CSR・環境

報告について

第三者意見

CSR報告書2023を拝読して

株式会社日本政策投資銀行 サステナブルソリューション部長 木村晋氏
株式会社日本政策投資銀行
サステナブルソリューション部長
木村 晋 氏

2023年度の「CSR報告書」は、活動事例集的な位置づけで昨年度まで発行されていた「ハイライト版」と統合する形で、詳細版に一本化されています。

冒頭のトップメッセージでは、「A SUSTAINABLE FUTURE」、すなわち自然の豊かさと人間の豊かさを両立した「新しい豊かさ」を創り出すことを「パーパス」として定義したうえで、その実現を加速するためのチャレンジとして、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050(以下YGC2050)」と「HANASAKA(ハナサカ)」を二本柱として取り組む方針が述べられています。

昨年の報告書の目玉が、「YGC2050」であったのに対し、2023年版の注目はもう一つの柱、「HANASAKA」に関する記載の充実と言えるでしょう。トップメッセージにおいて、「人の可能性を信じ、チャレンジを後押しすることで、人や未来を育むという価値観」と明確に定義し、全編を通して貴社の価値創造の重要な「基盤部分」として位置づけました。他にも、ダイバーシティ&インクルージョンや、人材育成に関する様々な施策・制度設計など、挑戦する企業を支える人的資本の価値向上を重視する姿勢がより明確に伝わるようになり、近年の開示要請の流れにも沿うものとなっています。

貴社マネジメントの柱となる「YGC2050」という「ビジョン」、そして「HANASAKA」という「価値観」が位置づけられたわけですが、その性格上どうしても超長期かつ抽象的な特徴を帯びてしまうのは当然です。貴社が、創業者の精神にも裏打ちされた価値観に基づきながら、2050年という未来に向かって、着々と歩みを進める姿をお伝え頂くべく、ビジョンからバックキャストした環境中期計画などのマイルストーン策定や、計画に対する足もとの活動・進捗実績に関する記載の充実を期待したいと思います。

E・S・Gに関する章では、それぞれデータを交えながら非常に詳細なレポーティングが続きます。COOメッセージで言及されている、2023年1月制定の「サプライチェーン行動規範」に関しては、環境・社会両面で要請されるサステナビリティの重要テーマの一つでもあり、素晴らしい進展と考えますので、今後の具体的な対話状況について、次号以降で拝見できればと思います。

貴社事業の重点領域である、「食料生産」と「エネルギー変換」については、COOメッセージにて、具体的なチャレンジのお取り組みが分かり易く語られています。貴社の本業を通じた社会課題解決の肝となる内容ですから、ニュースリリース等へのリンクをうまく併用しつつも、事業の全体像や具体的な事例にいま少し紙面を割いて頂くと、より説得力が増すように感じました。

後世に向けて、持続可能な社会の構築を目指す世界の動きが加速するなか、企業に対するステークホルダーの期待も今までになく高まっています。貴社事業が全体として変化し、成長してゆく姿、そしてそれと同期する形で環境・社会課題が解決されていく姿を、ストーリーをもって一層効果的に伝えて頂くことを期待しております。

株式会社日本政策投資銀行 サステナブルソリューション部長 木村 晋 氏 プロフィール

1995年日本開発銀行(現(株)日本政策投資銀行)入行。企業金融第5部等を経たのち、経営企画部にて長期ビジョン策定、中期経営計画立案、サステナビリティ経営の立ち上げに携わる。2019年6月より現職。環境格付/BCM格付/健康経営格付の評価認証融資や、サステナブル・ファイナンス、コンサルティングサービスを統括。東京大学法学部卒、米国ロチェスター大学MBA(2002)、米国コロンビア大学客席研究員(2019)。

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