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古澤留衣・玉櫻ことの のengine

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挑戦するしか道はないという想い。壁を乗り越える苦しみを楽しむ心。
Profile
古澤留衣
1997年生まれ。奈良県出身。セレッソ大阪堺レディース所属。背番号15、MF。1期生として入団。2017年、2019年になでしこリーグ2部カップ優勝。2020年は1部で4位に。2020年からヤンマーホールディングス株式会社に入社し、会社員とサッカー選手を両立している。

玉櫻ことの
1998年生まれ。奈良県出身。セレッソ大阪堺レディース所属。背番号20、FW。古澤と同じく1期生として入団。2018年にU-20女子日本代表に選ばれ、フランス遠征に参加。前十字靭帯の断裂を乗り越えて復帰。2020年からヤンマーホールディングス株式会社に入社し、会社員とサッカー選手を両立している。

※この取材は1月7日にオンラインで行いました

社会人プレーヤー1年生として、
両立に挑んだシーズン。

2020年12月に雪降る仙台で行われた皇后杯準々決勝は、セレッソ大阪堺レディースが2点を追う展開から同点に追いつき延長で逆転。再び同点とされPK戦での敗退となったが、最後まで諦めないプレーが記憶に残る試合だった。この試合にメンバー入りした古澤選手と玉櫻選手はセレッソ大阪レディースU-15に一期生として入団。10年という時間を同じチームで過ごし、2020年4月からは二人ともヤンマー社員としてアスリートと社会人の両立に挑戦している。新しい環境に飛び込んだ2020年は二人にとってどんな1年だったのだろうか。
Q:社会人として働いていますが、どんなお仕事をされていますか?また心境の変化はありましたか?
古澤:私は総務部に所属し、会社印鑑や社有車の管理、経費処理を主に担当しています。練習のある日は14時半ごろには仕事を終えて、グラウンドに移動して2時間ほど練習しています。私たちはセレッソの女子サッカーチームの一期生として、中学から活動を続けています。ずっと一緒のメンバーも多いので、先輩後輩という上下関係は希薄なのですが、会社には私よりずっと経験も知識もある方が大勢いらっしゃって、新入社員として一番後輩の立場であることことが新鮮です。いい意味で緊張感をもって働いています。

玉櫻:私はブランドコミュニケーション部の業務支援を担当しています。大学生のときは何か失敗しても自分一人への影響で済みましたが、企業の一員として働く際には会社に影響を与えてしまうので、日々その責任を感じながら働いています。
Q:2020年シーズンはどんなシーズンでしたか?
古澤:2020年シーズンはこれまでの選手生活のなかで、一番試合に出られなかったシーズンでした。職場の皆さんの応援と理解で、しっかり練習できる環境にいるなかで、プレーで恩返しが出来なかったので悔しいです。

玉櫻:ベンチ外のメンバーもチームのことを率先してサポートして一体感をつくれたシーズンだったと感じています。惜しくも負けましたが皇后杯もその成果がでた試合だったと思います。

「仲間のために」という経験が、
困難を乗り越える力になる。

玉櫻選手は、怪我を乗り越えて今シーズンから試合に復帰した。古澤選手も試合に出られなかった時期も多い。困難は人を強くする。そうした経験が二人をどう成長させたのだろうか。
Q:サッカーで経験したことが仕事で活きていると感じることはありますか?
玉櫻:大学生のときに前十字靱帯を怪我して、復帰後4ヶ月でまた怪我をしてしまったのですが、もうサッカーを辞めようかなと思うほど辛い出来事でした。試合に出られなくなって気持ちも沈んでしまい、リハビリをやる気になれなかった時期もありました。
でも、試合会場に同行するとサポーターさんから「復帰を待ってるよ」と、何度もお声がけいただいたことが支えになりましたし、学生時代お世話になった先生からも「若いときにしかできないことがある」と背中を押されたこともあって、今でも現役選手を続けています。怪我とリハビリという辛い時期を乗り越えて復帰できたことは、これから仕事でどんな困難な場面があっても乗り越えていけるという自信につながると思っています。それと怪我で選手として試合に出られないときに自分にできることは何だろうって真剣に考えて、仲間をサポートするっていう自分の新たな役割に気付けたことはよい経験でした。チームのための自分の役割を意識できるようになったと思います。

古澤: 私も高校年代のときに、試合に全然出られなくなって精神的にも辛くて葛藤した時期がありました。その時期を乗り越えたので多少上手くいかないことがあっても、気持ちがタフになったと思います。今シーズンも出場できないことが多かったんですが、私だけじゃなく、応援してくださるヤンマーのみなさんに応えるためにも、負けてられないという気概で練習に取り組んでいましたし、仕事では初めて覚えることが多く、戸惑うこともありますが、へこたれずに日々学んでいます。
Q:お二人がサッカーをしていて達成感を感じるのはどんな場面ですか?
玉櫻:フォワードなので自分が点を取ったとき、仲間の得点をアシストしたときはもちろん嬉しいし達成感があるのですが、自分たちが練習でやろうとしていたことが試合で実践できたときが一番かもしれません。

古澤:私はカップ戦で優勝して、チームで目標を達成したときのことが頭に浮かびます。優勝したこと自体ももちろん嬉しいのですが、あの試合の後はそれまでの過程を踏まえた、言葉では表現できない様々な感情が湧き上がってきました。リーグではまだ優勝を達成していないので、あの感情をまたチームで感じたいですね。
実は、小学生時代にも対戦相手として一緒にサッカーをしてきた二人。直接的な言葉では表現されないが、長く一緒にいるなかでお互いが経験してきた辛い時期を乗り越える姿が、それぞれを勇気づけてきた。仲間や応援してくれる人を大事にする思いは社会人になって一層強くなったようだ。
諦めない気持ちと、自分らしさを大切に、
仕事とリーグ戦で結果を残したい。
2021年シーズンのセレッソ大阪堺レディースはプロリーグには参加せず、なでしこリーグ1部で戦うことになる。選手のメンバー編成もこれまでとは大きく変わるなかで二人が目指すものについて尋ねてみた。
Q:サッカーと仕事、それぞれの目標を教えてください。
玉櫻:サッカーでは、コツコツとできることを増やして、サッカーをもっと楽しめるようにしていきたいです。最近はセレッソ大阪(トップチーム)の奧埜選手を見て刺激を受けましたね。しっかり得点も獲りながら、目立たないところでもチームにとって重要な動きをされていて、あんなプレーができるようになりたいと思いました。仕事では、「玉櫻にお願いしよう」と安心して任せてもらえるようになりたいと思います。私を指導してくださる先輩は、目の前のことだけなく常に先を見通して仕事を組み立てていらっしゃるので、私もそのように全体を見て動けるように経験を積んでいきたいと思います。

古澤:繰り返しになりますが、日本一になったことがないのでその目標を叶えたいです。カップ戦では2部で優勝しましたが、リーグではまだ。特に2017年で初めてタイトルを獲った試合は足がつっても全員が走り抜いてPK戦で勝ち切ることができた忘れられない経験です。今度はリーグで勝ちたいですし、そのときに選手として自分もピッチに立っていたいと思います。仕事ではまだまだ教えてもらっている側なので、早く部署の中で必要とされる存在になりたいです。会社の皆さんは、試合の動画配信まで観て応援をいただいているので仕事でもその恩返しができればと。
Q:夢や目標にチャレンジする姿勢について教えてください。
古澤:すごく辛いことやしんどいことを乗り越えた先にしか見えない景色だったり、出来事だったりがあると思います。私自身こうやって社会人になってもサッカーを続けられていることは、中学生の頃には考えられなかったことです。これまで辛くても諦めずに続けてきたことが、今に繋がっているんだと思います。
今年は試合中も仕事中も、どんなに辛いことがあっても、常に笑顔でいることが目標なんです。自分からネガティブな空気をつくらないようにして、乗り越えていきたいなって思っています。

玉櫻:私はこれまで自分らしさを大切にしてきました。サッカーは一人でするスポーツじゃなくて、各ポジションに役割があって、選手それぞれがいろいろな特徴をもっているから成り立っています。同じことができる選手がいっぱいいても上手くいかないと思うんです。
周りの人と比べて自分が劣っていると思ったり、出来る人をみて焦ったりすることもありますが、プレーでも仕事でも、自分にできることや自分らしいことを表現して、活かしながら挑戦したいと思っています。
アスリートと仕事を両立する姿は、ライフステージが変化するなかでもチャレンジを続ける人に勇気を与えてくれるはず。サッカー選手としてのキャリアは10年近くになる二人も、社会人としてのキャリアは始まったばかり。セレッソ大阪堺レディースと古澤、玉櫻両選手の活躍に注目していきたい。