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西川潤のengine

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「世界の舞台で活躍するために」自分の良さを問い続け表現していく。
Profile
バルセロナ、レバークーゼン、ライプツィヒといった世界の強豪から注目され、獲得リストに入っていると噂される選手がいる。セレッソ大阪 西川潤。19歳。神奈川の桐光学園で中村俊輔も付けた10番を背負い、2年生でインターハイ準優勝。3年生で優勝。U-16アジア選手権で優勝しMVPに選ばれた。続くU-17ワールドカップでも4試合で2ゴール・2アシストを記録し、西川潤の名前は世界に知れ渡るようになった。

※この取材は5月29日にオンラインで行いました
世界が注目する若き才能が
追い求める「結果」。
U-17ワールドカップのセネガル戦、途中出場した西川選手は最初のパスを受けるとDFを置き去りにし、鮮やかに得点を決めた。試合の流れを変えるプレーや決定機を決めきるメンタリティは西川選手の魅力のひとつだ。
海外クラブからも興味を持たれているという若き才能。プロ契約1年目となる今年は、さらに結果を出すことでその才能を証明していかなければならない。開幕戦やカップ戦は、両試合ともベンチで終えた。逸材と称される選手がいつの間にかいなくなってしまう厳しい世界で挑戦を始めたばかりの19歳。西川選手はそのことをどうとらえているのだろう。
Q:プロとして最初のシーズンです。セレッソ大阪での練習はどうですか?
キャンプでのプレーには満足できていません。1つ1つのプレーにもっとこだわらないといけないと感じます。ロティーナ監督は、攻撃的なセレッソ大阪のスタイルの中で、守備も大事にされているので、守備は自分が身につけなければいけないところです。特にポジショニングの要求は、今まで出会った中で一番強い監督だなと思いました。ミスが少ない選手が監督からの信頼を得ていくなかで、自分は90分通して完璧なポジショニングをできているわけじゃなくて、毎試合修正しなきゃいけないところがあります。ポジショニングの改善はロティーナ監督の下で、強く意識しています。
Q:高校からプロのチームに変わって意識しているところは?
プレーの強度をもっともっと上げていく必要があると思っています。プロの世界と高校の世界のプレー強度は違うので。去年まではセレッソの練習参加から高校の練習に戻ってきたときに、その部分を意識してたんですが、それでも高校のプレー強度に馴染んじゃうっていうか、意識していても難しいところがありました。今はプロに専念できる環境で、もっともっと強さを出していかなければいけないと思います。その上で自分なりの良さをどう表現するか、経験豊富な選手にもひけをとらない安定感をどうだすか、を考えて練習しています。
高校、世代別代表でゴールや勝利という「結果」を残してきた西川選手。そして今、セレッソ大阪で追い求める「結果」の先にはもちろん「世界」がある。
Q:日本、そして世界で意識している選手はいますか?
憧れる選手というのは特にいないですけど、参考にしている選手はレアル・マドリードのベイル選手です。同じ左利きで、ドリブルの緩急とスピード、シュート力などの面でプレーの参考にしています。

他の選手がどうっていうよりも、自分自身が早く世界で活躍できる選手になりたいという意識が強くありますね。それが大前提なので、その目標に向かって行ってるだけという感覚です。多分昔からずっと意識していたことなんだと思います。
すでに高校年代から世界の強豪国と対戦し、東京五輪にも意欲を燃やす。個人としての飛躍とチームとしての成長の狭間で、高校の3年間をどうとらえていたのだろうか?
レギュラー争いの中で見えた、

「チームでの自分の役割」

という視点。
Jリーグクラブのユースからの昇格でプロをめざす選手が多いなか、高校サッカーからプロになった西川選手。
Q:そもそも、ユースでなくて高校サッカーを選んだのはどうしてですか?
何を選択するにせよメリットとデメリットというのは絶対あると思います。こっち行ったら何が良くて、何が悪いんだろ?みたいなことは結構考えるタイプなんです。だから随分悩んで決めましたね。まず、学校生活をチームメイトと共有するっていうところと、学校からそのまま練習に行くので練習量も多くとれると思いました。それに、泥臭いプレーっていうのは高校サッカーの方が圧倒的に多いと思うんですよね。そういったタフさとか、自分に足りないところも成長できるだろうと。
Q:自分が成長できる環境として選んだ高校サッカーはどうでしたか?
正直、高校に入ってすぐ試合に出られるだろうなって思ってたんですよ。でも全然出られなくて。1年の後半で初めて、怪我人の代わりに使ってもらえました。チャンスはここしかないと思って頑張ったんですけど、チームのためになるようなプレーができなくて、何試合目かでようやく結果が出たという感じでした。
Q:試合にでられなかったのはなぜでしょうか?
試合において「自分はチームに対して、どんなプラスをもたらすことができるのか?」っていう視点が欠けていたと思います。それに気づいてからは「チームの大事な場面で決める選手」になると決めたんです。そこからは、どういうポジショニングをした方がいいのかとか、すごく意識しました。
それと、練習で自分の良さを出さないと試合には出られないので、練習に対する準備はすごく意識してました。それでも最初は上手くいかなくて相当葛藤したんですけど、頑張ってモチベーションを維持したのが良かったと思います。上手くいかない状況で、すねていたり、へこんだりしていたら、使ってもらえなかったと思います。落ち込みそうなときはミスチルの曲を聴いてテンションを上げていましたね。
3年生の選手権は予選決勝で涙を呑んだ。「チームの大事な場面で決める選手」になると決めた西川選手は高校でその役割を果たせなかったと悔やむが、その経験をプロの世界で活かすと誓った。高校時代は常に注目され、2年生のときにはドイツのレバークーゼンから練習生として招待されている。「毎日、自分のどこが通用するのかを確かめるように練習していた」という。西川選手はなぜ数あるオファーのなかからセレッソ大阪入団を選んだのだろうか?
たどり着きたい場所が明確なら、
自分の選択を信じればいい。
西川選手が理由に挙げたのは攻撃ではなく、守備のことだった。現代サッカーは守備のコンセプトが需要になってくる、昨季J1最少失点の守備をつくりあげたロティーナ監督の戦術を学び世界基準のサッカー観を養える環境だったことは大きいという。
Q:セレッソに入って成長している部分はどんなところですか?
セレッソが昨シーズンのJ1最少失点だったのは守備のポジショニングが整っているからこそだと思います。自分もセレッソに入って守備の立ち位置を考えることについてはすごく成長したと思いますし、そのポジションの中で自分の良さである攻撃を出すタイミングや攻撃に向けての過程のところ、ドリブルの精度っていうのはロティーナ監督の下で成長できている部分だと思っています。

ちなみに中学2年の時にクラブユースでセレッソユースと対戦しているんです。1-2で負けている場面で自分が途中出場して、2点を取って逆転しました。その試合がきっかけで世代別代表の遠征に呼ばれて、注目していただけるようになりました。負けているときから、もう自分が出て2点取っている気持ちで準備していて、その通りに結果も付いてきた忘れられない試合です。あの試合のイメージがあるから、どんな状況でもまだまだやれると思えています。
Q:挑戦する人に向けて一言お願いします。
僕は、周りから見ると「え?そっちに行くの?」みたいに言われることが多いんですよ(笑)。高校サッカーを選んだ時も「普通はユースに上がるのにちょっと変わってるよね」と言われました。でも僕は、考えた上で自分なりの正解がみえたら、自分の「こっちだ!」っていう感覚を信じて選択するようにしています。進む方向が決まれば恐れずに挑戦して欲しいですね。
この先、西川選手はどんな選択をし、どんな準備をし、どんな結果を残すのだろうか? 点が欲しいときに必ず決める!そんなゴールシーンを何度も観たい。