ヤンマーグループのCSR・環境2024は、昨年度と同様、冒頭のトップメッセージから始まり、サステナブルな社会に貢献するヤンマーの方針、環境・社会・ガバナンスに関する取り組みが詳細に記載される構成となっています。全体を通じ、ブランドステートメント「A SUSTAINABLE FUTURE-テクノロジーで、新しい豊かさへ。-」として掲げられたビジョンの下、「食料生産」と「エネルギー変換」の分野を中心に、「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」という目標と「HANASAKA」という価値観を通じて、「省エネルギーな暮らしを実現する社会」「安心して仕事・生活ができる社会」「食の恵みを安心して享受できる社会」「ワクワクできる心豊かな体験に満ちた社会」を実現していくというメッセージも、引き続き明確に示されています。
今回のコンテンツで注目すべき点は、まず、ヤンマー理念の全体像図が再構築されたことです。過年度の図が統合された形で、「HANASAKA」という価値観、「CORE TECHNOLOGY」をベースに、各事業部門において商品開発・ものづくり・サービスといったバリューチェーン全体で顧客価値を創造し、ビジョンを実現していく概念がわかりやすく表現されています。また、今回改めて新規事業を別立てとして取り上げることで、「食料生産」分野におけるスマート農業への取り組みや、「エネルギー変換」分野における水素関連技術、電動化関連技術の開発など、世界最先端のテクノロジーを通じた新規事業でお客様課題・社会課題を解決していこうという意思がより強いメッセージとなりました。そのほかにも、「顧客の課題」「ソリューション」「社会への提供価値」の切り口でストーリーを持たせた4つの目指すべき未来像の具体的事例、環境分野における「製品ライフサイクルの環境配慮」や「製品の長寿命化」の取り組みの詳説など、全体として開示の充実が図られています。
今後は、ステークホルダーとの対話をさらに深いものとするために、ヤンマーグループのミッション・ビジョン・価値観を実現する経営戦略を明示していくことが期待されます。ビジョンを時間軸に落とし込み、社会環境の変化に伴うリスク・機会を踏まえ優先して取り組むべき「重要課題(マテリアリティ)」・目指すべき「事業ポートフォリオ」を整理し、それを実現するための経営計画・事業計画を策定するなど、企業経営全体の統合的な概念整理・開示によって、ヤンマーグループの目指す「A SUSTAINABLE FUTURE」を実現するための道筋が一層明確になるのではないでしょうか。
持続可能な社会の構築を目指す世界の動きは加速しており、ステークホルダーとの対話の重要性も増しています。特に欧州を中心に、環境・サステナビリティにかかる情報開示の規制も強まっています。今後も、ヤンマーグループが、お客様課題・社会課題の解決を通じて企業価値・社会価値を生み出し続けようとされている姿勢を、統合的なストーリーをもって効果的にステークホルダーに伝えていただくことを期待しています。