手、周りに「コイツなら決めてくれる」「コイツならやってくれる」と思われるような選手になりたいです。
FWやSBでのプレーは、新たな挑戦ですか?
阪田:FWは東山高(京都)でもたまにやっていましたが、SBはプロになって初めてやりました。難しさもありますが、近くに毎熊(晟矢)選手という素晴らしいお手本がいるので、しっかり見て、参考にしてプレーしています。
木下:ずっと思っていたのは、点も取れて攻撃の起点になれる選手になることです。プラス、ケガに強い選手になりたい思いがこの1年で強くなりました。
栗本:私は、伊東純也選手(スタッド・ランス)のような選手になりたいです。速いですし、ドリブルでもお手本にできる部分があるので、少しでも近づいていきたいです。
荻久保:いまは主にCBをやっていますが、これまでSBやボランチなど、いろいろなポジションをやってきました。どこで出ても常に安定したプレーができる選手になりたいですし、相手にイヤがられるような選手になりたいです。CBとしては、相手にマッチアップしたくないと思わせたり、相手にとって脅威になったりするような選手になりたいです。
米田:ポジションはCBですが、攻撃も守備もできる選手、チームで必要不可欠な選手になりたいですね。
大迫:点を取れる中盤になりたいです。ゴールやアシストなどの結果を常に残すことは、高校時代も意識してきました。プロでも中盤で二ケタゴール・二ケタアシストを記録できる選手は評価が上がると思うので、そういった選手になりたいです。
大迫選手も、練習試合では左SBを務める機会がありますね。
大迫:だいぶ慣れました。最初は最終ラインでの動き方が分からなかったのですが、徳真さんに聞いたり、(舩木)翔さんに聞いたりして、ポジショニングについて考えてやってきました。SBで出てもできる自信はついています。
最後の質問です。サッカーを続ける上で原動力になっていることはなんでしょうか?
阪田:「応援してくれる人のために」という思いもありますが、一番は「サッカーが好き」という気持ちです。好きなことを仕事にできているのは幸せなこと。だから、頑張れます。ベンチ外になったとき、ホーム戦だと上から試合を観るのですが、得点が入ったときや勝ったときに、「あの舞台で自分もプレーしたい」という思いが強くなります。そういう気持ちが自分の原動力です。
栗本:私も一緒で、しんどいときもありますが、サッカーが好きという気持ちがあるので頑張れています。
米田:自分は小さいころ、2011年の女子W杯を見たとき、「自分もこの舞台で活躍したい」「優勝したい」という夢ができました。それをかなえるためにサッカーを続けています。
荻久保:小さいころからサッカーをやっていたし、好きだから始めたこと。夢や目標を叶えるために、自分に負けたくないし、あきらめたくありません。まず自分に勝つことを目標に、ずっとサッカーを続けています。
木下:サッカーをしている中で気持ちいい瞬間があって、ゴールを決めたとき、ドリブルで抜いたときです。その瞬間がとても好きで、それを何度も味わいたいという思いが、サッカーを続ける原動力です。
では最後に、大迫選手に締めていただきましょう。
大迫:自分は家族です。鹿児島にいる家族が、小さいころからサッカーを教えてくれたり、支えたりしてくれました。「家族を幸せにしたい」という思いがサッカーを続ける原動力ですね。
- 栗本 悠加
- 2006年11月9日生まれ、17歳。奈良県出身。平群フットボールクラブ→セレッソ大阪堺ガールズ→セレッソ大阪ヤンマーレディース。
- 木下 慎之輔
- 2004年5月9日生まれ、19歳。大阪府出身。FCティアモ交野→セレッソ大阪西U-15→セレッソ大阪U-18。2023シーズンよりセレッソ大阪のトップチームに昇格。
- 荻久保 優里
- 2003年8月6日生まれ、20歳。大阪府出身。大阪東淀川FC→セレッソ大阪堺アカデミー→セレッソ大阪堺ガールズ→セレッソ大阪堺アカデミー→セレッソ大阪ヤンマーレディース。
- 阪田 澪哉
- 2004年5月11日生まれ、19歳。京都府出身。桂坂サッカークラブJr.→宇治FCJr.Y→東山高。2023シーズンよりセレッソ大阪に加入。
- 米田 博美
- 2004年10月2日生まれ、19歳。奈良県出身。奈良クラブジュニア→セレッソ大阪堺アカデミー→セレッソ大阪堺ガールズ→セレッソ大阪ヤンマーレディース。
- 大迫 塁
- 2004年10月13日生まれ、19歳。鹿児島県出身。谷山サッカースポーツ少年団→FCサウサーレ→神村学園中→神村学園高。2023シーズンよりセレッソ大阪に加入。